崖下で謎の美形アルファを拾ってしまった魔術師オメガさん【オメガバース】

さか【傘路さか】

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▽7

 神殿から帰宅して、ラピスはずっと心ここにあらず、といった様子だった。

 名前は分かった、素性も分かった。だが、彼の記憶はまだ戻っていない。貴族の子息である、と言われても、遠い事のように思えてしまうのかもしれない。

 長時間移動で疲れた身体を風呂で癒やし、俺は寝室で研究材料である雷管石を眺めていた。そろそろ眠るべきか、と考え始めた頃、扉が軽く叩かれる。

「コノシェ。寝てる?」

「起きてるよ」

「入ってもいい?」

「……どうぞ」

 そろりと寝室の扉が開き、寝間着姿のラピスが入ってきた。

 居場所に迷うように視線を彷徨わせた彼に、寝台の端を叩いてみせる。彼はのろのろと移動すると、指示した場所へと腰を下ろす。

「ひっどい顔だな。まだ帰りたくないか?」

「ううん。ちゃんと、幸福を掴み取りたい、って思ってるから。そう、じゃなくて、……家に帰ったら、ここにはしばらく来られないだろうからさ。寂しくなっちゃって」

 彼はそれだけ言うと、無言になった。今日の気温は低く、外からの聞こえる生物の音も静かだ。

 きっと、独り寝するには寒いんだろう。

「寝てくか?」

 布団を持ち上げると、青い瞳が揺らいだ。俺が布団の中に入ると、別の体温が追い縋ってくる。

 早々の判断に、よほど寂しいんだな、と可笑しな気分になってくる。腕が伸びてきて、以前のように俺を抱き込む。

 息を吸い込むと、薄かったアルファの匂いがはっきりと分かった。俺の身体が、相手を番になり得る可能性のある存在、と認識していることもまた、分かってしまった。

 俺のような人間が、魔力に不快感を覚えない男だ。いずれ、相応しい番を見つけるんだろう。

「なぁ……、『────』」

 彼の名前を呼ぼうとして、喉の奥が詰まった。俺は彼の名を呼ぶことを諦め、彼の服を握り締める。

 隣にいるのに、見捨てられたような心地でただ苦しく息をする。

 やがて寝息の音が聞こえ始めても、俺は目を見開いたままアルファの腕の中にいた。













 荷物の整理、とはいえラピスが持ち込んだものはなく、買い出しに行ったのも一回限りだ。古い鞄を出してやると、その中に荷物は納まってしまった。

 ラピスと妖精で色づけしていた木箱は、俺にくれるそうだ。小物入れとして使われているそれは賑やかな色彩であるはずなのに、眩んだ目で見るとどこか物寂しい。

 出て行く、という宣言は、重たい罪を宣告されているようでもあった。

「────お前、出て行くのに掃除しなくていいんだよ」

 掃除くらい、と最後まで働くつもりの貴族の子息に眉を寄せるが、本人はどこか楽しそうだ。

「僕が出て行ったら、コノシェは盛大に散らかすだろうからね。今のうちに散らかりにくい家にしておくよ」

「はぁ……。じゃあ、俺も手伝うよ」

 余っていた箒を持ち、彼の近くを掃き始める。珍しい、とからかうように俺を見つめる男の尻を箒の側面ではたいた。

 ラピスはまだ綺麗なままの羽はたきで、俺の腕を擽る。

 お互いに笑い合い、ちょっかいを出し合いながら掃除を進めていった。

「重た…………。……あれ?」

 布団類を日干ししようと運んでいる途中、ふと結界に違和感を覚える。俺は無意識に布団を床に放り出すと、玄関へと駆けた。

 途中、廊下でラピスと擦れ違う。慌てて走る俺にぎょっとした顔をするが、直ぐに平静に戻って俺の腕を掴んだ。

「どうしたの!?」

「結界に干渉されてる! 侵入者かもしれない!」

「えぇ!? …………一人で行くのは危ないよ。僕も行く!」

 彼は視線を巡らせ、玄関近くにあった鉈を抱え上げる。

 手近にある中では一番攻撃力のありそうな代物で、家のほとんどの物の配置を知っているからこそ素早くできる芸当だった。

 俺たちは手早く靴を履くと、実験小屋の敷地から飛び出す。

「我が脚は雷光を運ぶが如く、この一時翼を持つ!」

 肉体強化の詠唱を行い、家を守る結界を閉じて山道を駆け出した。

 結界に干渉が起きたのは、ちょうどラピスと食事をした丘の辺りだった。行く手を阻む藪を切り開きながら前進する。

 視界の奥に、人の気配があった。俺はラピスを押し留め、彼よりも前に立つ。

「春の乙女は冥界へ。月光の────」

 詠唱を始めた瞬間、茂みの奥から叫び声がする。一部の魔術は放たれてしまったが、生成された氷の柱は相手の眼前でぱっきりと砕かれた。

 おや、と覚えのある気配に、動きが止まる。

「待て、コノシェ! 転移の影響で結界に触ってしまっただけなんだ……!」

 奥から転がり出たのは、神官服を着た見慣れた人物……サフィアだった。彼は黒犬を連れており、犬は俺に対して呑気に尻尾を振っている。

 毒気を抜かれた俺は、詠唱を止めて口を閉じる。

「転移、って。何で結界を抜けられたんだ…………」

「俺は神官だからな。転移術式として使うのは、魔術じゃなく神術だ」

 以前、神の雷に結界が部分破壊されたように、俺が構築した結界は神の力に対してはかなり弱いものであるらしい。

 サフィアは鉈を持った男にぎょっとしており、俺は鉈の刃を仕舞わせた。

「なんでわざわざ来たんだ。通信魔術でいいだろ」

「いや。俺は神官になって魔術が使えなくなった。それに、この地は神に縁のある地だから、来るのも容易いんだ」

「はぁ……。まあ、一旦、家に移動するか」

「それがいいな」

 サフィアが足元の犬に視線をやると、アォ、と短く鳴く。瞬きの合間に、周囲の光景は実験小屋の前に移り変わっていた。

 転移術式、と言っても、神術のそれは魔術と違い、詠唱や記述を必要としない事がある。神に愛された力ある神官であれば、尚更だ。

 俺たちは戸惑いながらも、彼らを家に招く。犬には布を用意してやると、自ら肉球の泥を拭っていた。

「何で犬同伴なんだ?」

「神の使い、みたいな存在なんだ。存在自体が力の塊で、転移は力を使うから念のため同行してもらった」

 わふ、と自慢げにしている犬の頭を撫で、俺たちは居間へと移動する。客人に一つだけ離れた椅子を勧め、俺たちは長椅子に隣同士で腰掛ける。

 サフィアは懐から二つの小箱を取り出し、目の前にある机に置く。一つには見覚えがあった。ラピスの雷管石を見たとき、差し出された箱だ。

「俺も魔力相性を見分けることはできるが、鑑定士ではない。だから、自分の目が疑わしく思えてな。お前たちが帰った後、複数人の鑑定士に『二つの石』を見せた。一つはこの石だ」

 小箱が開かれる。目の前にあったのは、紛れもなくラピスの力を込めた石だった。

「端的に言う。ラピス・シュタイン。お前の魔力と相性のいい相手、────番候補が見つかった」

「え……!? それって、もしかして……」

 彼の表情には期待と、僅かに嬉しそうな色が見える。くっと胸を握りつぶされるような感覚に、俺は視線を落とした。

 いずれ、この男が番を見つけるであろう、と分かっていた筈だ。それが早まっただけなのに、俺の頭はその事実を受け入れられない。

 気づくと、つっと頬を冷たいものが伝っていた。

「コノシェ……?」

「あ、悪い。なんか、感慨深くなっちまって」

 涙を止めようと力を込めても、ぼたりぼたりと次から次へ零れる。何度拭っても零れるそれを見かねてか、目に布が押し当てられる。

 顔を上げると、ラピスが心配そうにこちらを見ていた。

「あのね。多分だけど、間違ってる気がする」

「…………は?」

「神官さん。僕の番候補の名前、聞いてもいいですか?」

 反射的に耳を塞ごうとした俺の手を、ラピスの掌が包み込む。力強い手が、ぎゅっと俺の手を握り込んだ。

 逃げようと引いても、その場から動かない。逃げようとして逃げられない絶望感に襲われた瞬間、声が響いた。

「────『コノシェ・モーリッツ』。貴族家であるモーリッツ一族の一人であり…………と、これ以上は説明するまでもないか」

 開かれた箱の中には、俺が雨の日に拾った、魔力を込めたばかりの石が鎮座していた。

 双方の箱をこちらに向けて押し出し、サフィアは一仕事やりとげたかのように肩を下ろす。

「まあ、そういう訳で。もう別れを惜しむ必要もないだろう。互いの両親に連絡を入れてはどうか、と思うが」

「あ、の。……どう言っていいのか分からないんですが。合意、がまだで……」

「……あぁ。それは悪いことをしたな」

「まあ……いずれ言うことでしたので、発破を掛けてもらって助かりました」

 サフィアが、役目を終えた、とでも言うように立ち上がると、その足元に大人しくしていた犬が纏わり付く。

 ふわりと柔らかい光が放たれ、彼を包み込む。術式が発動するかというその時、俺はようやく我に返り、口を開いた。

「わざわざ悪かったな……!」

「いや。番を巡り合わせるのも、恋物語が大好きな神に仕える神殿の業だ。────どうぞお幸せに」

 俺に向かって軽く手を振ると、犬の鳴き声を合図に、急な訪問者は跡形もなく消え去っていた。

 俺たちの手は繋がれたままで、隣にいるラピスを見ても、手を離す素振りはない。あの、その、と言葉に迷っていると、ふっと小さく笑い声がした。

「僕、なんとなくこうなるかもなぁ、って思ってたよ」

「……そう、だったのか?」

「だってコノシェ。今まで出会ったことがない程、好みの匂いだったんだもん」

 手が離れ、伸びてきた腕が俺を抱き込んだ。耳元に唇が近づき、染みこませるように囁きかけてくる。

「それなのに、コノシェってば治療だから、って無防備に近づいてくるし。あの時の僕、ほんと……耐えるのに必死だった」

「なんか、……その言い方」

 俺のことをずっと、番候補として見ていたように思える。

 そう言おうとした唇は、そっと近づいてきた柔らかいものに塞がれる。ほんの一瞬の接触でも、俺を黙らせるのには十分だった。

 ふっと好みの匂いが鼻先を擽る。身の内を、馴染む魔力が伝っていく。

「僕。コノシェのこと、遠くから見てたんだ」

「遠く?」

「君は結界の内にいたけど。結界の外でも、姿だけなら見えるから」

 彼の言葉に、違和感を抱く。彼を拾ってから俺たちはずっと、結界の内側にいた。

 結界の外から俺を眺めることができるとすれば、それは、彼が記憶を失う前だけだ。

