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第17章
第1話(5)
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「おとなしく見世物になんかなってやるものかって反発心だけで逃げ出したけど、本当に逃げきれるとは思ってなかったんだよね。だけどそのおかげで、少しでも群ちゃんを助けてあげることができてよかったよ」
「坂巻さんっ」
「ね、だから今度は群ちゃんが早乙女くんのこと助けに行ってあげて。俺ちょっと、もう動くの無理そうだから」
「ダメです。せめて人目につかない場所まで移動しておかないと。肩貸しますから一緒に――」
「そんなこと言ってる場合じゃないっつってんだろっ!」
坂巻は声を張り上げた。それからすぐにトーンを落とす。
「ごめん、怒鳴ったりして。けど、助かる確率が高いほうを優先したほうがいい。俺が群ちゃんの立場でもそうするし、なにより、動けるなら俺が早乙女くんの救出に向かってやりたかった。彼さ、不器用だけど悪い子じゃないじゃない? だから俺のかわりに、早く行ってあげて。頼むから」
「坂巻さ……っ」
声を詰まらせた群司は、ぐっと奥歯を噛みしめた。
「わかりました、早乙女さんを助けに行ってきます。でも必ず戻ってきますから、そのときは絶対一緒に逃げるって約束してください」
「うん、わかった。待ってる」
あっさり頷くその顔には、すでに諦めが滲んでいた。そんなことはさせるものかと群司は胸ポケットに入れておいたものを取り出し、坂巻の手に握らせた。
「坂巻さん、いいですか? これ、預けるので持っててください。警察の人たちが来てるんですよね? でもそのまえに、確実に助けに来てくれる人がいるはずです。だから信じて、最後まで希望を失わないで」
「群ちゃん、それってどういう……」
「大丈夫、助けは必ず来ます。俺もある人からこれを渡されました。いまは坂巻さんが持っててください。そうすれば俺は、心置きなく坂巻さんをここに残して早乙女さんのところに行けるんで」
ボタンサイズの小さな精密機器を坂巻の手に握らせて、両の掌でしっかりと包みこんだ。
戸惑いを滲ませていた坂巻は、やがてわかったと頷いた。
「じゃあ、俺が群ちゃんのかわりに預かっておくね」
「はい、お願いします」
群司は立ち上がる。それから坂巻に言った。
「坂巻さん、また飲みに行きましょう。今度は俺が、焼酎の梅割り作ってあげますね」
坂巻の顔が、途端にくしゃりと崩れた。
「うん、わかった。楽しみにしてる」
群司は足もとに落ちている縄を拾い上げると、倒れている男の上半身と両足を手早く縛り上げた。そのまま足を持って引きずりながら、カウチソファーの影に移動させる。モニター画面を見ると、随所でさまざまな人間が入り乱れ、混乱している様子が見て取れた。パーティーの招待客。スタッフである黒服の男たち。捜査員らしい制服姿や、彼らを指揮するスーツ姿の刑事と思しき男たち。彼らの動きをひととおり確認してから、群司はあらためて坂巻に頷きかけると管理室を飛び出した。
必ず如月を助け出してみせる。もうこれ以上の犠牲は出させない。
胸にあるのは、強い決意だった。
「坂巻さんっ」
「ね、だから今度は群ちゃんが早乙女くんのこと助けに行ってあげて。俺ちょっと、もう動くの無理そうだから」
「ダメです。せめて人目につかない場所まで移動しておかないと。肩貸しますから一緒に――」
「そんなこと言ってる場合じゃないっつってんだろっ!」
坂巻は声を張り上げた。それからすぐにトーンを落とす。
「ごめん、怒鳴ったりして。けど、助かる確率が高いほうを優先したほうがいい。俺が群ちゃんの立場でもそうするし、なにより、動けるなら俺が早乙女くんの救出に向かってやりたかった。彼さ、不器用だけど悪い子じゃないじゃない? だから俺のかわりに、早く行ってあげて。頼むから」
「坂巻さ……っ」
声を詰まらせた群司は、ぐっと奥歯を噛みしめた。
「わかりました、早乙女さんを助けに行ってきます。でも必ず戻ってきますから、そのときは絶対一緒に逃げるって約束してください」
「うん、わかった。待ってる」
あっさり頷くその顔には、すでに諦めが滲んでいた。そんなことはさせるものかと群司は胸ポケットに入れておいたものを取り出し、坂巻の手に握らせた。
「坂巻さん、いいですか? これ、預けるので持っててください。警察の人たちが来てるんですよね? でもそのまえに、確実に助けに来てくれる人がいるはずです。だから信じて、最後まで希望を失わないで」
「群ちゃん、それってどういう……」
「大丈夫、助けは必ず来ます。俺もある人からこれを渡されました。いまは坂巻さんが持っててください。そうすれば俺は、心置きなく坂巻さんをここに残して早乙女さんのところに行けるんで」
ボタンサイズの小さな精密機器を坂巻の手に握らせて、両の掌でしっかりと包みこんだ。
戸惑いを滲ませていた坂巻は、やがてわかったと頷いた。
「じゃあ、俺が群ちゃんのかわりに預かっておくね」
「はい、お願いします」
群司は立ち上がる。それから坂巻に言った。
「坂巻さん、また飲みに行きましょう。今度は俺が、焼酎の梅割り作ってあげますね」
坂巻の顔が、途端にくしゃりと崩れた。
「うん、わかった。楽しみにしてる」
群司は足もとに落ちている縄を拾い上げると、倒れている男の上半身と両足を手早く縛り上げた。そのまま足を持って引きずりながら、カウチソファーの影に移動させる。モニター画面を見ると、随所でさまざまな人間が入り乱れ、混乱している様子が見て取れた。パーティーの招待客。スタッフである黒服の男たち。捜査員らしい制服姿や、彼らを指揮するスーツ姿の刑事と思しき男たち。彼らの動きをひととおり確認してから、群司はあらためて坂巻に頷きかけると管理室を飛び出した。
必ず如月を助け出してみせる。もうこれ以上の犠牲は出させない。
胸にあるのは、強い決意だった。
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