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3・夜と昼
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リリーは弾けそうな笑顔を俺に向けると、メイドを呼んで庭を散歩する事を告げて庭芝に足を運んだ。
「いいね、散歩! ずっと部屋の中じゃあくびが出過ぎて死んじゃうよね」サムは大袈裟に背伸びをして、クルリクルリと芝の上をワルツを踊るような足取りで進んだ。
ここの所のサムからして、一番の上機嫌かもしれない。そんなサムは目に映る花や木を撫でたり匂いを嗅いだりと忙しそうにしていた。
背の低い植栽が小道を造り、ちょっとした迷路のように右左に分かれたりするのを慣れた様子でリリーは進んだ。
迷路のような道を抜けると、小さな噴水とガゼボのある広場のような空間に出た。
「なんだか、探検をした気分だ。ここはさながら……秘密基地だな」
ふふふっと笑ったリリーは噴水の傍にある小さな小鳥用の箱に持って来たらしいパンクズを入れた。
「メジロがくるんですよ」
そう言いながら空を見上げる。
空を見上げる時のリリーの表情はとても儚げで捕まえておかないとふわりふわりと飛んで行ってしまうんじゃないかと思うほどだった。
「明後日は教会でイースターのお祭りがありますのよ」
「そうか……イースターか」
「そうだわ、大変! たまごをに絵を描かなくちゃ。まだいくつか残っていたんだわ」
「……そうか、それは大変だ」
サムはお祭りと聞いて嬉しそうに言った。
「たまごのお絵描き手伝ってあげなよ。昔さ、上手いって言われたじゃないか」
まだ戦どころか剣術も上手くなかった頃、家の庭で兄たちとたまごを探して回った事を思い出した。
母は俺が絵を描いたたまごが一番かわいらしくていいと、褒めてくれたのだった。
そんなに褒められたことのなかった俺はすごく嬉しかったのを覚えている。
「……そうだな」
「え?」
「よければ、たまごの絵を描くのを手伝わせてもらえるだろうか?」
「本当ですか? すごく嬉しいわ……でも、教会に出向きますの、それでもよろしいかしら?」
俺が頷くとリリーは嬉しそうに笑った。
「でも、ジュリアス様の町の教会のように大きくはありませんのよ、本当に小さな教会ですの」
「確かに王宮のそばの教会は、それは立派ですが……気持ちさえしっかり神に届いていれば、お祈りなど教会でなくともどこでも出来ますよ、教会の大きさは関係ないでしょう」
「……あ、ありがとうございます」
「何故? 礼を言われるような事は何も」
「……以前、怪我をされて立ち寄られた名のある貴族の方がここの教会をみて『がっかりした、あれでは神が可哀想だ』と申されたので、町の方にはそうみえるのかしら? と……でも、そうですわよね。誰しもがそう思うわけではありませんものね」
俺が少し微笑むと、リリーは安心したように屋敷に戻る道を歩いた。
「イースターのお祭りは最高だけど、教会に準備に行くのは面倒だよ。クリスマスもイースターも、なんだって教会でやるのかな」
サムはふてくされたように俺のすぐ後を歩いていた。
「ボク、教会の雰囲気嫌い! 留守番してようかな」
俺はリリーと半分並んで歩きながらサムを見た。
ずっと文句を言いながらついて来るサムに少し苦笑して、美しいリリーの横顔に視線を移したのだった。
そんな俺を見てサムは、さらにふてくされて背中に葉っぱや小石を飛ばしたのだった。
「いいね、散歩! ずっと部屋の中じゃあくびが出過ぎて死んじゃうよね」サムは大袈裟に背伸びをして、クルリクルリと芝の上をワルツを踊るような足取りで進んだ。
ここの所のサムからして、一番の上機嫌かもしれない。そんなサムは目に映る花や木を撫でたり匂いを嗅いだりと忙しそうにしていた。
背の低い植栽が小道を造り、ちょっとした迷路のように右左に分かれたりするのを慣れた様子でリリーは進んだ。
迷路のような道を抜けると、小さな噴水とガゼボのある広場のような空間に出た。
「なんだか、探検をした気分だ。ここはさながら……秘密基地だな」
ふふふっと笑ったリリーは噴水の傍にある小さな小鳥用の箱に持って来たらしいパンクズを入れた。
「メジロがくるんですよ」
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「明後日は教会でイースターのお祭りがありますのよ」
「そうか……イースターか」
「そうだわ、大変! たまごをに絵を描かなくちゃ。まだいくつか残っていたんだわ」
「……そうか、それは大変だ」
サムはお祭りと聞いて嬉しそうに言った。
「たまごのお絵描き手伝ってあげなよ。昔さ、上手いって言われたじゃないか」
まだ戦どころか剣術も上手くなかった頃、家の庭で兄たちとたまごを探して回った事を思い出した。
母は俺が絵を描いたたまごが一番かわいらしくていいと、褒めてくれたのだった。
そんなに褒められたことのなかった俺はすごく嬉しかったのを覚えている。
「……そうだな」
「え?」
「よければ、たまごの絵を描くのを手伝わせてもらえるだろうか?」
「本当ですか? すごく嬉しいわ……でも、教会に出向きますの、それでもよろしいかしら?」
俺が頷くとリリーは嬉しそうに笑った。
「でも、ジュリアス様の町の教会のように大きくはありませんのよ、本当に小さな教会ですの」
「確かに王宮のそばの教会は、それは立派ですが……気持ちさえしっかり神に届いていれば、お祈りなど教会でなくともどこでも出来ますよ、教会の大きさは関係ないでしょう」
「……あ、ありがとうございます」
「何故? 礼を言われるような事は何も」
「……以前、怪我をされて立ち寄られた名のある貴族の方がここの教会をみて『がっかりした、あれでは神が可哀想だ』と申されたので、町の方にはそうみえるのかしら? と……でも、そうですわよね。誰しもがそう思うわけではありませんものね」
俺が少し微笑むと、リリーは安心したように屋敷に戻る道を歩いた。
「イースターのお祭りは最高だけど、教会に準備に行くのは面倒だよ。クリスマスもイースターも、なんだって教会でやるのかな」
サムはふてくされたように俺のすぐ後を歩いていた。
「ボク、教会の雰囲気嫌い! 留守番してようかな」
俺はリリーと半分並んで歩きながらサムを見た。
ずっと文句を言いながらついて来るサムに少し苦笑して、美しいリリーの横顔に視線を移したのだった。
そんな俺を見てサムは、さらにふてくされて背中に葉っぱや小石を飛ばしたのだった。
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