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第五章 狩場の山編
第73話 巨大包丁を持つ危ない人
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スレーム・ガングの5人は第6区域を抜け都市の管理区域から出たところだ。馬車での移動は速いのでこのまま進めばあと1時間ほどでオドブレイクに着きそうだ。予定通り少し遠回りしてクエスト2つこなして行くことになった。
道中街道を外れてまずは難易度Dの『爪キジ討伐』に向かった。
爪キジは中型のモンスターで林に生息する野生のキジを取り込んだモンスターのようだ。
林の中で見つけるのに少し時間を要したが爪キジは多少飛び回るくらいだったので皆で追っかけ回して難なく討伐成功!
次に向かったのは丘の麓にいる難易度Dの『角ヤギ討伐』。
角ヤギは大型のモンスターで頭を下げて角で突き上げる攻撃をしてきた。セキトモが新しくなった大盾でその攻撃を受けるとヤギの角のほうが砕けた。角が砕け、怯んだ角ヤギにすかさず全員で斬りかかってあっさり討伐成功!
「セキトモさん、熊爪の勝ちでしたね!
盾で角砕くなんてびっくりしましたよ」
「僕もびっくりだよ。受けた衝撃も随分少なかったし、ガライさんいい仕事してくれたみたいだな。頼んで正解だった」
夕方に目的地のオドブレイクに到着した。
ロッカは掲示板に張ってあるクエストの依頼書を剥がして来たようだ。
「一応、ここに張ってある依頼書も1枚剥して来たわ。明日は予定通り道中で難易度Cの『巨大蜘蛛』と『巨大クワガタ』の2つをやるわよ」
「難易度Cか。ここからだな」
「今の俺たちなら倒せますよ」
◇◇
翌日-----。
最初に挑むのは林を縄張りとする『巨大クワガタ討伐』だ。目的地に向かっていたが、道中が荒れた道なので途中から馬次郎を連れて行けなくなってしまった。
くじ引きの結果、ロッカとイズハの居残りが決定。ロッカは悔しそうに「さっさと倒して早く帰って来なさいよ」と言っていた。
「僕たちだけでやれるかな?」
「バンさんがいるから大丈夫じゃないですかね?」
「私に頼られても・・・」
トウマとセキトモはバンが肩に担いでいる武器に視線を移した。突っ込み所満載だが、今回バンは小柄な身体に似つかわしくない1スロットタイプの片刃の大剣を持って来ている。鞘に納めていないむき出しのバカでかい包丁のような大剣だ。
切れ味凄そうだし、その武器持って街中歩いたら巨大包丁を持つ危ない人だよな?
近くにいて振り向かれでもしたら吹き飛ばされそうだ。
気をつけよう。
二人の視線に気づいたのかバンは言い訳を始めた。
「荷台から取り出したときは何も言われませんでしたけど、やはりこの武器気になりますよね?」
「さっきは聞きそびれちゃいました」
「僕もどう聞いたらいいもんかと。その見た目がね・・・」
「こうやって持ち歩くには余りにも物騒な物ですからね。
これを使うのは久しぶりです。
私の部屋に置いていた物なのですが、今回はモンスターの関節を狙いたいので切れる武器をと。三刃爪だと攻撃面が広いですからね。」
「鞘を荷台に置いて大剣だけ持って来たのはどうして?」
「ああ、この大きさですからね。
鞘への出し入れが面倒なので抗魔玉の付け替えだけで済まそうかと。
鞘から取り出している最中にモンスターに襲われたら攻撃できませんので」
「なるほど」
「その大剣、凄い重そうですよね?」
「大体20kgくらいでしょうか。
通常は両手持ちで扱いますし、見た目より軽いと思いますよ」
20kgが軽い?
バンさん、それ振り回すんですよね?
バンは軽く片手で大剣を振ってみせた。
「やはり体重乗せるなら両手持ちですね」
いや、いや、いや。
今、普通の剣のように振ってたじゃん。
バンにドン引きするトウマとセキトモだった。
◇◇
三人が林の中に入ってしばらく経つと、あちこちで木が倒れている場所に出た。
「あれってクワガタの仕業かな? クワガタって木にとまってる虫のイメージですけど巨大なモンスターは木にとまれませんよね?」
「大型のカブトもそうでしたけど、地上にいるでしょうね。
ですが、飛ぶことは忘れないようにしましょう」
「そうだな。おそらく甲殻は堅いだろうからまずは関節狙いってところか」
トウマとセキトモはバンが持っている大剣を再び見て、脚の関節ではなく胴体の関節をぶった切るつもりなんだろうなと思った。
林を更に進むと三人は巨大クワガタと遭遇した。黒々としたテカった体。頭部に巨大な鋏を持ち左右にある眼はすでに赤。甲殻は見るからに堅そうだ。
「大きいですね。注意すべきはあの大きな鋏でしょうけど、大き過ぎるので挟まれるほうが難しいかもしれません」
「セキトモさんなら挟みやすいかもですよ」
「バカ言うな。それだと僕、死んじゃうだろ」
「挟まれないように気をつけましょうってことですよ。あはは」
「冗談言ってる場合じゃないぞ。クワガタの眼はすでに赤だ。
トウマも気をつけろ!」
「はい!」
おっと、まだクワガタとの距離があるから気を抜き過ぎてたな。
集中しよう。
クワガタはゆっくりと体を正面に向けると、羽を広げて飛んで来た!
「ヤバっ、もう飛んで来た!」
トウマとバンはクワガタの急襲を素早く回避した。
セキトモにクワガタの鋏の先がぶつかった。セキトモはそれを大盾で防いでいたが身体ごと吹き飛ばされた。大盾にぶつかったクワガタの鋏は破壊できなかったようだ。それだけで相当な堅さということが分かる。
「セキトモさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫! 踏ん張れなくて身体ごと持っていかれただけだ。
この盾のおかげで衝撃はそこまで伝わってこなかったよ。
しかし、いきなり飛んでくるとは厄介だな」
周りの木をなぎ倒しながら大きく旋回して、再びクワガタが襲って来た!
トウマはクワガタの攻撃をかわし、大きな脚の関節を1本斬った。
「やった! 脚1本落としましたよ!」
セキトモは二度目のクワガタの突撃を大盾で受け流し、クワガタを背後にある木にぶつけてみたが逆に木のほうがなぎ倒された。
「あのクワガタ止まらないな・・・。バン?」
急にセキトモの前に出たバンにセキトモは戸惑った。
「私に任せて下さい!」
バンは再び旋回して襲ってくるクワガタの正面に立つと大剣を横の面にして構え、飛び上がった。そして大きな鋏で挟まれる直前にクワガタを地面に叩き落とした。
”ズシン・・・”
うっそ、そんな大剣の使い方あり?
「今です!」
トウマは飛び上がり羽を広げたままのクワガタの羽の付け根を切断した。
「これでもう飛べないだろ?」
飛べなくなったクワガタだがすぐに地面で旋回するように暴れ出した。
トウマはクワガタから少し距離を置いた。
カマキリのときみたいな旋回だな。
これじゃ近づけないや、どうする?
地面で旋回するクワガタを今度はセキトモがしっかりと踏ん張り大盾で受け止め、動きを止めた。日々の鍛錬の成果が出始めたのかセキトモは力強くなっていた。
「よし! 止まったぞ」
すると、トウマが向かうより早くバンがクワガタの頭と胴体の付け根を大剣で縦に一刀両断! クワガタは霧散していった・・・。
『巨大クワガタ討伐』成功だ!
「凄っ!」
「僕は受けるだけだったな。はは」
「セキトモさんが動きを止めてくれたおかげで関節を狙うことができました。
ありがとうございます」
「どういたしまして。にしても凄い切れ味だね、その大剣。
叩き落とさなくてもそのまま甲殻ごと切れたんじゃない?」
「そうかもしれませんが確信が持てなくて。
博士が作ったものですから切れたかもしれませんね」
「普通なわけないし切れそうだな。わはは」
それを扱うバンさんも普通じゃないと思いますけどね~。
三人は巨大クワガタが落とした魔石・中を回収して戻った。
◇◇
馬車で待っていたロッカとイズハは退屈そうにしていた。
「やけに早かったわね?」
「もうクワガタ倒してきたっすか?」
「「バン(さん)が凄かった」」
バンはちょっと照れ臭そうにしていた。表情だけを見ると可愛らしいが、持っている大剣が似つかわないことは言うまでもない。
道中街道を外れてまずは難易度Dの『爪キジ討伐』に向かった。
爪キジは中型のモンスターで林に生息する野生のキジを取り込んだモンスターのようだ。
林の中で見つけるのに少し時間を要したが爪キジは多少飛び回るくらいだったので皆で追っかけ回して難なく討伐成功!
次に向かったのは丘の麓にいる難易度Dの『角ヤギ討伐』。
角ヤギは大型のモンスターで頭を下げて角で突き上げる攻撃をしてきた。セキトモが新しくなった大盾でその攻撃を受けるとヤギの角のほうが砕けた。角が砕け、怯んだ角ヤギにすかさず全員で斬りかかってあっさり討伐成功!
「セキトモさん、熊爪の勝ちでしたね!
盾で角砕くなんてびっくりしましたよ」
「僕もびっくりだよ。受けた衝撃も随分少なかったし、ガライさんいい仕事してくれたみたいだな。頼んで正解だった」
夕方に目的地のオドブレイクに到着した。
ロッカは掲示板に張ってあるクエストの依頼書を剥がして来たようだ。
「一応、ここに張ってある依頼書も1枚剥して来たわ。明日は予定通り道中で難易度Cの『巨大蜘蛛』と『巨大クワガタ』の2つをやるわよ」
「難易度Cか。ここからだな」
「今の俺たちなら倒せますよ」
◇◇
翌日-----。
最初に挑むのは林を縄張りとする『巨大クワガタ討伐』だ。目的地に向かっていたが、道中が荒れた道なので途中から馬次郎を連れて行けなくなってしまった。
くじ引きの結果、ロッカとイズハの居残りが決定。ロッカは悔しそうに「さっさと倒して早く帰って来なさいよ」と言っていた。
「僕たちだけでやれるかな?」
「バンさんがいるから大丈夫じゃないですかね?」
「私に頼られても・・・」
トウマとセキトモはバンが肩に担いでいる武器に視線を移した。突っ込み所満載だが、今回バンは小柄な身体に似つかわしくない1スロットタイプの片刃の大剣を持って来ている。鞘に納めていないむき出しのバカでかい包丁のような大剣だ。
切れ味凄そうだし、その武器持って街中歩いたら巨大包丁を持つ危ない人だよな?
近くにいて振り向かれでもしたら吹き飛ばされそうだ。
気をつけよう。
二人の視線に気づいたのかバンは言い訳を始めた。
「荷台から取り出したときは何も言われませんでしたけど、やはりこの武器気になりますよね?」
「さっきは聞きそびれちゃいました」
「僕もどう聞いたらいいもんかと。その見た目がね・・・」
「こうやって持ち歩くには余りにも物騒な物ですからね。
これを使うのは久しぶりです。
私の部屋に置いていた物なのですが、今回はモンスターの関節を狙いたいので切れる武器をと。三刃爪だと攻撃面が広いですからね。」
「鞘を荷台に置いて大剣だけ持って来たのはどうして?」
「ああ、この大きさですからね。
鞘への出し入れが面倒なので抗魔玉の付け替えだけで済まそうかと。
鞘から取り出している最中にモンスターに襲われたら攻撃できませんので」
「なるほど」
「その大剣、凄い重そうですよね?」
「大体20kgくらいでしょうか。
通常は両手持ちで扱いますし、見た目より軽いと思いますよ」
20kgが軽い?
バンさん、それ振り回すんですよね?
