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1・白と黒
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「うん、いい香り。美味しそうだね。ジェイ?」
サムは紅茶の香りを大きく吸い込んで言った。
俺は「ありがとう」と小さく礼を伝えるとお茶を口に運んだ。
適度な温度のお茶はくっつきそうだった食道をゆっくりとはがしていき、胃の中を回るように温めた。
思わず、ほう。と、安堵の息が零れる。
「うん。旨いお茶だ、このように旨いお茶を飲んだのは久しい」
「まぁ、ウフフ……ジュリアス様ったら大袈裟ですわ。2日も飲まず食わずで眠っていたんですもの、お茶でなく白湯だとしても温かいものは沁みますわね」
「2日? 2日とは……俺はそんなにも眠っていたのか?」
「ええ、正確には1日半ほどですけど、ここへお連れした時はぼんやりと起きてらして、ウワゴトを」
「譫言」
「サム、やめろ。と、仰ってすぐ眠られてしまったのです」
サムは笑いながら俺の横を通り過ぎて囁いた。
「ボクは何もしてないよ」
俺はリリーを見て少し笑うと、お茶を飲み干した。
サムは相変わらず落ち着く泣く部屋の中を散策するように歩き回ってクッションの下やカーテンの隙間を覗いたりしている。
いったいそこに何があると思っているのだ?
ご婦人の前で不躾だと怒ろうにも、リリーを怖がらせてしまわないかと何も言えない他所行の顔をした俺がいた。
「すまんが、もう一杯貰えるだろうか?」
「もちろんですわ」
「リリー殿は、良い味覚をしておられる、いや鼻も良いのだろうな、このお茶は飲んだ後の抜けが実にいい」
「まあ! そんなに誉めて頂いて光栄ですわ。友人とのお茶会でオリジナルブレンドというのが流行しておりますの、この前のブレンドは大失敗でしたのよ、そのお茶でなくてよかったわ」
肩をすくめてリリーは笑った、彼女の笑みは様々な国で見たどの女の微笑より美しく品があった。
そして、野の花のように可憐だった。
俺の心の機微に気がついているサムはニヤニヤと下品な笑みを口元に作って寝転んだまま観察を続けたいる。
なんてヤツだ、きっとリリーが出ていった瞬間に大笑いしながらからかうだろう。
ガチャンとドアが開いて、スカーフタイをした男が入ってきた。
白髪で品のよい笑みを浮かべた男はベストのポケットにハンカチをしまいながら言った。
「やあ、気分はどうかね? リリーから目が覚めたと聞いてね、安心したよ……うん顔色は良さそうだな……失礼するよ」
そう言って男は俺の瞼を下げる。
「うん、大丈夫そうだな……しかし驚いたよ、魚を釣りに行って鳥や野ネズミを捕獲したことはあるが、まさか人間が釣れるとはね」
男はリリーからお茶のカップを受け取ると笑った。
「おっと、失礼。わたしはリリーの父でね、ピーターだ、ピーター・グランディア。貴族称号をもっているが、しがない田舎の町医者だ」
「助けていただいたようで、本当にご迷惑をおかけしました。そして感謝しております。俺……わたしは、ジュリアスと申します。ジュリアス、トルメインと申します。都の外れに定住しております」
「都の、外れ。そうか、では大して流されてもいないな。馬なら30分もかからん距離だ……ところでジュリアスくん。着ておられた軍服に体つきやヘアスタイルから察するに、そうだな……お若いのになかなかの位ではないかね?」
「そんな。ただの…………軍の犬ですよ」
サムは紅茶の香りを大きく吸い込んで言った。
俺は「ありがとう」と小さく礼を伝えるとお茶を口に運んだ。
適度な温度のお茶はくっつきそうだった食道をゆっくりとはがしていき、胃の中を回るように温めた。
思わず、ほう。と、安堵の息が零れる。
「うん。旨いお茶だ、このように旨いお茶を飲んだのは久しい」
「まぁ、ウフフ……ジュリアス様ったら大袈裟ですわ。2日も飲まず食わずで眠っていたんですもの、お茶でなく白湯だとしても温かいものは沁みますわね」
「2日? 2日とは……俺はそんなにも眠っていたのか?」
「ええ、正確には1日半ほどですけど、ここへお連れした時はぼんやりと起きてらして、ウワゴトを」
「譫言」
「サム、やめろ。と、仰ってすぐ眠られてしまったのです」
サムは笑いながら俺の横を通り過ぎて囁いた。
「ボクは何もしてないよ」
俺はリリーを見て少し笑うと、お茶を飲み干した。
サムは相変わらず落ち着く泣く部屋の中を散策するように歩き回ってクッションの下やカーテンの隙間を覗いたりしている。
いったいそこに何があると思っているのだ?
ご婦人の前で不躾だと怒ろうにも、リリーを怖がらせてしまわないかと何も言えない他所行の顔をした俺がいた。
「すまんが、もう一杯貰えるだろうか?」
「もちろんですわ」
「リリー殿は、良い味覚をしておられる、いや鼻も良いのだろうな、このお茶は飲んだ後の抜けが実にいい」
「まあ! そんなに誉めて頂いて光栄ですわ。友人とのお茶会でオリジナルブレンドというのが流行しておりますの、この前のブレンドは大失敗でしたのよ、そのお茶でなくてよかったわ」
肩をすくめてリリーは笑った、彼女の笑みは様々な国で見たどの女の微笑より美しく品があった。
そして、野の花のように可憐だった。
俺の心の機微に気がついているサムはニヤニヤと下品な笑みを口元に作って寝転んだまま観察を続けたいる。
なんてヤツだ、きっとリリーが出ていった瞬間に大笑いしながらからかうだろう。
ガチャンとドアが開いて、スカーフタイをした男が入ってきた。
白髪で品のよい笑みを浮かべた男はベストのポケットにハンカチをしまいながら言った。
「やあ、気分はどうかね? リリーから目が覚めたと聞いてね、安心したよ……うん顔色は良さそうだな……失礼するよ」
そう言って男は俺の瞼を下げる。
「うん、大丈夫そうだな……しかし驚いたよ、魚を釣りに行って鳥や野ネズミを捕獲したことはあるが、まさか人間が釣れるとはね」
男はリリーからお茶のカップを受け取ると笑った。
「おっと、失礼。わたしはリリーの父でね、ピーターだ、ピーター・グランディア。貴族称号をもっているが、しがない田舎の町医者だ」
「助けていただいたようで、本当にご迷惑をおかけしました。そして感謝しております。俺……わたしは、ジュリアスと申します。ジュリアス、トルメインと申します。都の外れに定住しております」
「都の、外れ。そうか、では大して流されてもいないな。馬なら30分もかからん距離だ……ところでジュリアスくん。着ておられた軍服に体つきやヘアスタイルから察するに、そうだな……お若いのになかなかの位ではないかね?」
「そんな。ただの…………軍の犬ですよ」
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