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後日譚・海に浮かぶ月を見る
そのじゅうに 砕け散る ☆
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ゆらゆらと波に揺れる感覚でミントは目覚めた。
子供の頃から、神の手の意地ともいえる指導の下、犯罪に使われやすい薬や毒には体を慣らしているので、基本的に抵抗値が高いのだ。
使われた薬の種類も匂いでわかっているので、意識さえ戻れば解毒も即座にできる。
とりあえず、現状を考察した。
ロザリンデの部屋で会話をしている最中に、窓から不法侵入した男三人に攫われた。
今は袋詰めされたまま、小舟で運ばれている最中だろう。
祝祭の間は大型船舶への移動以外は、小舟でも海に出ることを禁じられているから、終着点は停泊許可を得ている異国の船と予想がついた。
運ぶ小舟が湾外に出たのか、波の揺れが大きくなった。
不自然ではない程度に小さく身じろぎしたら、近くに似たような状態で転がる人間らしきものにぶつかったので、ロザリンデも一緒に運ばれているようだった。
引き離されなくて良かったと安堵しながら、ミントは後ろ手に縛られた手首を確かめて、そのまま縄抜けする。
雑な縛り方だったので、訓練を受けた諜報や暗殺者の類ではないとわかる。
想像するに誘拐犯は、お金で調達した斬り捨て要員の線が妥当である。
とりあえず黒幕に引き渡されるまで、誘拐以上の理不尽はなさそうだと結論付けた。
ロザリンデの身が心配だが、意識を奪ったのも母体に負担のかからない類の魔法薬だったので、しばらくは安全だろう。
手をそっと動かし、猿轡も外しておく。
雇い主の前まで運ばれたら顔を確認されるだろうから、袋から解放されると同時に助けを呼ぶことに決める。
攫われてからの正確な時間はわからないが、すでにローやジルは誘拐に気が付いているはずだった。
義父にしつこいぐらい教えられた、攫われた時の心得をおさらいする。
とにかく身の安全が最優先である。
犯人と対面しても、時間稼ぎの必要がないと判断したら、問答無用の救援要請でかまわない。
聞き取りは騎士団や自警団に任せるものであって、被害者の領分ではないから、何を言われても聞く耳を持ってはいけない。
それにわざわざ誘拐した犯人の言葉など、傷つける意図があるに決まっているのだから、もし耳に入っても相手の言い分や理由などが聞こえてもゴミだと思えば良い。
しかし時間稼ぎが必要な時は、その限りではない。
「何があってもすぐに助けに行くからの」という医者にあるまじき言葉と上目遣いまで思い出して、ふふっとミントは笑った。
お師匠様がいる場所は遠いけれど、ローとジルが近くにいるから、怖がる理由もない。
おでこに召喚陣を込めた加護魔法がかけられているし、あの二人なら呼べばすぐ現れるという確信があった。
だから犯人とやり取りをして、下手に時間稼ぎする必要もないのだ。
大きな船舶にたどり着いたのか男の肩に担がれ、船内に入ると波の音が遠ざかる。
足音は三つ。足音の響きの違いで、ロザリンデも一緒に運ばれているのがわかった。
あと少しで誘拐犯とご対面になる予感に、ミントは気を引き締めた。
救援を要請するには、タイミングが重要である。
長く運ばれて辿り着いたその部屋は、船舶の奥でかなり良い部屋と思われた。
入るなり雑な調子で袋を振られたので、ミントは床に転がり落ちた。
縄抜けしていたから腕でかばって頭は打たなかったけれど、イタタ、と思いながら身を起こすと、同じように袋から出されたロザリンデが目の前にいた。
手を伸ばせば触れられる位置で、優美な仕草で身を起こしながら、あでやかな微笑みを浮かべる様子は美しかった。
貴族らしいその微笑みにピンとくる。
誘拐犯はロザリンデの知り合いだったのだ。
そして穏やかに見えても、怒髪天を衝く勢いで怒っている。
荒れた言葉を口にすれば相手と同じ土俵でぶつかりあうことになり、自分自身の心まで傷ついてしまうものだ。
艶やかな唇が声を紡ぐ寸前に、ロザリンデをかばうようにミントは前に出た。
「助けて、お兄ちゃん!」
高速詠唱代わりに定められた言葉を発すると、同時に術が発動する。
キィン! と氷がはじけるような硬質な音がして、まばゆい金の輝きがミントの頭上ではじけた。
光の筋は生き物のようになめらかな動きで、繊細に絡まり複雑な文様を描き出していく。
光の筋が細やかな文字を生み、黄金の光を放つ魔法陣が空中に描き出された。
「なんだ、これは?!」
悲鳴に似た驚愕の叫びが響いたが、眩いほどに輝く魔法陣はまたたく間に完成していた。
誘拐犯がアタフタと驚いている間にも、宙に浮かんだ魔法陣がひときわ強く輝く。
パチパチと火の粉のように散る黄金の光は、遥か上の甲板にミントの待ち人を運び込む。
天井を越えた先で、ドォォォンッと火薬がはじけるような音が響き渡った。
爆撃と変わらない強い衝撃が船をグラグラと揺らす。
激しく揺れる床に足を踏ん張り立ちながら、天井を見上げたミントはハッとして振り向きざま、ロザリンデの頭をかかえるように抱きしめた。
その瞬間、赤い一条の光が空から降り注いだ。
ドンッと強い衝撃を残した赤い流星は、天井ごと床まで砕き巨大な穴を貫き穿つ。
ガラガラと天井と床が崩れる、阿鼻叫喚のさなか。
ミントに頭を抱え込まれているロザリンデは、服越しでもふわふわと豊かな胸に顔をうずめたまま、ただ呆然としていた。
ギュウギュウと抱きしめてくる腕もやわらかく、それで護っているつもりなのかと叱責するのが本来のロザリンデだが、ミントの胸に顔をうずめてうっとりと目を閉じる。
今だけは恐怖に身を震わせながら、お友達のやわらかな胸に守られるだけの、かよわいお姫様になりきっても良いのだ。
なんという事でしょう。と、とロザリンデは息を吐いた。
投げつけるつもりだった毒のある言葉も、繰り広げるはずだった駆け引きも、一瞬で無になってしまった。
この誘拐の相手がフラメル国の第二王子であることも、ラタンフェのあるカリナン国まで巻き込んだ国際問題になることも、愚かな相手に落とし前を突きつける隙すらも、まるで無かった。
振り上げた心のこぶしを振り下ろすはずだった相手は、粉々になった破片の雨の中を無様に逃げ惑っていて、愉快で仕方かった。
粉々になって雨のようにバラバラと降り注ぐ木材や備品の中で、キラキラと金の散らす魔法陣が、ミントの周囲を守るように光のドームを形作っているので安全が確保されている。
破片の雨に少し遅れて、トンッと穿たれた穴を飛び降りてきた人影があった。
軽い調子で立ち上がった男の姿に、ミントは喜びの声を上げる。
「ローさん!」
「よぉ、無事か? もうちょい待ってろ」
両脇に雑に抱えていたジルとダンテを荷物のようにポイとその場に投げ捨て、ローは右手を伸ばす。
「な……なんなんだ、お前たちは! 私を誰だと思っているのだ?!」
ローは刹那に現れた赤い魔力を放出させる魔槍をつかみ踏み込むと、ミントとロザリンデから少し離れた場所で頭をかかえていた誘拐犯たちをひと薙ぎで弾き飛ばし、振り向きざま破片の雨に打たれてボロボロになった男に向かって投げつけた。
槍は炎に似た赤い尾を引いて、叫んでいる最中の男の顔スレスレを通り過ぎる。
激突した壁はドン! と激しい音を立て、跡形もなく消し飛んだ。
