シニカルロマネスク

成宮まりい

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3・夜と昼

3

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「……り、リリー殿も素敵に微笑まれる」

「えっ!」

「あ、いや。……えーっと、リリー殿の、その笑顔は何と申すか、日溜まりのようだ。穏やかで温かい」


リリーは顔を真っ赤にして、サンドイッチを両手で持ったまま固まった。

「す、すまん。突然おかしなこと? いや、ええと驚かすような事を申して、ただ……その、俺は昨日も今日もリリー殿に元気を分けてもらったような気持ちになった、感謝する」


「わ、わたくしは何も」

サムは「上出来」と囁いて腕組みを続けた。


「日溜まりの下で食べるメシがこんなにも旨いなんてな、すっかりわすれていた」

「今の季節だと、少し行った川の畔に木イチゴが沢山実を付けていますわ、そうだわ! 今度、お弁当をもって木イチゴ狩りに行きましょうよ、わたくし美味しい木イチゴのケーキを作りますわ……あ」

「どうされた?」

俺が首を傾げると、リリーは申し訳なさそうに言った。

「ジュリアス様は、すぐに……街にお戻りになるんですものね、イチゴ狩りなんて。ごめんなさい、おかしな事を言ってしまって」

サムは俺を、にやにやとして見ながらロッキングチェアに座っているかのようにユラユラと、揺れて見せた。


「ドクターのお許しが出るまではこちらで世話になろうかと思っているが、その間に行けなければ……リリー殿さえよろしければ、街へ戻った後にイチゴ狩りに参りましょう」


リリーは少しだけ微笑んで言った。

「ありがとうございます、期待しないでお待ちしていますわ」

リリーの切なげな瞳に心臓が跳ねる。

「ひっかかる言い方だね」

サムは興味のない顔をしながら、淡々とした口調で言った。

「期待……されてもいいんですよ」

「ふふふ、お気持ちだけ。たいていの殿方はそう言って戻られないわ」

「何か……イヤな事を思い出させたかな?」

リリーは、ハッした様子で口を押さえると笑った。

「ごめんなさい、わたくしったら」

「いや」

俺は首を振ってお茶に口をつけた。「気になるねぇ。すっごく気になるよね、処女には違いないと思うけど、惚れた男くらいはいるのかな」サムは俺の耳元でコソコソとそう言うとオッドマンに足を投げ出した。



紅茶の湯気が優しい空気を運ぶ。


リリーは少し微笑んで空を見上げた。


昼食をとりながら、リリーは川で採れる魚の話をしたり教会のイベントで子供たちと遊んだ話を楽し気にした。


「旨い昼食だった」

「よかったわ、食欲もおありになるようで」

「このまま、少し庭を見せてもらえますか?」

「! ええ、勿論!」
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