「お前……。記憶、戻って……」

「今朝から、少しずつ記憶が戻る感覚があった。概ね、取り戻せたみたいだ」

 しれっと重大な事実を告げるラピスは、悪びれもなく言葉を続ける。彼が語るのは、俺が最も知りたがっていた、彼が崖下で倒れていた経緯だった。

「────予想通りだよ。僕は両親が所有する別荘に滞在していた。服は目立ちたくなくて、別荘の管理人の服を借りたんだ。持ち物がなかったのは、すぐ帰るつもりだったから。あの日は、山歩きをしている最中にコノシェの姿を見たんだ。その時に気が抜けて転んで、軽く滑落した」

 彼はちらりと自らの脚を見る。脚の怪我は雷によるものではなく、その前に山を滑り落ちて出来た傷だと言う。

「転んだのは昼過ぎだったと思う。助けを呼ぶか迷っている間に、君の姿は無くなってしまって、どんどん周囲が暗くなっていった。いつ頃からか、雨が降り出した。木の下に逃げたけど、雨脚が強くなって、風も吹き始めると木の下でも濡れてしまった。寒くて、あそこなら雨風を凌げる、と思って崖下の空間を目指して歩きはじめたけれど、結界が張られていて、一定の場所から先には進めなくなった」

 淡々と語られる内容だったが、暗い山で一人の時に起きた出来事だとすれば想像しただけでぞっとする。

 そう、と彼の腕に手を添えると、俺を安心させるように唇が持ち上がった。

「その時、目の前に雷が落ちたんだ。結界が壊れて、僕は崖下を目指せるようになった。でも、安心して進んでいたら、今度は僕の真横に雷が落ちて────」

「倒れたお前を、俺が見つけた?」

「おそらく。そうだと思う」

 脚の怪我。頭の怪我。低体温。落雷。

 どれか一つに遭ったとしても死の危険がある出来事が、一気に彼を襲い、それなのにラピスは俺を引き寄せ、生き延びた。

 彼がいなかったかもしれない事に、呆然としてしまう。震える指先を、彼の手が覆った。

「…………よ、かった。生きてて」

 相手の胸元に顔を埋め、体温が移ることを確かめる。真実を知って動揺している俺よりも、張本人であるラピスの方が冷静だった。

 俺を落ち着けるように、肌を吐息が揺らすほど近くに寄り添っていた。

「記憶があろうが無かろうが、匂いの好みは変わらない。助けてくれた君を好きな気持ちは、記憶を取り戻してもまだ、此処にある。……コノシェ。僕は、君が好きなんだ」

 近づいてくる唇を、瞼を閉じて受け入れる。

 答えは言わずとも伝わっている気がしたが、折角の告白に答えがないのも可哀想だ。

「俺も。お前が別のオメガと番うのは嫌だった。俺の近くにいてくれるんなら、記憶を無くしたままでも構わないって思ったことすらあった。でも、……ちゃんと運命の番になるって、お前が選んだんだもんな」

 神殿に雷管石を預けたとして、魔力相性のいい相手だと判断してくれなかったかもしれない。

 それでも、ラピスは俺に石を預けるよう働きかけた。賽を振って、結果を掴み取った。これ以上ない、見事な勝ち方だった。

「…………好きだ。お前の番になりたい」

 背に回った腕が、痛いほど身体を抱き締める。

 伝え終えたことにほっとして、抱かれたまま力を抜く。たまには、こうやって精一杯胸を高鳴らせてみるのも悪くない気がした。

 相手の背後に腕を回して、その背中に縋り付く。













「コノシェ」

「何だ、…………『ラピス』」

 見上げた先にいる男は、この上なく幸せだ、と示すように、満面の笑みを浮かべている。

「────やっと、名前を呼んでくれたね」







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