【源次物語】最後の特攻隊員〜未来を生きる君へ〜

OURSKY

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〈希望の光〉前編

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 1946年1月7日に僕は同じ場所で純子にプロポーズし、僕達は結婚した。
 プロポーズの言葉は坂本くん並にキザな台詞を言ってしまい……
 恥ずかし過ぎて目を瞑り、お辞儀をしながら差し出した日記帳を、純子は泣きながら受け取ってくれた。

 「最高の誕生日プレゼントありがとう……結婚しよ? 源ちゃん」と最高の泣き笑いの笑顔で……

 僕は飛び上がるほど嬉しくて、抱き締めながら「僕が一生、守るから」と言ったら、「守ってくれなくていい……私があなたを守りたい」と言われてしまった。

 そして僕達は、ある約束をした。

「源ちゃん、お願いがあるの……約束して? 私より絶対長生きするって……私、もう二度と大切な人を先に亡くしたくないの」

「僕は君が先にいなくなるなんて耐えられない……同じ瞬間に死にたい」

「駄目! 約束してくれないなら結婚しない!」

「ええ~!? しょうがないな、約束するよ……じゃあ君より少しだけ長生きして同じ日に死ぬ! それもダメだっていうなら結婚しない!」

「ええ~!? 何それ~じゃあ私、うんと長生きしないとだわ」

 そう言って笑う純子の横顔は、夕日に照らされて光っていて……
 本当に本当にキレイだった。

 入籍の日は11月1日に決めた。
 そうすれば結婚記念日と共にヒロの誕生日を毎年祝えるから……

 因みに平井くんは肺の病で一時危なかったそうだが、治って無事に由香里ちゃんと結婚したという手紙が届いた。
 そして坂本くんの赤ちゃんも無事生まれたそうで……
 付けられた名前は「はじめ」……坂本亘の「亘」は「一」で挟まれているから、だそうだ。
 島田くんのお母さんもお元気で、長生きすると張り切っているらしい。

 1946年……清水かづら先生は戦後の子供達のために文化会の会長になり、ヒロの描いた『最高に幸福な王子』を劇にして小学校の講堂で公開してくれた。 
 そして僕達の描いた『未来を生きる君へ』とヒロの描いた『最高に幸福な王子』は市の図書館に寄贈されることになった。
 僕は漫画を今後も描かないのか聞かれたが、ヒロの書いた物語以外を描く気は全くなかった。

 僕達は必死に勉強をして……僕は日本史の教師、純子は音楽の教師になった。
 平井くんは作家になり、推理小説や童話を書いたり、特攻で空に散った仲間を忘れて欲しくないと色々な本を出した。
 平井くんのお父さんの正体が、実は江戸川散歩先生だと聞いた時は本当に驚いたが……
 思い返せば幾つもヒントがあった気がする。

 生活がだいぶ落ち着いた頃、僕達と平井くん夫妻は立教のチャペルで合同結婚式を挙げた。
 平井くんちと違って僕達二人の間には子供はできなかったが、僕達は本当に幸せだった。

 何の因果か分からないが、巡り巡って純子が通っていた女学校である女子高の教師となり……絵が上手いからと美術部の顧問もやる事になった。
 
 1964年10月10日……僕達が学徒出陣壮行会をやった「明治神宮外苑競技場」が 「国立競技場」へと生まれ変わり、東京オリンピックが行われた。
 何も無くなった焼け野原だった東京に沢山の新しい建物ができて、皆が希望に満ち溢れていて……昔の景色と今の景色を重ね合わせて涙が出た。

 1970年8月15日……戦後25周年の講演が地元の文化センターで行われるそうで、特別講師として講演を頼まれた。
 地元に暮らす戦争体験者であり、歴史の教師でもあるから適任という事になったらしい。
 丁度その年は、僕達が住んでいた大和町も市制施行に伴い……新しい市の名前を市民から募集していた。

 講演の日、僕はとても緊張していた。
 戦後生まれの戦争を知らない沢山の学生が聞きにくるそうだが、果たしてずっと言いたかった事を伝えられるのだろうかと……

 僕は持参した資料を元に太平洋戦争の歴史を説明した後、事前に用意してきた原稿を読み上げた。
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