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第18章
第1話(2)
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世界中を巻きこむ大事件の被疑者死亡のニュースは、さらなる波紋を呼ぶ事態となり、次々に明るみに出る真相とともに連日トップニュースとして取り上げられつづけている。
そしてまた、セオドア・フェリス博士の死に天城製薬が関与していたことを受け、アメリカの捜査機関が真相解明に向けて本格的に動きはじめたと聞く。フェリス、あるいはフェリス使用者に関する対策も世界各国で講じられはじめ、日本の捜査機関も当然のことながら事件処理に追われる日々を送っていた。
「一ヶ月ぶりの休暇ですよね? 疲れてないですか?」
「少し。でも大丈夫」
コーヒーを淹れるという如月にかわって自分がキッチンに立とうとすると、如月は大丈夫だと言って群司をソファーに座らせ、みずからキッチンに移動した。
「部屋の雰囲気、少し変わりました? なんか見慣れない小物が増えたかも」
「早乙女名義のマンション、引き払ったから」
如月の答えに、ああ、なるほどと群司は納得した。
「言ってくれたら、荷物運びくらい手伝ったのに」
「大丈夫。向こうにはそんなに物は置いてなかったから。必要なもの以外ほとんど処分して、段ボール数箱分、こっちに送ったくらい」
カップを手にリビングに戻ってきた如月は、ひとつを群司に差し出して、すぐ横に並んで座った。
両手でカップを包んで湯気を立てる中身に軽く息を吹きかけ、ひとくち啜って小さく息をつく。気の抜けたその様子が群司に対する心の距離をそのまま物語っていて、自然に笑みがこぼれた。
「やっぱり結構疲れてるでしょう?」
群司が尋ねると、如月は群司に躰をもたせかけ、肩口に頭を預けてちょっとだけと笑った。その目に、うっすらと隈が浮いている。それも無理からぬことで、退院後すぐに仕事復帰した如月は、この一ヶ月、他の捜査官同様、土日返上で事件処理にあたっていた。家に帰るのは、着替えと仮眠を取りに戻るときだけ。場合によっては、何日も職場に泊まりこむといった状況だったようである。
「まだしばらく、忙しい状況はつづくんですか?」
「うん。でもいちばんの山場は超えたから、泊まりこみとか休日出勤はなくなると思う」
「お疲れさまでした」
群司がねぎらいの言葉をかけると、如月はほっとしたように吐息を漏らした。
「じゃあ今日は、久々に俺が夕飯作りますね。だんだん寒くなってきたし、鍋とかどうですか? 野菜たっぷりで、躰もあったまるでしょう?」
「うん、いい」
頷いたあとで、ふと顔を上げて群司を見上げる。
「今日、泊まってく?」
上目遣いで見つめてくるその可愛さに、理性が試されているような気分になった。
そしてまた、セオドア・フェリス博士の死に天城製薬が関与していたことを受け、アメリカの捜査機関が真相解明に向けて本格的に動きはじめたと聞く。フェリス、あるいはフェリス使用者に関する対策も世界各国で講じられはじめ、日本の捜査機関も当然のことながら事件処理に追われる日々を送っていた。
「一ヶ月ぶりの休暇ですよね? 疲れてないですか?」
「少し。でも大丈夫」
コーヒーを淹れるという如月にかわって自分がキッチンに立とうとすると、如月は大丈夫だと言って群司をソファーに座らせ、みずからキッチンに移動した。
「部屋の雰囲気、少し変わりました? なんか見慣れない小物が増えたかも」
「早乙女名義のマンション、引き払ったから」
如月の答えに、ああ、なるほどと群司は納得した。
「言ってくれたら、荷物運びくらい手伝ったのに」
「大丈夫。向こうにはそんなに物は置いてなかったから。必要なもの以外ほとんど処分して、段ボール数箱分、こっちに送ったくらい」
カップを手にリビングに戻ってきた如月は、ひとつを群司に差し出して、すぐ横に並んで座った。
両手でカップを包んで湯気を立てる中身に軽く息を吹きかけ、ひとくち啜って小さく息をつく。気の抜けたその様子が群司に対する心の距離をそのまま物語っていて、自然に笑みがこぼれた。
「やっぱり結構疲れてるでしょう?」
群司が尋ねると、如月は群司に躰をもたせかけ、肩口に頭を預けてちょっとだけと笑った。その目に、うっすらと隈が浮いている。それも無理からぬことで、退院後すぐに仕事復帰した如月は、この一ヶ月、他の捜査官同様、土日返上で事件処理にあたっていた。家に帰るのは、着替えと仮眠を取りに戻るときだけ。場合によっては、何日も職場に泊まりこむといった状況だったようである。
「まだしばらく、忙しい状況はつづくんですか?」
「うん。でもいちばんの山場は超えたから、泊まりこみとか休日出勤はなくなると思う」
「お疲れさまでした」
群司がねぎらいの言葉をかけると、如月はほっとしたように吐息を漏らした。
「じゃあ今日は、久々に俺が夕飯作りますね。だんだん寒くなってきたし、鍋とかどうですか? 野菜たっぷりで、躰もあったまるでしょう?」
「うん、いい」
頷いたあとで、ふと顔を上げて群司を見上げる。
「今日、泊まってく?」
上目遣いで見つめてくるその可愛さに、理性が試されているような気分になった。
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