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5・可変と不変
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丘への散歩から戻った子供達が、目を白黒させて驚く様はとても愛らしかった。
大人の異質な物を見るような顔ではなく、純粋に俺に対しての興味であり好意的な表情だ。
「おにーさん、誰?」
「しっ! バカだなお前、リリーねえちゃんが男を連れてくるなんて奇跡だぞ!」
「えっ? リリーねえちゃんの心に決めた人?」
俺はクスクスと笑った。
「残念ながら、そんな素敵な者じゃないよ、リリー殿のお父上に拾っていただいたのだよ」
「そうなんだ! ドクターの患者なの? じゃあおねえちゃんのイイヒトじゃないの?」
「何だ、残念。おにーさん、かっこいいし。リリーねえちゃんにもやっともらい手が現れたかと思ったのに」
「……かっこいい?」
「うん、カッコいい!」
「私もかっこいいと思う!」
俺は何だか恥ずかしくなりながら、そう口々に言って見上げる子供達の、頭を撫でた。
「どうも……ありがとう」
頭を撫でられた事に少しテレた子供達は、とても無垢でかわいらしかった。
「ねえねえ、おにーさんは軍人?」
「うん? 何で、そう思う?」
「えーっと、商人はこんシャツ着ない、貴族の男だったらもっと軟弱なシャツ……ブラウス着てるだろ、それに貴族の男は大抵髪を長くしてる、そんな髪を短くしてるのは司祭様か軍人以外ないからね」
「こらっ、ジャック!」
「だってそうだろ? 商人はそんなに上等なシャツも着ないし、髪もそんなに短くしないもん」
「ごめんなさい、ジャックの家はパン屋さんでしたの……だから、町のというか商人をよく見てきたので」
リリーはそう言いながら頭をさげた。サムは子供が嫌いな事もあって眉間にシワを寄せて寝たふりを決め込んでいた。
「いや、かまわないさ。すばらしい観察力だよ。彼の言うとおり、商人ならアクティブに動けるかっこうだろうし、こんな堅苦しいシャツも着ないだろう、髪だってこんな短髪に刈ってしまう必要もないからね。……ジャックといったか? 軍ならすばらしい偵察部隊だよ」
俺がそう言うと、ジャックという少年はうれしそうに敬礼をしてみせた。
「ねえ、にいちゃん。オレみたいにさ、親がいなくなった奴でも、軍人になれるかな? オレ、王様とか女王様の護衛とかしたいんだ」
「……ああ、なれるさ、だが入隊にはそれなりの試験、審査があるんだ。だから本を読んで知識を高めておくことは大事だし、読み書きはしっかり出来んとダメなんだぞ」
ジャックは「本読まなきゃダメかぁ」と小さな声で言って顔を上げた。
「本は嫌いだけどがんばるよ!」
「じゃあ。俺は頑張ってもっとえらくなって、ジャックが入隊志願してきたときに太鼓判つきのOKだせるようにしとかなくちゃダメだな」
「うん! 頑張ってよ! いま、どれくらいえらいの?」
「今は……中尉だから、そんなには偉くないな」
ジャックは指を折って隊の相関図でも頭に画いているのか、うーんと首を捻った。
「中尉ってすごいじゃんかよ! 次は大尉だろ?」
「ははは! 大尉になれば権限も少しはあるな。それまてまの道のりは遠いんだぞ」
「ジャック、中尉ってすごいの?」
「当たり前だろ?」
ジャックは下の子供達に図を書いて説明を始めた。
「ジャックったら、ジュリアス様のことを気に入ってしまったようですね」
「あはは、それはどうかな?」
窓辺のロッカーベンチに腰掛けて子供達を見ていると、春の海のように心が穏やかで凪いでいるような機分になってきた。
大人の異質な物を見るような顔ではなく、純粋に俺に対しての興味であり好意的な表情だ。
「おにーさん、誰?」
「しっ! バカだなお前、リリーねえちゃんが男を連れてくるなんて奇跡だぞ!」
「えっ? リリーねえちゃんの心に決めた人?」
俺はクスクスと笑った。
「残念ながら、そんな素敵な者じゃないよ、リリー殿のお父上に拾っていただいたのだよ」
「そうなんだ! ドクターの患者なの? じゃあおねえちゃんのイイヒトじゃないの?」
「何だ、残念。おにーさん、かっこいいし。リリーねえちゃんにもやっともらい手が現れたかと思ったのに」
「……かっこいい?」
「うん、カッコいい!」
「私もかっこいいと思う!」
俺は何だか恥ずかしくなりながら、そう口々に言って見上げる子供達の、頭を撫でた。
「どうも……ありがとう」
頭を撫でられた事に少しテレた子供達は、とても無垢でかわいらしかった。
「ねえねえ、おにーさんは軍人?」
「うん? 何で、そう思う?」
「えーっと、商人はこんシャツ着ない、貴族の男だったらもっと軟弱なシャツ……ブラウス着てるだろ、それに貴族の男は大抵髪を長くしてる、そんな髪を短くしてるのは司祭様か軍人以外ないからね」
「こらっ、ジャック!」
「だってそうだろ? 商人はそんなに上等なシャツも着ないし、髪もそんなに短くしないもん」
「ごめんなさい、ジャックの家はパン屋さんでしたの……だから、町のというか商人をよく見てきたので」
リリーはそう言いながら頭をさげた。サムは子供が嫌いな事もあって眉間にシワを寄せて寝たふりを決め込んでいた。
「いや、かまわないさ。すばらしい観察力だよ。彼の言うとおり、商人ならアクティブに動けるかっこうだろうし、こんな堅苦しいシャツも着ないだろう、髪だってこんな短髪に刈ってしまう必要もないからね。……ジャックといったか? 軍ならすばらしい偵察部隊だよ」
俺がそう言うと、ジャックという少年はうれしそうに敬礼をしてみせた。
「ねえ、にいちゃん。オレみたいにさ、親がいなくなった奴でも、軍人になれるかな? オレ、王様とか女王様の護衛とかしたいんだ」
「……ああ、なれるさ、だが入隊にはそれなりの試験、審査があるんだ。だから本を読んで知識を高めておくことは大事だし、読み書きはしっかり出来んとダメなんだぞ」
ジャックは「本読まなきゃダメかぁ」と小さな声で言って顔を上げた。
「本は嫌いだけどがんばるよ!」
「じゃあ。俺は頑張ってもっとえらくなって、ジャックが入隊志願してきたときに太鼓判つきのOKだせるようにしとかなくちゃダメだな」
「うん! 頑張ってよ! いま、どれくらいえらいの?」
「今は……中尉だから、そんなには偉くないな」
ジャックは指を折って隊の相関図でも頭に画いているのか、うーんと首を捻った。
「中尉ってすごいじゃんかよ! 次は大尉だろ?」
「ははは! 大尉になれば権限も少しはあるな。それまてまの道のりは遠いんだぞ」
「ジャック、中尉ってすごいの?」
「当たり前だろ?」
ジャックは下の子供達に図を書いて説明を始めた。
「ジャックったら、ジュリアス様のことを気に入ってしまったようですね」
「あはは、それはどうかな?」
窓辺のロッカーベンチに腰掛けて子供達を見ていると、春の海のように心が穏やかで凪いでいるような機分になってきた。
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