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4・悪徳と美徳
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「俺の隊もいくつも戦地を渡りました……そして沢山の罪のない民を巻き込んだ。……それは、幾ら悔いても悔い足りない。もっとしっかりしていれば失わずに済んだ命がある、なぜ神は俺の命を奪わなかったのか……そう思うたびに」
「ジェイ! 何言ってるんだよ! ジェイは立派に統率したし沢山の命を救ったじゃないか! 仕方がなかったんだ! あれはジェイは悪くない!」
「はぁ……そうだな。悔いても失われた命が戻るわけではないからな。だが、あんな風に美しい場所に座ると、こんな俺でも浄化される気がしましたよ」
サムは大きな溜め息をついて腕組みをした。
「だから、教会は嫌いなんだよ。懺悔して許されるなんてありえないよ、必要悪ってもんがあるんだ」
リリーは俺の前に跪いて微笑んだ。
「ジュリアス様……神はもうすでに許してくださっておりますわ。貴方様がこうして生かされているのも神の思し召しでしょう。だから、ジュリアス様もご自身を許してさしあげてください。ご自身を戒めるのはおやめくださいな」
「リリー殿は……優しいな」
「優しくなどありません、わたくしもただの弱い愚民に過ぎません。でも、シスターがよく言っておられます。許すと言うのは世の中で一番難しくて簡単な優しさだと」
「一番難しくて簡単……そうだな」
「神は、それを愛だと申されております。愛というのはとても難しいけれど簡単で、どこにでもあるものなんだという事だそうです……わたくしにもまだちゃんと解りませんが」
リリーはくすっと笑って綺麗に色紙を貼ったたまごを籠に納めた。
「バカバカしい、愛なんかじゃお腹はいっぱいにならないし、愉快にもならない」サムが不服そうに窓の外を眺めた。
「まあ! ジュリアス様とってもお上手。可愛らしいわ」
そう言って俺の飾ったたまごを見てリリーが笑うと「当り前だよ、ジェイは実は芸術のセンスがあるんだ」と得意そうに言った。俺は少し恥ずかしくなって首を振った。
「そんなに褒めても、何もでない。戦の他は、こんな事しかできぬ……無能なのですよ」
「謙遜ですわ。だって、本当にかわいいもの。これを見つけたらハッピーな気分になるわ……でも、割ってしまうのが勿体ないわね。うふふ」
「あはは」
リリーがあまりにも切なげな顔をして言うので、その仕草が可愛らしいのと愉快だったので俺は笑った。
リリーはそんな俺を見て頬を朱に染める。
「ジュリアス様。そうやって笑ったお顔……とても」
「?」
「素敵です」
「!」
俺は今までこんな風に頬を染めたことがあっただろうか。サムが横で大笑いをしている。
「すごい。すごいねリリーは。ジェイをこんな風に普通の男にしてしまうなんてさ。いいよいいよ、ボク。リリーにならジェイをあげてもいいよ」
サムは上機嫌で部屋の中を踊るようにして回った。
「よしてくれ」
リリーは恥ずかしそうに笑って窓の外に目をやった。
「あの子たちが帰って来る前に、あと少し仕上げてしまいましょう。ふふふ」
たまごを手に取ってキャンディを詰めながら俺は考えていた。リリーは今まで出会ったどの類の子女とも違う。
女神とか天使とかそういうものに近いのかもしれないと……。
「ジェイ! 何言ってるんだよ! ジェイは立派に統率したし沢山の命を救ったじゃないか! 仕方がなかったんだ! あれはジェイは悪くない!」
「はぁ……そうだな。悔いても失われた命が戻るわけではないからな。だが、あんな風に美しい場所に座ると、こんな俺でも浄化される気がしましたよ」
サムは大きな溜め息をついて腕組みをした。
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リリーは俺の前に跪いて微笑んだ。
「ジュリアス様……神はもうすでに許してくださっておりますわ。貴方様がこうして生かされているのも神の思し召しでしょう。だから、ジュリアス様もご自身を許してさしあげてください。ご自身を戒めるのはおやめくださいな」
「リリー殿は……優しいな」
「優しくなどありません、わたくしもただの弱い愚民に過ぎません。でも、シスターがよく言っておられます。許すと言うのは世の中で一番難しくて簡単な優しさだと」
「一番難しくて簡単……そうだな」
「神は、それを愛だと申されております。愛というのはとても難しいけれど簡単で、どこにでもあるものなんだという事だそうです……わたくしにもまだちゃんと解りませんが」
リリーはくすっと笑って綺麗に色紙を貼ったたまごを籠に納めた。
「バカバカしい、愛なんかじゃお腹はいっぱいにならないし、愉快にもならない」サムが不服そうに窓の外を眺めた。
「まあ! ジュリアス様とってもお上手。可愛らしいわ」
そう言って俺の飾ったたまごを見てリリーが笑うと「当り前だよ、ジェイは実は芸術のセンスがあるんだ」と得意そうに言った。俺は少し恥ずかしくなって首を振った。
「そんなに褒めても、何もでない。戦の他は、こんな事しかできぬ……無能なのですよ」
「謙遜ですわ。だって、本当にかわいいもの。これを見つけたらハッピーな気分になるわ……でも、割ってしまうのが勿体ないわね。うふふ」
「あはは」
リリーがあまりにも切なげな顔をして言うので、その仕草が可愛らしいのと愉快だったので俺は笑った。
リリーはそんな俺を見て頬を朱に染める。
「ジュリアス様。そうやって笑ったお顔……とても」
「?」
「素敵です」
「!」
俺は今までこんな風に頬を染めたことがあっただろうか。サムが横で大笑いをしている。
「すごい。すごいねリリーは。ジェイをこんな風に普通の男にしてしまうなんてさ。いいよいいよ、ボク。リリーにならジェイをあげてもいいよ」
サムは上機嫌で部屋の中を踊るようにして回った。
「よしてくれ」
リリーは恥ずかしそうに笑って窓の外に目をやった。
「あの子たちが帰って来る前に、あと少し仕上げてしまいましょう。ふふふ」
たまごを手に取ってキャンディを詰めながら俺は考えていた。リリーは今まで出会ったどの類の子女とも違う。
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