小国の王女ですが、とりあえず逃げてみた(無計画

たんぽぽ

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第三王女は亡命したらしい

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 五名の騎士たちは、翌日からは騎士に見えない格好になっていた。金持ちの貴族とその護衛、という見た目だ。かんぬき騎士が金持ちのボンボンで、その他が護衛。

 馬車の中に平民少女を拉致監禁している金持ち一行は、町でそれなりの宿をとり、翌日には出発するということを数回繰り返し、ついに国境へとたどり着いた。

「おかえりなさいませ!」

 出迎えの言葉が中まで響いてきた。
 うちの国のお隣さんで、周辺国一番の強大国の騎士だったらしい。それも、本人たちの主張によると陛下直属。

 やっぱりというか、なんというか、国境をこえるというのに馬車の中身の確認はされず、私を連れた一行はそのまま走り出した。
 
 それからしばらく走り続け、馬車は再び停車した。
 扉が開かれ、外にはまたかんぬき騎士。

「長旅お疲れ様でございます。目的地に到着いたしました」
「……そうですか」
「夕食のあと、ご質問にいろいろお答えしようと思いますが、どうでしょうか?」
「今ではダメなんですか?」
「私はともかく、王女殿下は少し休まれた方がよいでしょう。体の疲れをいやし、温かい食事で英気を養った方がよろしいかと思います」
「平気です」

 だから今すぐ私の質問に答えろと目で訴えると、貴族の恰好をしたかんぬき騎士は少し困ったように笑った。いや、困っているのは私の方ですから。

「湯あみの準備が整うまでの間でしたら」

 ひょいっと私を横抱きにすると、かんぬき騎士は周囲に指示を出しながら歩き始めた。

「すぐに湯の用意を。それから温かい飲み物と……甘い菓子もあったほうがいいだろう」
「おろしてください。歩けます」
「ご自身が思うよりも限界は近いところにありますよ。いきなり連れ去られた現状で、平常心を保っていることの方に私はおどろいています。さすが王族、と感心しております」
「この国に比べればとんだ弱小国ですけどね」

 土地の広さ、戦力、科学力、なにを比べてもうちの国がこの国に勝てる可能性はない。いや、あるとすれば国民の謙虚さとか素直さとか、豊かな心とか……。

 むすっとしたまま運ばれること数分。
 わたしは広い部屋のソファーにゆっくりとおろされた。わたしたちの後ろをついてきてた女騎士がワンピースのちょっとした乱れをささっと整えて、扉の前に移動していった。どうやら彼女はこの部屋の扉を守る仕事をするようだ。長旅のあとなのにご苦労なこと。

「それでは改めまして。私はエーゼンシュタット国の王位継承権第五位、アシュラス・エーゼンシュタットと申します」
「はい?」

 王位継承権、五位って……王族か王族の血がとても濃い大貴族……。

「父が現王の弟なだけで、私自体はただのいち貴族なんです。王子でなくすみません」

 一応順位がそう決まっているものなので……と、本人は少し申し訳なさそうにしている。

「話を戻しましょう。それで、エーゼンシュタットほどの大国が、弱小国の元王女になんの御用でしょうか?」
「もと?」
「宿を出るときに、王女の身分は捨てました」
「……そんなに簡単に捨てられるものではありませんよ」

 私より年上のかんぬき騎士あらためアシュラスは呆れたようにそう言うと、今回の誘拐事件の目的を簡単に説明してくれた。

「つまり、王女としてではなく、私個人の能力が欲しい、と?」
「そうなりますね。ただ、なんの身分もないディディ平民より、サテラス国のメロディア第三王女様の方がなにかと都合が良いのですが」

 エーゼンシュタット国は、国の内外から優秀な者を集めて、ガスや電気の開発から実用化、上下水道の設営まで幅広い分野で最先端の技術と科学力を誇っている。
 そしてその技術はすぐ隣のうちの国にも恩恵として流れてくるわけだ。まあ、お隣さんからの親切心ではなく、高額な金銭取引が両国間にしっかり存在してるけど。

「サテラス国は我々の技術を素早く吸収し、応用という部分では一部ですが我が国を抜いていました。その優秀な発案者がメロディア様だと判明した時には、すでに遊牧の民との婚約が成立しておりまして……まさか、技術者でも管理者でもない王女が全て提案していたなどとは思わず、我が国の諜報員は相当苦労したようです」

 そりゃ、電気もガスも、呼び名は違っても似たようなものだから……。

 街灯にしてもらったり、ガスコンロ作ってもらったり、貴族の家に電線通してみたらとか、大きなガスボンベ置いたらとか、ライターや部屋のライトとか、とりあえずいろいろ提案だけはしたけど。
 
 前世の電気やガスの使い方は知っててもその仕組み自体は知らないから、結局今もどういう感じで作られているのかなんて知らないままだし。
 実現した機能もあれば、説明しきれず消えた発言も沢山ある。ネットとかテレビとかデジタル写真とか!
 
「とりあえず王女殿下の嫁入りを考え直してもらい、その間に使者を立ててうちの王太子との婚約を迫ろうかと思っていたところ、窓からシーツを投げるメロディア様を発見した次第でして……」
「え!? 誰か見てたんですか!!?」

 アレを誰かに見られていたなんて。
 一国の王女がシーツに捕まり壁をズリズリと移動するあの姿を……。
 
「驚きました。心臓が止まるかと思いましたよ」

 しかも、目の前の人に見られてた。

「当初の予定では宿へ侵入し、護衛を無力化したあとで王女殿下へ我が国の陛下からの文を届ける予定でしたが、本人が望まぬ婚姻であるなら、そのまま亡命のお手伝いをしようと思いまして」

 アシュラスは誘拐の計画と実行は自分の独断だと爽やかに言い切った。
 
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