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序章#2【少年期】
7.停滞させる※
しおりを挟む全身が熱くて目が覚めた。
熱を出した事なんて繰り返してきた人生の中で数え切れない程あるし、それでも常に戦って生きてきた。だから面倒だなってくらいの印象しかない。
────ただ、今世に限っては状況が違う。
「なんで…キス、したの?」
目覚めた時の、僧侶の顔の距離の近さに驚いたけど不思議と不快感はなかった。
「……お前の身体の中から、神力が溢れていたからだ。」
「デュミナス!」
しんりょく?そんな言葉、初めて聞いた。
魔王は何か知っていて、僧侶も理由があって何かをしていたのなら…別に、いいか
「なんで、熱いの」
「…魔力酔いです。神力をどうにかしなければ、エリオはまた勇者として人間達に呼び戻される可能性が…」
「ゆう、しゃ」
とうとう時間切れみたいだ。こんな事なら僧侶の制止なんて聞かずにもっと筋力をつけるべきだった。
…まぁ、後悔したって仕方ないか。今回の人生は捨てて、次の人生でまた…
「………やだ」
どうしてだろう。
今まで簡単に投げ捨ててきたのに、命が惜しい。死にたくない。
「エリオ…」
「アリオル。魔力をもっと入れてやれ」
「ッ…」
僧侶の唇がまた重なる。舌を絡められる感覚は、食べ物を口に入れた時と違う。
ぬるりとした感触を舌全体で感じて、ビリビリと痺れる。熱に浮かされてるのか、頭がぼーっとしてきた。
「あ、…あっ!?へん、からだ!」
「エリオ?…大丈夫ですかエリオ!」
「魔力酔いだって言ってんだろ。…おいエリオ、噛むなよ」
「んっ、んんーッ」
顎を掴まれて魔王からもキスされた。身体の中の熱が激流のように駆け巡って、ビクンッと一度大きく跳ねたと思ったら下半身がじわりと温かくなった。
「あ…あぁ…」
こんな、赤子のような失態は初めてだ。漏らしてしまった。死にたくないと涙を流して、二人からのキスでおもらしまでしてしまった。
尊厳まで捨て去って、なにが勇者だ。なにが…
絶望して涙をぼろぼろ流す俺を、僧侶と魔王が挟んで添い寝した。
「大丈夫ですよエリオ。貴方も戦っているのですね、体液から神力が排出されています」
「魔力がないから扱い方も分からないだろうが…お前が拒否をし続ければ、俺達で助けてやれる。エリオ、俺達のものになれよ。」
「デュミナス、最後までは許しませんよ。」
「あぁ?なんでだよ。一番効率いいじゃねーか」
頭の上で言い争っているが、何を言っているのかよくわからない。
濡れた下半身をどうにかしなくちゃいけないのに、何故だか全身に力も入らない。
「き、がえ…」
「うん?…エリオ、今日はもう少し頑張ろうな?俺の魔力で抑え込めるくらい神力を吐き出しておいた方がいい」
「?」
「エリオ、今度は少しずつ魔力を渡すので…怖がらないで下さいね」
「まりょく?」
魔王が汚れたズボンと下着を脱がすと、ぴょこんと頼りない大きさの性器が立ち上がっていて俺はさっきのが失禁じゃない事を察した。
(なんだ、精通…)
そういえば今世はまだだった。
今までの人生でも、特定の誰かと交合うような事はなかったが疎ましくとも生物の本能として、特に命のやり取りが多いとそれなりに興奮するもので。
面倒だが集中力を欠くのは危険だからと自分で処理をしてきた。
どういう訳か、今世は僧侶と魔王の二人とキスをして、更には魔王が俺の下腹部に顔を埋めている。
初めて経験する接吻というものは、嫌悪感より快楽が勝って自分の身体とは思えない。知らない生き物の感覚を共有しているようだ。
「ッ────!!!!」
いつの間にか魔王の口に含まれていた性器が欲を吐き出した。
魔力に侵された身体は相変わらず熱いが、不思議と思考が明瞭になって状況を把握し始める。ビリビリとしたり、身体中を駆け巡る熱の正体は魔力のようだ。
「……神力、か」
思考出来るようになって、言葉の意味をようやく理解した。俺が勇者であることは、神が決めている事。その力が宿っていてもなんら不思議ではない。
「…………」
目を閉じる。考えては、いけない。きっと今より深い絶望にしかならない。
もういい。忘れたい。俺は何も見ない。
「エリオ?大丈夫ですか?」
「……僧侶。お休みしたいのに、できない」
「…それはいけませんね」
目を開けば、いつもより近い僧侶の顔がある。頭を撫でる手つきはいつも通り優しいのに、キスという一線を超えた僧侶は普段よりもずっと甘い顔をしている。
僧侶の整った顔がゆっくりと近付き、俺はもう一度目を閉じた。
───それから、身体の中で生成された神力を排出して、次の生成を阻害するように魔力を覆い尽くす事で勇者としての人生は相変わらず停滞している。
「これ、だめ!嫌だ!」
「さっさと排出しねぇと苦しいのはお前だぞエリオ。」
「そんなの知らない…!」
必死に抵抗しても大して鍛えてもいない身体じゃ話にならない。かと言ってこの嫌悪感を説明したくもない。
神力を排出するだけなら自分一人で処理でもいいのに、どうしてか魔王も僧侶も手伝いをやりたがる。やるならやるで、せめて最低限の行為にして欲しいのに、それすら叶わない。
俺が抗議をしようにも魔力を流し込まれればたちまち抵抗する力も、思考も、何もかもが奪われるのに、身体だけが悦び反応する。本当に尊厳破壊もいいところだ。
「よし、素直に言う気になったな?どう嫌か答えてみろ。」
「あ…ぁ…」
魔王の長い舌から大量の魔力が流れ込んだ。口の中から全身へと広がる魔力に痺れて自分が自分でなくなる。
「まおう、ころしくる、こわい」
「…殺さない為にしているんだろうが」
「どれい、やだ」
「はぁ?」
「やだ、いや!くび、いやだ」
奴隷にされたら、逆らえない。逆らったら首が絞まる。ずっと逆らったら、ちぎれてしまう。
ちぎれたら、死んで、次の勇者になる
「いやだ、いや…」
「──戻りました。今日は随分と怯えていますね。」
「帰ったかアリオル。抵抗が強くて神力が排出出来ねぇ」
「一体何をしたらこんなに…エリオ、首を怪我したのですか?」
「コイツの身体が小さいから、首の太い血管から神力を吸おうとしたらこうなった。奴隷が嫌だと」
影から出て来た僧侶が魔法を使ってる。温かい。力が抜ける。
「…人間の、禁術になった魔法で隷属化がありますが」
「勇者を隷属かよ。神も人間も何考えてんだか」
「エリオ、気持ちいい事だけで力を捨てましょうね。いらっしゃい」
「……ん」
僧侶の手、温かい。
勇者の、神の力、魔力と戦ってビリビリする。痛い。いらない。
「魔王も首は触らないと言っていますよ。許してあげませんか?」
「…チッ。知らなかったが、悪かったな。」
「……まおう」
「あぁ?」
魔王は怖いけど、助けてる。知ってる。
魔力たくさん、気持ちいい、怖い。…好き。
「まおう、きす」
「………お前、シラフでももうちょい素直に生きろよ。」
「あっ、あっ、っ…んぅ」
長い舌が、口の中いっぱい。きもちいい。
「───あは、まりょく、もっと」
全部、いらない。くるわせて。
いらない。ゆうしゃ、いらない。
ただ貪る。そこに愛など存在しなくていい。
───思考を奪われた自分がどのような姿をしているかなんて、興味もない。
少しずつ、身体は大きく育っていく。もうそろそろ青年と呼べる歳になるだろう。
それなのに筋力が落ちた気がする。あまり訓練出来ていないのもあるけれど、丈夫じゃなくなったと言えばいいのか
「…?」
勇者の身体は神力で出来ているから普通の人間より丈夫だったり、強くなりやすかったりと何かしら恩恵を得ていたはずだが
それを排出して、魔力で浸食しているのなら普通の人間と同じ状態と言えるのだろうか
身体を巡る魔力はわかる。魔族や一般的な人間には当たり前に巡る物でも自分にとっては異物だから。
慣れはしたけど、流し込まれると明確にわかる程度には異物であり続けている。
…流し込まれて身体に馴染むまでは思考が出来なくなるのでその間の記憶もないが。
「寒い」
「エリオ、大丈夫ですか?」
やはり今日も監視されていた。足下の影が伸びて、まとわりつきながら身体を包み込む。
真っ黒なソレは冷たそうに見えて、とても温かいのがまた憎らしい。
「身体、弱くなった」
これでは魔王どころかそこらの魔族を殺すことすら難しいと言ったつもりだったが、影から出て来た僧侶が心配そうに俺の身体を確認しだした。
「神力が弱まっている影響ですかね…これからまだ寒くなる季節ですから、もう少し厚着をした方がいいでしょう。服屋に行きましょうね」
俺の身体が神力を生成すると分かってから、僧侶と魔王の俺を見る目に変化が起きたのは自覚している。
自覚しているが、俺はそれを無視してただ日々を消化することだけを意識して過ごしている。
外を歩けば魔族しか居ない。そんな世界を今生きている。
人間とは見た目が違うだけで賑やかに、健やかに過ごす魔族達の中に俺を勇者だと認識して警戒する者は居ない。
「おや。アリオル、買い物?」
「えぇ、エリオの服を買い足しに…」
「それだったらウチの商品見てよ。良い素材の服を仕入れたから」
魔族同士で会話に花を咲かせ、反応をしない俺を気遣いながら僧侶が世話を焼く。会話は段々ただの雑音へと変化して、遂には耳に届かなくなった。
───戦わなくていい、勇者じゃなくていい、でも、この日々に意味はあるのだろうか。
疑問は浮上し、沈んで行く。自分はあくまでも人質のようなものだからと結論付ける。
(…死んだような人生だ。)
それは、今更か。
勇者を繰り返してる間、生きる喜びを感じたことなんて無いのだから。
空虚な日々は、意味もなくただ消化される。
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