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4・悪徳と美徳
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屋敷に戻った後、簡単な身支度をしたリリーと教会に向かった。
見慣れない町並みは新鮮で、俺の住む街ではなかなか見かけない畑の作物や木立や花がどれもが珍しかった。
商店も街のように沢山はなく、酒場と衣料品店の他に1件ある店は、菓子も野菜も本も何から何までと言った感じで扱う合理的な店だった。
「都の方に比べたら、とても田舎でしょう。静かなのだけが取り柄ですわ。……私のような、いい年齢出独り身の女には住みにくい土地ですけれど」
「そんな」
「都会だと、いろんなご婦人方が、おられらでしょうから、そんなに気にもならないでしょうけど……こんな田舎ではね。お茶会を一緒にする子女は皆、許嫁があるわたくしより年下の娘か、既婚の娘ですからね」
確かにリリーの年頃なら嫁いでないほうが少ないだろう。
「皆、わたくしの前では言いませんが「どこかオカシイ」と言われてますのよ。……そんなだからお誕生日がきたら、神様にお仕えするよう教会へお世話になろうかと考えたりも最近しますのよ」
リリーは少し寂しそうに言って肩をすくめた。
街では、ご婦人が美しいが貧しい若い男を買って、着飾らせてはアクセサリーを見せびらかすのと同じような感覚で連れて歩いたり、結婚を焦らし焦らしで舞踏会で男漁りを趣味のようにする娘もいる。
ただ、小さな町の貴族の娘だと言うだけで、王宮へ嫁ぐよりもよほど窮屈な思いをしなくてはいけないのかと不憫に思えた。
「郊外の貴族は大変だ」
俺がそう言うとリリーは小さく首を振った。
「貴族だからというだけではないのです。わたくしの父はご存知の通りお医者をしておりますので……リリアンはお医者の手伝いをしているうちに、吸血鬼に取りつかれて血を飲んでいるとか、結婚しないのは魔女だからじゃないか。なんてバカバカしいにもほどがある噂まで流れる始末でしてよ」
「そうか……医者という地位と名誉ある仕事を妬ましく思う輩もおるのだろうな」
「だからというと語弊があるかも知れませんが……教会へ仕えれば、少なくとも魔女や吸血鬼なんていう噂はなくなるかしら? という安直な考えですの。……まあ、教会は好きなので、そこで生活するのも心穏やかでいられるかも知れませんからね」
サムは身を震わせるようにして言った。
「うわ。いくら魔女疑惑を晴らすためっていっても、教会で暮らすなんて最悪だよ、それこそ地獄だよ! 無理無理、ボクは絶対にいやだよ。質素な生活。パーティーやお茶会どころか一生えっちなことも出来ないんだよ、こんなきれいな子をシスターにするのはもったいない!」
俺は冷静を装いながら聞く。
「本当に望んでおられるのか? それとも妥協案なのか」
「……どちらでもないかも知れません。でも……妥協に近いのかもしれませんわね、妥協……そう、諦めでしょうか」
自嘲気味に笑ったリリーは教会の通用口から中へはいった。
「こちらでお待ちになっててくださいませ、お部屋はあいてるかしら?」
リリーはそういいながら、慣れた様子で正面のドアを開けた。
「あぁ、なんでついてきちゃったんだろう」
サムがそうこぼすのを聞きながら、礼拝堂とかかれたドアを少し開けてみた。
見慣れない町並みは新鮮で、俺の住む街ではなかなか見かけない畑の作物や木立や花がどれもが珍しかった。
商店も街のように沢山はなく、酒場と衣料品店の他に1件ある店は、菓子も野菜も本も何から何までと言った感じで扱う合理的な店だった。
「都の方に比べたら、とても田舎でしょう。静かなのだけが取り柄ですわ。……私のような、いい年齢出独り身の女には住みにくい土地ですけれど」
「そんな」
「都会だと、いろんなご婦人方が、おられらでしょうから、そんなに気にもならないでしょうけど……こんな田舎ではね。お茶会を一緒にする子女は皆、許嫁があるわたくしより年下の娘か、既婚の娘ですからね」
確かにリリーの年頃なら嫁いでないほうが少ないだろう。
「皆、わたくしの前では言いませんが「どこかオカシイ」と言われてますのよ。……そんなだからお誕生日がきたら、神様にお仕えするよう教会へお世話になろうかと考えたりも最近しますのよ」
リリーは少し寂しそうに言って肩をすくめた。
街では、ご婦人が美しいが貧しい若い男を買って、着飾らせてはアクセサリーを見せびらかすのと同じような感覚で連れて歩いたり、結婚を焦らし焦らしで舞踏会で男漁りを趣味のようにする娘もいる。
ただ、小さな町の貴族の娘だと言うだけで、王宮へ嫁ぐよりもよほど窮屈な思いをしなくてはいけないのかと不憫に思えた。
「郊外の貴族は大変だ」
俺がそう言うとリリーは小さく首を振った。
「貴族だからというだけではないのです。わたくしの父はご存知の通りお医者をしておりますので……リリアンはお医者の手伝いをしているうちに、吸血鬼に取りつかれて血を飲んでいるとか、結婚しないのは魔女だからじゃないか。なんてバカバカしいにもほどがある噂まで流れる始末でしてよ」
「そうか……医者という地位と名誉ある仕事を妬ましく思う輩もおるのだろうな」
「だからというと語弊があるかも知れませんが……教会へ仕えれば、少なくとも魔女や吸血鬼なんていう噂はなくなるかしら? という安直な考えですの。……まあ、教会は好きなので、そこで生活するのも心穏やかでいられるかも知れませんからね」
サムは身を震わせるようにして言った。
「うわ。いくら魔女疑惑を晴らすためっていっても、教会で暮らすなんて最悪だよ、それこそ地獄だよ! 無理無理、ボクは絶対にいやだよ。質素な生活。パーティーやお茶会どころか一生えっちなことも出来ないんだよ、こんなきれいな子をシスターにするのはもったいない!」
俺は冷静を装いながら聞く。
「本当に望んでおられるのか? それとも妥協案なのか」
「……どちらでもないかも知れません。でも……妥協に近いのかもしれませんわね、妥協……そう、諦めでしょうか」
自嘲気味に笑ったリリーは教会の通用口から中へはいった。
「こちらでお待ちになっててくださいませ、お部屋はあいてるかしら?」
リリーはそういいながら、慣れた様子で正面のドアを開けた。
「あぁ、なんでついてきちゃったんだろう」
サムがそうこぼすのを聞きながら、礼拝堂とかかれたドアを少し開けてみた。
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