誘拐されました。犯人は護衛です。

たんぽぽ

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誘拐犯はフレッド

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「……お嬢様、今すぐ逃げましょう」

 シリアは静かにポツリと告げました。
 
「私の知るアルフレド坊ちゃまは誘拐という卑劣な行為をなさるような方ではありませんでした。何か深い理由があっての事と、そう解釈しておりましたが……もはやこれまで」
「シリア?」
「使用人の服に着替えれば屋敷からの脱出は可能です。あとは……私がいれば馬車を1台動かせるでしょう。とりあえず私の生家へ逃げ延びれば時が稼げます」
「待ってシリア。どうしたの?」

 私から心が離れたと思ったのは、間違いだったのでしょうか? 
 それとも、味方の振りをして私をここから連れ去り口封じ?

「坊ちゃまには失望致しました。これでは悪辣な歴史の繰り返しではありませんか!」

 興奮するシリアをどうにかなだめ、犯人と思わしき男と面識があることを伝えました。

「……では、坊ちゃまは3年間お嬢様の護衛をしていたと?」
「ええ」
「その間、恋仲になるような出来事は?」
「……ないわねぇ」
「成人した途端にさらって閉じ込めるなど、おぞましい!」

 シリアの急激な変化についていけませんけど、今ここから逃げても良い結果は生まれない気がします。

 すでに誘拐されて10日経っているのです。

 誘拐された貴族娘が家に帰ったところで、良縁な婚姻が望めるはずもなく……。

 ならばこの際、誘拐犯本人に責任をとらせるという解決策が、私にとって一番良い判断なのではないでしょうか?
 
 誘拐という手段をとったフレッドに怒りや恨みの感情は多少ありますけど、私を想う一心からの犯行だと言うのなら、まあ、広い心で許してあげてもいいです。父が許すかどうかはフレッドの頑張り次第でしょうけど。

 平民と貴族という身分差を埋めるべく、フレッドはこれから努力すればよいのです。その頑張りを見て溜飲を下げるのも一興でしょう。

 許す許さないとは別で、あの朝の恐怖を私は絶対に忘れませんけどね!

「シリア、逃げる前に確認したいことがあるの。フレッドを……アル様とやらを、ここへ連れてきて」
「しかし」
「平気よ」
「……かしこまりました」

 それから思ったよりもすぐ、仮面をつけた誘拐犯が騒々しく部屋にやってきました。

「どうしたお姫さん! 何かあったか?」

 勢いよく部屋に飛び込んできた誘拐犯は、ずかずかと部屋の中を歩いて私の隣に座ります。

「近いです」
「すまん」

 慌ててソファーから立ち上がった誘拐犯に、私は言ってやりました。

「フレッド、そろそろ仮面を外したらいかが?」
「気付いちまったか」
「気付いて欲しかったのでしょう?」

 頭の後ろでくくっている紐を外して、誘拐犯は私に素顔をさらしました。
 気恥ずかしさとうしろめたさがあるのか、フレッドは目を合わせようとはしません。

「ねぇ、アルフレド様? どういうことなのか、説明してくれるわよね?」
「お姫さん!? シリア、お前か!?」

 アルフレドと呼ばれたフレッドは、背後にいるシリアに1度視線をやり、その後ソファーに座る私の前にひざまずきました。

「すまん、お姫さん。これにはいろいろと訳が」

 言い訳しようとしたフレッドの後頭部に、信じられないものを見つけました。

 黒髪のフレッドの根元から、赤い髪が生えてきているのです。

「あなたまさか、髪を染めていたの!?」

 隣国の王族には、ごくまれに赤髪で生まれてくる王子がいるそうです。
 赤髪の王子は血に濡れた狂王の再来と呼ばれ、畏怖の対象となるらしいです。


 今代では第3王子が赤髪で、戦好きの戦闘狂だと、噂が流れてきています。 

 
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