70 / 80
〈希望の光〉前編
しおりを挟む
1946年1月7日に僕は同じ場所で純子にプロポーズし、僕達は結婚した。
プロポーズの言葉は坂本くん並にキザな台詞を言ってしまい……
恥ずかし過ぎて目を瞑り、お辞儀をしながら差し出した日記帳を、純子は泣きながら受け取ってくれた。
「最高の誕生日プレゼントありがとう……結婚しよ? 源ちゃん」と最高の泣き笑いの笑顔で……
僕は飛び上がるほど嬉しくて、抱き締めながら「僕が一生、守るから」と言ったら、「守ってくれなくていい……私があなたを守りたい」と言われてしまった。
そして僕達は、ある約束をした。
「源ちゃん、お願いがあるの……約束して? 私より絶対長生きするって……私、もう二度と大切な人を先に亡くしたくないの」
「僕は君が先にいなくなるなんて耐えられない……同じ瞬間に死にたい」
「駄目! 約束してくれないなら結婚しない!」
「ええ~!? しょうがないな、約束するよ……じゃあ君より少しだけ長生きして同じ日に死ぬ! それもダメだっていうなら結婚しない!」
「ええ~!? 何それ~じゃあ私、うんと長生きしないとだわ」
そう言って笑う純子の横顔は、夕日に照らされて光っていて……
本当に本当にキレイだった。
入籍の日は11月1日に決めた。
そうすれば結婚記念日と共にヒロの誕生日を毎年祝えるから……
因みに平井くんは肺の病で一時危なかったそうだが、治って無事に由香里ちゃんと結婚したという手紙が届いた。
そして坂本くんの赤ちゃんも無事生まれたそうで……
付けられた名前は「一」……坂本亘の「亘」は「一」で挟まれているから、だそうだ。
島田くんのお母さんもお元気で、長生きすると張り切っているらしい。
1946年……清水かづら先生は戦後の子供達のために文化会の会長になり、ヒロの描いた『最高に幸福な王子』を劇にして小学校の講堂で公開してくれた。
そして僕達の描いた『未来を生きる君へ』とヒロの描いた『最高に幸福な王子』は市の図書館に寄贈されることになった。
僕は漫画を今後も描かないのか聞かれたが、ヒロの書いた物語以外を描く気は全くなかった。
僕達は必死に勉強をして……僕は日本史の教師、純子は音楽の教師になった。
平井くんは作家になり、推理小説や童話を書いたり、特攻で空に散った仲間を忘れて欲しくないと色々な本を出した。
平井くんのお父さんの正体が、実は江戸川散歩先生だと聞いた時は本当に驚いたが……
思い返せば幾つもヒントがあった気がする。
生活がだいぶ落ち着いた頃、僕達と平井くん夫妻は立教のチャペルで合同結婚式を挙げた。
平井くんちと違って僕達二人の間には子供はできなかったが、僕達は本当に幸せだった。
何の因果か分からないが、巡り巡って純子が通っていた女学校である女子高の教師となり……絵が上手いからと美術部の顧問もやる事になった。
1964年10月10日……僕達が学徒出陣壮行会をやった「明治神宮外苑競技場」が 「国立競技場」へと生まれ変わり、東京オリンピックが行われた。
何も無くなった焼け野原だった東京に沢山の新しい建物ができて、皆が希望に満ち溢れていて……昔の景色と今の景色を重ね合わせて涙が出た。
1970年8月15日……戦後25周年の講演が地元の文化センターで行われるそうで、特別講師として講演を頼まれた。
地元に暮らす戦争体験者であり、歴史の教師でもあるから適任という事になったらしい。
丁度その年は、僕達が住んでいた大和町も市制施行に伴い……新しい市の名前を市民から募集していた。
講演の日、僕はとても緊張していた。
戦後生まれの戦争を知らない沢山の学生が聞きにくるそうだが、果たしてずっと言いたかった事を伝えられるのだろうかと……
僕は持参した資料を元に太平洋戦争の歴史を説明した後、事前に用意してきた原稿を読み上げた。
プロポーズの言葉は坂本くん並にキザな台詞を言ってしまい……
恥ずかし過ぎて目を瞑り、お辞儀をしながら差し出した日記帳を、純子は泣きながら受け取ってくれた。
「最高の誕生日プレゼントありがとう……結婚しよ? 源ちゃん」と最高の泣き笑いの笑顔で……
僕は飛び上がるほど嬉しくて、抱き締めながら「僕が一生、守るから」と言ったら、「守ってくれなくていい……私があなたを守りたい」と言われてしまった。
そして僕達は、ある約束をした。
「源ちゃん、お願いがあるの……約束して? 私より絶対長生きするって……私、もう二度と大切な人を先に亡くしたくないの」