過ぎた風圧でブワリと押されてよろめいた若い男は、背後へと視線を向けると「は?」と間抜けな声を漏らす。
壁だった場所には巨大な穴が開いていて、遠くまで続く海原や丸い月といった美麗な風景が広がっていた。
子供の頃から、神の手の意地ともいえる指導の下、犯罪に使われやすい薬や毒には体を慣らしているので、基本的に抵抗値が高いのだ。
使われた薬の種類も匂いでわかっているので、意識さえ戻れば解毒も即座にできる。
とりあえず、現状を考察した。
ロザリンデの部屋で会話をしている最中に、窓から不法侵入した男三人に攫われた。
今は袋詰めされたまま、小舟で運ばれている最中だろう。
祝祭の間は大型船舶への移動以外は、小舟でも海に出ることを禁じられているから、終着点は停泊許可を得ている異国の船と予想がついた。
運ぶ小舟が湾外に出たのか、波の揺れが大きくなった。
不自然ではない程度に小さく身じろぎしたら、近くに似たような状態で転がる人間らしきものにぶつかったので、ロザリンデも一緒に運ばれているようだった。
引き離されなくて良かったと安堵しながら、ミントは後ろ手に縛られた手首を確かめて、そのまま縄抜けする。
雑な縛り方だったので、訓練を受けた諜報や暗殺者の類ではないとわかる。
想像するに誘拐犯は、お金で調達した斬り捨て要員の線が妥当である。
とりあえず黒幕に引き渡されるまで、誘拐以上の理不尽はなさそうだと結論付けた。
ロザリンデの身が心配だが、意識を奪ったのも母体に負担のかからない類の魔法薬だったので、しばらくは安全だろう。
手をそっと動かし、猿轡も外しておく。
雇い主の前まで運ばれたら顔を確認されるだろうから、袋から解放されると同時に助けを呼ぶことに決める。
攫われてからの正確な時間はわからないが、すでにローやジルは誘拐に気が付いているはずだった。
義父にしつこいぐらい教えられた、攫われた時の心得をおさらいする。
とにかく身の安全が最優先である。
犯人と対面しても、時間稼ぎの必要がないと判断したら、問答無用の救援要請でかまわない。
聞き取りは騎士団や自警団に任せるものであって、被害者の領分ではないから、何を言われても聞く耳を持ってはいけない。
それにわざわざ誘拐した犯人の言葉など、傷つける意図があるに決まっているのだから、もし耳に入っても相手の言い分や理由などが聞こえてもゴミだと思えば良い。
しかし時間稼ぎが必要な時は、その限りではない。
「何があってもすぐに助けに行くからの」という医者にあるまじき言葉と上目遣いまで思い出して、ふふっとミントは笑った。
お師匠様がいる場所は遠いけれど、ローとジルが近くにいるから、怖がる理由もない。
おでこに召喚陣を込めた加護魔法がかけられているし、あの二人なら呼べばすぐ現れるという確信があった。
だから犯人とやり取りをして、下手に時間稼ぎする必要もないのだ。
大きな船舶にたどり着いたのか男の肩に担がれ、船内に入ると波の音が遠ざかる。
足音は三つ。足音の響きの違いで、ロザリンデも一緒に運ばれているのがわかった。
あと少しで誘拐犯とご対面になる予感に、ミントは気を引き締めた。
救援を要請するには、タイミングが重要である。
長く運ばれて辿り着いたその部屋は、船舶の奥でかなり良い部屋と思われた。
入るなり雑な調子で袋を振られたので、ミントは床に転がり落ちた。
縄抜けしていたから腕でかばって頭は打たなかったけれど、イタタ、と思いながら身を起こすと、同じように袋から出されたロザリンデが目の前にいた。
手を伸ばせば触れられる位置で、優美な仕草で身を起こしながら、あでやかな微笑みを浮かべる様子は美しかった。
貴族らしいその微笑みにピンとくる。
誘拐犯はロザリンデの知り合いだったのだ。
そして穏やかに見えても、怒髪天を衝く勢いで怒っている。
