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番外編~ある幸せな休日~

第1話(5)

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「ん~、やっぱ俺の琉生さん、最高に可愛い。こんな素敵な恋人にめぐり逢えた俺は世界一の幸せ者って痛感しちゃうな」

 そう言って頬にキスをされ、ふと見たスマホの画面がいつのまにか写真モードから動画に切り替わっていたことに気づいて如月はギョッとした。

「えっ、ちょ……っ、群司これっ! まさか動画で……っ」
「せっかくだからふたりのイチャイチャも撮っておこうかな~って」
「バカバカッ! そんなの撮らなくていいからっ」
「え~? もう撮っちゃってるから諦めて?」
 言いながら、群司はクスクスと笑って如月を抱きしめる。

「ちょっとっ、群司!」
「はい、琉生さんからもほっぺにチュウ、返して?」
「やっ、ヤダッ! そんなのできないっ」
「え~、さっきは琉生さんのほうからしてくれたでしょ? 群司くん、大好きって」
「言ってない! そんなこと言ってないからっ。いいから早く動画止めてっ」
「ダァメ。琉生さんがしてくれるまで、ずっとこのままだよ? いいの?」

 ほら早く、と思わせぶりに頬を差し出されて、如月は「もうっ」と群司の胸を軽く叩いた。それでも結局観念して、カメラを向けられたまま群司の頬にキスをする。ほんのちょっと、口唇くちびるかする程度。
 自分の要求が通ったことに満足したのか、群司は如月の口唇が離れたタイミングでスマホをオフにするとテーブルに置いた。そのまま腕をとり、如月を自分の膝に座らせる。左腕を腰にまわして、頭の後ろに右手を添えた。如月は、その手に導かれるようにしてゆっくりと身をかがめ、群司に口づけた。
 官能を刺激するような濃密なものではなく、互いの気持ちを確かめ合うための情愛をこめたキス。

 甘い吐息とともにそっと口唇を離すと、如月は群司の肩口に顔をうずめた。

「もう。これじゃほんとにバカップルになっちゃう……」

 照れ隠しの苦情を、群司は笑って受け止めた。

「もうとっくになっちゃってるんで、諦めてください」
「そうなの? 俺たちもう、なっちゃってる? バカップル。そうなんだ、なっちゃってたんだ。全然知らなかった……」
「そうですよ? 知らなかった? もうとっくです。だから琉生さんも開きなおって、俺とずっとイチャイチャしててくださいね?」
「しょうがないな。なっちゃってるならしかたない」
「そうです、しかたないんです。一度なったら一生治らないんで、覚悟してください」

 如月の耳もとで、群司はクスクスと笑う。つられて如月も一緒に笑った。頭を撫でる大きな掌の感触が、とても心地よかった。

「さあ、そろそろケーキ切りましょうか。紅茶が冷めきらないうちに」
 言われて、如月は「うん」と群司の膝から下りた。

「琉生さん、自分で切ります? それとも俺が切ったほうがいい?」
「群司に切ってほしい。もったいなくて、包丁入れる勇気ないから」

 またそんな可愛いこと言って、と群司はさらに笑った。

「わかりました。じゃあ俺が切りますね」
 立ち上がった群司は、ケーキの正面をこちら側に向けると、上に乗っているプレートと薔薇をはずした。

「半分だとさすがに量が多いから、三等分くらいが妥当かな。残りはあとで琉生さんが食べてくださいね」
 明日までなら大丈夫なはずだからという群司に、如月は頷いた。

 如月が見守る中、群司は横長のケーキを均等に三つに切り分けると、いちばん見た目のきれいな左端をケーキ皿に載せ、プレートと薔薇を添えて如月のまえに置いた。
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