「僕は君が先にいなくなるなんて耐えられない……同じ瞬間に死にたい」
「駄目! 約束してくれないなら結婚しない!」
「ええ~!? しょうがないな、約束するよ……じゃあ君より少しだけ長生きして同じ日に死ぬ! それもダメだっていうなら結婚しない!」
「ええ~!? 何それ~じゃあ私、うんと長生きしないとだわ」
そう言って笑う純子の横顔は、夕日に照らされて光っていて……
本当に本当にキレイだった。
入籍の日は11月1日に決めた。
そうすれば結婚記念日と共にヒロの誕生日を毎年祝えるから……
因みに平井くんは肺の病で一時危なかったそうだが、治って無事に由香里ちゃんと結婚したという手紙が届いた。
そして坂本くんの赤ちゃんも無事生まれたそうで……
付けられた名前は「一」……坂本亘の「亘」は「一」で挟まれているから、だそうだ。
島田くんのお母さんもお元気で、長生きすると張り切っているらしい。
1946年……清水かづら先生は戦後の子供達のために文化会の会長になり、ヒロの描いた『最高に幸福な王子』を劇にして小学校の講堂で公開してくれた。
そして僕達の描いた『未来を生きる君へ』とヒロの描いた『最高に幸福な王子』は市の図書館に寄贈されることになった。
僕は漫画を今後も描かないのか聞かれたが、ヒロの書いた物語以外を描く気は全くなかった。
僕達は必死に勉強をして……僕は日本史の教師、純子は音楽の教師になった。
平井くんは作家になり、推理小説や童話を書いたり、特攻で空に散った仲間を忘れて欲しくないと色々な本を出した。
平井くんのお父さんの正体が、実は江戸川散歩先生だと聞いた時は本当に驚いたが……
思い返せば幾つもヒントがあった気がする。
生活がだいぶ落ち着いた頃、僕達と平井くん夫妻は立教のチャペルで合同結婚式を挙げた。
平井くんちと違って僕達二人の間には子供はできなかったが、僕達は本当に幸せだった。
何の因果か分からないが、巡り巡って純子が通っていた女学校である女子高の教師となり……絵が上手いからと美術部の顧問もやる事になった。
1964年10月10日……僕達が学徒出陣壮行会をやった「明治神宮外苑競技場」が 「国立競技場」へと生まれ変わり、東京オリンピックが行われた。
何も無くなった焼け野原だった東京に沢山の新しい建物ができて、皆が希望に満ち溢れていて……昔の景色と今の景色を重ね合わせて涙が出た。
1970年8月15日……戦後25周年の講演が地元の文化センターで行われるそうで、特別講師として講演を頼まれた。
地元に暮らす戦争体験者であり、歴史の教師でもあるから適任という事になったらしい。
丁度その年は、僕達が住んでいた大和町も市制施行に伴い……新しい市の名前を市民から募集していた。
講演の日、僕はとても緊張していた。
戦後生まれの戦争を知らない沢山の学生が聞きにくるそうだが、果たしてずっと言いたかった事を伝えられるのだろうかと……
僕は持参した資料を元に太平洋戦争の歴史を説明した後、事前に用意してきた原稿を読み上げた。
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
日本国破産?そんなことはない、財政拡大・ICTを駆使して再生プロジェクトだ!
黄昏人
SF
日本国政府の借金は1010兆円あり、GDP550兆円の約2倍でやばいと言いますね。でも所有している金融性の資産(固定資産控除)を除くとその借金は560兆円です。また、日本国の子会社である日銀が460兆円の国債、すなわち日本政府の借金を背負っています。まあ、言ってみれば奥さんに借りているようなもので、その国債の利子は結局日本政府に返ってきます。え、それなら別にやばくないじゃん、と思うでしょう。
でもやっぱりやばいのよね。政府の予算(2018年度)では98兆円の予算のうち収入は64兆円たらずで、34兆円がまた借金なのです。だから、今はあまりやばくないけど、このままいけばドボンになると思うな。
この物語は、このドツボに嵌まったような日本の財政をどうするか、中身のない頭で考えてみたものです。だから、異世界も超能力も出てきませんし、超天才も出現しません。でも、大変にボジティブなものにするつもりですので、楽しんで頂ければ幸いです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる