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第2章
俺は死んじまっただ?(6)
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う、うう~ん……。まあ、たしかに人間離れした見た目をしておられますけど。銀髪美人も、俺の躰の持ち主も。
「ひょっとしてそなた、人の子か?」
ええ、まあそうですね。生まれてこのかた、人外だったことは一度もありません。死んだあとに人外の躰に入っちゃったみたいだけど。
思ったところで頭を抱えた。
ええ~っ、マジか俺。神様押しのけてその躰に入っちゃったとか、いったいどういうこと? いや、それ以前に神様であるという発言自体がどうかって部分もあるんだけど、なんかこう、自分が何者だったかっていう記憶は欠けてても、自分が死んだってことに関してはすんなり受け容れられる部分があって。なんだろう、これ。もしかして自分から生命を絶った系なんだろうか。ブラック企業勤めの社畜が精神を病んで、的な? うっ、なんか俺、すごい可哀想……っていうのは、事実かどうかわからないのでいまは横に置いておくとして、とりあえずほんとに昇天しちゃったんであれば、いまいる場所は人界ではないし、銀髪美人の言う『神』が俺の認識している神様と合致するのかどうかもあとで確認するとして、とにかく、『この世界の人』は、俺が知っている生物の『人』ではないことになる?
「そうか、やはり人の子であったか」
銀髪美人はしみじみと言った。
「どうりで話の通じぬ部分が多いと思った」
うん、まあ、それはこっちのセリフですけどねっ?
やはりどうしても内心でツッコんでしまう。だが、銀髪美人は思わぬことを言った。
「現時点で断定することはできぬが、そなた、死んではおらぬと思うぞ?」
は……、え?
自分の中ではほぼ確定事項だったので、虚を衝かれた。
「え、俺、死んでない? 生きて、る?」
「そのはずだ。そなたは、生のエネルギーに満ちておる」
「生の、エネルギー……。それは、俺が乗っ取っちゃったこの躰の持ち主、あんたの恋人のエネルギーなのでは?」
「違う。エルディラントのものではない。いま我が感じているのは、そなたのエネルギーだ」
「え、けどさっき、その恋人の気配が漂うとかなんとか」
「そうだ。そなたとはまったく異なるはずなのだが、ふとした瞬間の波動がきれいに重なるのだ」
「それは、どういう……?」
今度は俺のほうがまったく理解できなかった。
「ええと、つまり? 俺は死んでなくて、あんたの恋人も死んで――」
「ない」
キッパリと断定されて、ちょっとだけホッとした。
あ、そうなんだ。どっちも生きてるんだ。
胸を撫で下ろしかけたけれども、そうもいかなかった。なにひとつ解決していないからだ。
「そうすると、おたくの恋人は、いまどこに?」
おそるおそる尋ねると、銀髪美人はたちまち沈んだ表情になって俯いた。
「わからぬ。泉に落ちるまでは、そなたはたしかにエルディラントだった」
じゃ、やっぱ、落ちてから目を覚ますまでのあいだに入れ替わったってことか。
そこまで考えて、ふと思いついた。
「あ、もしかして俺がこの躰に入っちゃったことで、あんたの彼氏の意識が押しのけられて深いところに封印された、とかは?」
どこにどう封印されたのかは、訊かれても困るんだが。
「かれし……」
腑に落ちない表情で呟かれて、失言に気づいた。
しまった。神様相手にこの言いかたは不適切か。いや、不敬?
「ああ、いや、うん、恋人! パートナーとか伴侶? になるのかな?」
「我とエルディラントは、まだそのような関係ではない」
「あ、そうなんだ」
銀髪美人は、うん、と頷いた。なんだか、その仕種があどけない。
そうか、同棲はしてるけど、結婚には到ってないってことだよな、たぶん。男同士だけど、そこらへんは神様だと、あんま性別とか関係ないのかな。
「……我のせいかもしれぬ」
弱々しい声には、後悔が滲んでいた。
「ひょっとしてそなた、人の子か?」
ええ、まあそうですね。生まれてこのかた、人外だったことは一度もありません。死んだあとに人外の躰に入っちゃったみたいだけど。
思ったところで頭を抱えた。
ええ~っ、マジか俺。神様押しのけてその躰に入っちゃったとか、いったいどういうこと? いや、それ以前に神様であるという発言自体がどうかって部分もあるんだけど、なんかこう、自分が何者だったかっていう記憶は欠けてても、自分が死んだってことに関してはすんなり受け容れられる部分があって。なんだろう、これ。もしかして自分から生命を絶った系なんだろうか。ブラック企業勤めの社畜が精神を病んで、的な? うっ、なんか俺、すごい可哀想……っていうのは、事実かどうかわからないのでいまは横に置いておくとして、とりあえずほんとに昇天しちゃったんであれば、いまいる場所は人界ではないし、銀髪美人の言う『神』が俺の認識している神様と合致するのかどうかもあとで確認するとして、とにかく、『この世界の人』は、俺が知っている生物の『人』ではないことになる?
「そうか、やはり人の子であったか」
銀髪美人はしみじみと言った。
「どうりで話の通じぬ部分が多いと思った」
うん、まあ、それはこっちのセリフですけどねっ?
やはりどうしても内心でツッコんでしまう。だが、銀髪美人は思わぬことを言った。
「現時点で断定することはできぬが、そなた、死んではおらぬと思うぞ?」
は……、え?
自分の中ではほぼ確定事項だったので、虚を衝かれた。
「え、俺、死んでない? 生きて、る?」
「そのはずだ。そなたは、生のエネルギーに満ちておる」
「生の、エネルギー……。それは、俺が乗っ取っちゃったこの躰の持ち主、あんたの恋人のエネルギーなのでは?」
「違う。エルディラントのものではない。いま我が感じているのは、そなたのエネルギーだ」
「え、けどさっき、その恋人の気配が漂うとかなんとか」
「そうだ。そなたとはまったく異なるはずなのだが、ふとした瞬間の波動がきれいに重なるのだ」
「それは、どういう……?」
今度は俺のほうがまったく理解できなかった。
「ええと、つまり? 俺は死んでなくて、あんたの恋人も死んで――」
「ない」
キッパリと断定されて、ちょっとだけホッとした。
あ、そうなんだ。どっちも生きてるんだ。
胸を撫で下ろしかけたけれども、そうもいかなかった。なにひとつ解決していないからだ。
「そうすると、おたくの恋人は、いまどこに?」
おそるおそる尋ねると、銀髪美人はたちまち沈んだ表情になって俯いた。
「わからぬ。泉に落ちるまでは、そなたはたしかにエルディラントだった」
じゃ、やっぱ、落ちてから目を覚ますまでのあいだに入れ替わったってことか。
そこまで考えて、ふと思いついた。
「あ、もしかして俺がこの躰に入っちゃったことで、あんたの彼氏の意識が押しのけられて深いところに封印された、とかは?」
どこにどう封印されたのかは、訊かれても困るんだが。
「かれし……」
腑に落ちない表情で呟かれて、失言に気づいた。
しまった。神様相手にこの言いかたは不適切か。いや、不敬?
「ああ、いや、うん、恋人! パートナーとか伴侶? になるのかな?」
「我とエルディラントは、まだそのような関係ではない」
「あ、そうなんだ」
銀髪美人は、うん、と頷いた。なんだか、その仕種があどけない。
そうか、同棲はしてるけど、結婚には到ってないってことだよな、たぶん。男同士だけど、そこらへんは神様だと、あんま性別とか関係ないのかな。
「……我のせいかもしれぬ」
弱々しい声には、後悔が滲んでいた。
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