3 / 22
1・白と黒
3
しおりを挟む
「申し訳ないと思ったのですが、内ポケットに時計が入っておりまして」
「え? ああ、コイツのことか?」
「あ! そうです、そちらですわ。その時計、お水に浸かってしまったせいか、うごきが悪くなっておりまして……お見受けしたところ、よい品でしたので大切な物だろうと思い簡単に修理させていただきました」
「……修理? わざわざ、時計屋に持って行ってくれたのか?」
「いえ、あの。わたくし……女のくせにと思われるかもしれませぬがオルゴールとか時計などのカラクリを弄るのが好きでして……そのわたくしが……なので不具合があったらキチンとした職人さんに見て頂いてください」
「貴女が修理を……器用だな」
そういいながら時計を上げたり下げたり、耳に当てて秒針の音を確認するも不具合は感じられず、目の前の虫一つ殺せないような、と、いうか刺繍しか出来ないようなお嬢さんが時計を直したと聞いて驚いていた。
「今のところ、不具合はなさそうだ」
「ふふ、それならよかったわ」
ホッとしたように笑いながら窓のそばに行く彼女をサムは物珍しそうに眺めた。
「今日は、とてもいい天気でしてよ」
「ジェイが、いつになくお喋りだからね。雨が降るかもしれないよ? しかも雷雨だね、あはは!」
サムは俺を見て舌をペロッと出して見せた。
医者の家というだけあって、身なりもきちんとした美しい娘はサムの髪の色とほぼ同じ光を放つ金髪を片側にまとめて緩く三つ編みにしていた。
「医者の娘か、じゃあ貴族だね……ジェイ気に入ったの? 品もいいし、何よりさあ、笑顔がチャーミングだ! ボクはいいと思うよ」
サムはニヤニヤしながら長椅子に腰掛けて彼女を見ていた。俺は茶化すように言ったサムを無視して彼女に視線を移す。
「お顔の色もとってもいいみたいで安心しましたわ、まだこの時期は水が冷たいから……お熱が出るんじゃないかと思ってましたの。でも、とっても丈夫なのね。素晴らしいわ。あ、そうだわ、お茶をお持ちしましょうか? それともスープがいいかしら?」
彼女はそういいながら、わずかに開いていた窓を閉めた。
「では、お茶を頂けるだろうか? ……失礼ついでに、名をなんと申うされるのか」
「あら、わたくしったら……名も名乗らず不躾でしたわ。……リリーと申します。リリアン・グランディア。リリーと呼んでくださいませ」
「リリー……リリアン。美しい名だ」
俺がそういうと、長椅子でサムが笑う。
「ははは! ジェイが女の名前を誉めるなんて珍しいな、うーん、しかし自分は名乗らないなんて失敬だな。ご婦人に名乗らせておいてさ」
俺ははっとして顔をあげた。
「それもそうだな……ご婦人に名乗らせておいて失礼した。俺は、ジュリアスだ」
「ボクはサムだよ! よろしくね!」
「ジュリアス様……ですか。英雄の名ですわね、素敵だわ」
「いや。そんな大層な……ジュリアス・トルメインだ。……たいていの者はジュリアスの頭文字でJ(ジェイ)と呼ぶが、呼びやすいようにしてくれてかまわない……それに年もいくつも離れてはいないだろう?」
「わたくしって……いくつに、見えまして?」
突然の質問に俺は戸惑った。
サムはクスクスと笑いながら「20はいかないぐらいかな? 18か19か。でも、彼女まだ男を知らない顔だよ! 美人で処女なんて天然記念物だよ! お買い得! 早くしないと売れちゃうよ」と俺の耳元で囁く。
俺は横目で一瞬サムを見て言葉を慎めと言う視線を送りながら首を傾げた。
「え? ああ、コイツのことか?」
「あ! そうです、そちらですわ。その時計、お水に浸かってしまったせいか、うごきが悪くなっておりまして……お見受けしたところ、よい品でしたので大切な物だろうと思い簡単に修理させていただきました」
「……修理? わざわざ、時計屋に持って行ってくれたのか?」
「いえ、あの。わたくし……女のくせにと思われるかもしれませぬがオルゴールとか時計などのカラクリを弄るのが好きでして……そのわたくしが……なので不具合があったらキチンとした職人さんに見て頂いてください」
「貴女が修理を……器用だな」
そういいながら時計を上げたり下げたり、耳に当てて秒針の音を確認するも不具合は感じられず、目の前の虫一つ殺せないような、と、いうか刺繍しか出来ないようなお嬢さんが時計を直したと聞いて驚いていた。
「今のところ、不具合はなさそうだ」
「ふふ、それならよかったわ」
ホッとしたように笑いながら窓のそばに行く彼女をサムは物珍しそうに眺めた。
「今日は、とてもいい天気でしてよ」
「ジェイが、いつになくお喋りだからね。雨が降るかもしれないよ? しかも雷雨だね、あはは!」
サムは俺を見て舌をペロッと出して見せた。
医者の家というだけあって、身なりもきちんとした美しい娘はサムの髪の色とほぼ同じ光を放つ金髪を片側にまとめて緩く三つ編みにしていた。
「医者の娘か、じゃあ貴族だね……ジェイ気に入ったの? 品もいいし、何よりさあ、笑顔がチャーミングだ! ボクはいいと思うよ」
サムはニヤニヤしながら長椅子に腰掛けて彼女を見ていた。俺は茶化すように言ったサムを無視して彼女に視線を移す。
「お顔の色もとってもいいみたいで安心しましたわ、まだこの時期は水が冷たいから……お熱が出るんじゃないかと思ってましたの。でも、とっても丈夫なのね。素晴らしいわ。あ、そうだわ、お茶をお持ちしましょうか? それともスープがいいかしら?」
彼女はそういいながら、わずかに開いていた窓を閉めた。
「では、お茶を頂けるだろうか? ……失礼ついでに、名をなんと申うされるのか」
「あら、わたくしったら……名も名乗らず不躾でしたわ。……リリーと申します。リリアン・グランディア。リリーと呼んでくださいませ」
「リリー……リリアン。美しい名だ」
俺がそういうと、長椅子でサムが笑う。
「ははは! ジェイが女の名前を誉めるなんて珍しいな、うーん、しかし自分は名乗らないなんて失敬だな。ご婦人に名乗らせておいてさ」
俺ははっとして顔をあげた。
「それもそうだな……ご婦人に名乗らせておいて失礼した。俺は、ジュリアスだ」
「ボクはサムだよ! よろしくね!」
「ジュリアス様……ですか。英雄の名ですわね、素敵だわ」
「いや。そんな大層な……ジュリアス・トルメインだ。……たいていの者はジュリアスの頭文字でJ(ジェイ)と呼ぶが、呼びやすいようにしてくれてかまわない……それに年もいくつも離れてはいないだろう?」
「わたくしって……いくつに、見えまして?」
突然の質問に俺は戸惑った。
サムはクスクスと笑いながら「20はいかないぐらいかな? 18か19か。でも、彼女まだ男を知らない顔だよ! 美人で処女なんて天然記念物だよ! お買い得! 早くしないと売れちゃうよ」と俺の耳元で囁く。
俺は横目で一瞬サムを見て言葉を慎めと言う視線を送りながら首を傾げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる