【源次物語】最後の特攻隊員〜未来を生きる君へ〜

OURSKY

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〈お揃いの誕生日プレゼント〉前編

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 徴兵検査は、10月25日から11月5日にかけて本籍地で行われた。
 本籍地なので僕は埼玉で、ヒロは高知で……
 ヒロは「久し振りに明希子おばさんと従兄弟のただしにも会えるし楽しみじゃ~下の息子の名前は何だったかのう」と嬉しそうにしていたが……
 僕は妹が死んでから厳しく育てられたこともあり、久し振りの帰省と望まない徴兵検査で気が重かった。

 そう言えばヒロの生みの親についての話を聞いたことがないが……自分から話してくれるのを待つことにした。

「なあ源次、一緒に海軍入ろうな! 飛行機乗りになってお前と空、飛びたいわ」

「う……ん、僕も海軍を希望するよ……つらい訓練もヒロと一緒だったら頑張れる気がするし」

 僕がそう答えたのは、陸軍では酷いイジメがあるという噂を聞いたからで……海軍の方がまだマシという消極的な理由からだった。

 徴兵検査では身体検査と勉強のテストがあり、身体検査は身長、体重、視力、聴力……胸囲や足型、上肢・下肢の関節運動検査なども行われた。
 鼻腔口腔咽喉の確認や陰部肛門検査、肺のレントゲンを撮って感染症がないかも確認される。
 検査の結果は、甲・乙・丙・丁と4段階に分けられて、丙種合格者までを12月から入隊させることになっていたが……甲を貰うのは大変名誉なことだった。

 地域の小学校などに集められた対象者はフンドシ一丁で様々な検査を受けることになっていて恥ずかしかったが……何より丸裸にならなければいけない検査が本当に嫌だった。

 最後の方で「時に希望はあるか」と徴兵官に聞かれたので、ヒロの言葉を思い出し「海軍に行きたいです」と答えた。

「海軍で何をするんだ、船に乗るのか?」

「飛行機に乗りたい……です」

「ふん、ようし分かった」

 結果はすぐに出て、恐れ多いことに甲種合格で海軍の所属になった。

 海軍の新兵教育を行う海兵団は、横須賀、呉、佐世保、舞鶴などに置かれていて……
 ヒロは本籍地が高知で居住地が東京なので多少考慮されたのか、一緒に横須賀海兵団に入団することになった。
 それは、僕の部屋でヒロと結果報告会をして知ったことで……

「まさかヒロも同じ横須賀とは心強いよ! 久し振りの生家どうだった?」

「久し振りに正や明希子おばさん達に会えて、めっちゃ楽しかったんやけどな~桜、切られとったわ……」

「えっ?」

「坂本龍馬はな……吉野に花見に行く~言うて家を出て坂本家の守神・和霊神社に寄った後に出藩しちょるから、神田の吉野川の桜を見る度に同じ桜かもしれんとワクワクしとったんやけどな~なくなってしもた……」

「桜は燃料にも使われるようになったしね……特に川沿いの桜は、ほとんど伐採されて今残っている桜は本当に貴重だよ」

「桜は日本の心やのに、なんだか虚しくなってしもたわ……せやけど仕方ないもんな」

「桜だけじゃなく立教の礼拝堂も何も無くなっちゃったしね……」

 立教大学はキリスト教系の大学だが戦争によりその関係が断ち切られ、大学内にある教会……礼拝堂は1942年10月から閉鎖されていた。
 金属類回収令によって大学の門扉も鉄製から木製へと変わり、礼拝堂内の内陣と外陣とを分けるスクリーンや説教壇、長椅子などは防空壕を作る際の資材として没収された。

 僕はクリスチャンではないが、ほぼ何も無くなった教会を見た時は心にぽっかり穴が空いたというか、なんだか寂しかった。
 食堂と2・3号館に囲まれた芝生には空襲に備えるための防空壕が数箇所掘られていて、2・4号館は軍による接収をうけて陸軍造兵廠の病院や築城本部になっていたので余計に……
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