荒れた言葉を口にすれば相手と同じ土俵でぶつかりあうことになり、自分自身の心まで傷ついてしまうものだ。
艶やかな唇が声を紡ぐ寸前に、ロザリンデをかばうようにミントは前に出た。
「助けて、お兄ちゃん!」
高速詠唱代わりに定められた言葉を発すると、同時に術が発動する。
キィン! と氷がはじけるような硬質な音がして、まばゆい金の輝きがミントの頭上ではじけた。
光の筋は生き物のようになめらかな動きで、繊細に絡まり複雑な文様を描き出していく。
光の筋が細やかな文字を生み、黄金の光を放つ魔法陣が空中に描き出された。
「なんだ、これは?!」
悲鳴に似た驚愕の叫びが響いたが、眩いほどに輝く魔法陣はまたたく間に完成していた。
誘拐犯がアタフタと驚いている間にも、宙に浮かんだ魔法陣がひときわ強く輝く。
パチパチと火の粉のように散る黄金の光は、遥か上の甲板にミントの待ち人を運び込む。
天井を越えた先で、ドォォォンッと火薬がはじけるような音が響き渡った。
爆撃と変わらない強い衝撃が船をグラグラと揺らす。
激しく揺れる床に足を踏ん張り立ちながら、天井を見上げたミントはハッとして振り向きざま、ロザリンデの頭をかかえるように抱きしめた。
その瞬間、赤い一条の光が空から降り注いだ。
ドンッと強い衝撃を残した赤い流星は、天井ごと床まで砕き巨大な穴を貫き穿つ。
ガラガラと天井と床が崩れる、阿鼻叫喚のさなか。
ミントに頭を抱え込まれているロザリンデは、服越しでもふわふわと豊かな胸に顔をうずめたまま、ただ呆然としていた。
ギュウギュウと抱きしめてくる腕もやわらかく、それで護っているつもりなのかと叱責するのが本来のロザリンデだが、ミントの胸に顔をうずめてうっとりと目を閉じる。
今だけは恐怖に身を震わせながら、お友達のやわらかな胸に守られるだけの、かよわいお姫様になりきっても良いのだ。
なんという事でしょう。と、とロザリンデは息を吐いた。
投げつけるつもりだった毒のある言葉も、繰り広げるはずだった駆け引きも、一瞬で無になってしまった。
この誘拐の相手がフラメル国の第二王子であることも、ラタンフェのあるカリナン国まで巻き込んだ国際問題になることも、愚かな相手に落とし前を突きつける隙すらも、まるで無かった。
振り上げた心のこぶしを振り下ろすはずだった相手は、粉々になった破片の雨の中を無様に逃げ惑っていて、愉快で仕方かった。
粉々になって雨のようにバラバラと降り注ぐ木材や備品の中で、キラキラと金の散らす魔法陣が、ミントの周囲を守るように光のドームを形作っているので安全が確保されている。
破片の雨に少し遅れて、トンッと穿たれた穴を飛び降りてきた人影があった。
軽い調子で立ち上がった男の姿に、ミントは喜びの声を上げる。
「ローさん!」
「よぉ、無事か? もうちょい待ってろ」
両脇に雑に抱えていたジルとダンテを荷物のようにポイとその場に投げ捨て、ローは右手を伸ばす。
「な……なんなんだ、お前たちは! 私を誰だと思っているのだ?!」
ローは刹那に現れた赤い魔力を放出させる魔槍をつかみ踏み込むと、ミントとロザリンデから少し離れた場所で頭をかかえていた誘拐犯たちをひと薙ぎで弾き飛ばし、振り向きざま破片の雨に打たれてボロボロになった男に向かって投げつけた。
槍は炎に似た赤い尾を引いて、叫んでいる最中の男の顔スレスレを通り過ぎる。
激突した壁はドン! と激しい音を立て、跡形もなく消し飛んだ。
過ぎた風圧でブワリと押されてよろめいた若い男は、背後へと視線を向けると「は?」と間抜けな声を漏らす。
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