バンは軽く片手で大剣を振ってみせた。
「やはり体重乗せるなら両手持ちですね」
いや、いや、いや。
今、普通の剣のように振ってたじゃん。
バンにドン引きするトウマとセキトモだった。
◇◇
三人が林の中に入ってしばらく経つと、あちこちで木が倒れている場所に出た。
「あれってクワガタの仕業かな? クワガタって木にとまってる虫のイメージですけど巨大なモンスターは木にとまれませんよね?」
「大型のカブトもそうでしたけど、地上にいるでしょうね。
ですが、飛ぶことは忘れないようにしましょう」
「そうだな。おそらく甲殻は堅いだろうからまずは関節狙いってところか」
トウマとセキトモはバンが持っている大剣を再び見て、脚の関節ではなく胴体の関節をぶった切るつもりなんだろうなと思った。
林を更に進むと三人は巨大クワガタと遭遇した。黒々としたテカった体。頭部に巨大な鋏を持ち左右にある眼はすでに赤。甲殻は見るからに堅そうだ。
「大きいですね。注意すべきはあの大きな鋏でしょうけど、大き過ぎるので挟まれるほうが難しいかもしれません」
「セキトモさんなら挟みやすいかもですよ」
「バカ言うな。それだと僕、死んじゃうだろ」
「挟まれないように気をつけましょうってことですよ。あはは」
「冗談言ってる場合じゃないぞ。クワガタの眼はすでに赤だ。
トウマも気をつけろ!」
「はい!」
おっと、まだクワガタとの距離があるから気を抜き過ぎてたな。
集中しよう。
クワガタはゆっくりと体を正面に向けると、羽を広げて飛んで来た!
「ヤバっ、もう飛んで来た!」
トウマとバンはクワガタの急襲を素早く回避した。
セキトモにクワガタの鋏の先がぶつかった。セキトモはそれを大盾で防いでいたが身体ごと吹き飛ばされた。大盾にぶつかったクワガタの鋏は破壊できなかったようだ。それだけで相当な堅さということが分かる。
「セキトモさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫! 踏ん張れなくて身体ごと持っていかれただけだ。
この盾のおかげで衝撃はそこまで伝わってこなかったよ。
しかし、いきなり飛んでくるとは厄介だな」
周りの木をなぎ倒しながら大きく旋回して、再びクワガタが襲って来た!
トウマはクワガタの攻撃をかわし、大きな脚の関節を1本斬った。
「やった! 脚1本落としましたよ!」
セキトモは二度目のクワガタの突撃を大盾で受け流し、クワガタを背後にある木にぶつけてみたが逆に木のほうがなぎ倒された。
「あのクワガタ止まらないな・・・。バン?」
急にセキトモの前に出たバンにセキトモは戸惑った。
「私に任せて下さい!」
バンは再び旋回して襲ってくるクワガタの正面に立つと大剣を横の面にして構え、飛び上がった。そして大きな鋏で挟まれる直前にクワガタを地面に叩き落とした。
”ズシン・・・”
うっそ、そんな大剣の使い方あり?
「今です!」
トウマは飛び上がり羽を広げたままのクワガタの羽の付け根を切断した。
「これでもう飛べないだろ?」
飛べなくなったクワガタだがすぐに地面で旋回するように暴れ出した。
トウマはクワガタから少し距離を置いた。
カマキリのときみたいな旋回だな。
これじゃ近づけないや、どうする?
地面で旋回するクワガタを今度はセキトモがしっかりと踏ん張り大盾で受け止め、動きを止めた。日々の鍛錬の成果が出始めたのかセキトモは力強くなっていた。
「よし! 止まったぞ」
すると、トウマが向かうより早くバンがクワガタの頭と胴体の付け根を大剣で縦に一刀両断! クワガタは霧散していった・・・。
『巨大クワガタ討伐』成功だ!
「凄っ!」
「僕は受けるだけだったな。はは」
「セキトモさんが動きを止めてくれたおかげで関節を狙うことができました。
ありがとうございます」
「どういたしまして。にしても凄い切れ味だね、その大剣。
叩き落とさなくてもそのまま甲殻ごと切れたんじゃない?」
「そうかもしれませんが確信が持てなくて。
博士が作ったものですから切れたかもしれませんね」
「普通なわけないし切れそうだな。わはは」
それを扱うバンさんも普通じゃないと思いますけどね~。
三人は巨大クワガタが落とした魔石・中を回収して戻った。
◇◇
馬車で待っていたロッカとイズハは退屈そうにしていた。
「やけに早かったわね?」
「もうクワガタ倒してきたっすか?」
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