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*第1章*
変化(1)
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「未夢、お誕生日おめでとう!」
パン、パンとクラッカーの音が弾ける。
週末の土曜日は、私の誕生日だ。毎年誕生日には、私の家で誕生日パーティーをするのが恒例になっている。
パーティーには、今年も健と和人と真理恵が参加してくれた。
「ありがとう!」
高校に入ってからバイトを始めた健は、この日のためにわざわざ日程を空けてくれた。和人は午前中が部活だったため、お昼過ぎから来てくれたんだ。
今は、みんなで生クリームのホールの誕生日ケーキを囲んでいるところだ。
ろうそくの火を消してケーキを切り分けると、それぞれのお皿にケーキを乗せる。
「なんか十六歳って聞くと、またちょっと大人になったような感じがするね」
実はこの四人の中では、私が一番誕生日が遅い。
だから誕生日が来ると、やっとみんなに追いつけたような気持ちになる。
「とは言っても、中身は大して変わらないよな、お前」
「えー、ちょっとは大人っぽくなってない?」
和人に言われて真理恵の方を見るけれど、真理恵も「確かに変わってない」と笑うだけ。
もう、二人ともそんなにはっきり言うことないじゃない……!
「まぁいいんじゃない? 誕生日早くても、それだけ早く老けるだけじゃん」
「ちょっと、健! 私もあんたと同じ四月生まれなんだけど、その言い方はなくない?」
「だってそうだろ? 俺なんて学年上がった瞬間に歳取る感じするし。少しでも若い方がいいじゃん」
健と真理恵のやり取りを見て、思わず笑ってしまった。
「健、悪いけど、なんかその発言ジジ臭い」
「は? マジで? ショックなんだけど!」
きっと健は、私を励ますつもりで言ってくれたんだろうけど、さすがにこの歳でする会話じゃない気がする。
健は少しでも若い方がいいと言うけれど、私は四月生まれの真理恵や健がうらやましい。
だって、早く大人になれるような気がするから。
とはいえ、漠然と大人になることに憧れがあるだけで、特別、大人になってやりたいことがあるわけではないんだけどね。
「あ、和人。ケーキついてるよ」
「え、どこ?」
真理恵に指摘されて、和人は自分の顔のそばに手を当てる。
「違う違う、ここだよ」
真理恵がハンカチで、和人の左頬に触れる。ほんのわずかの生クリームをハンカチで拭き取った。
何てことない、私たちの間柄ではありふれた光景だ。
それなのに、どういうわけか私の中でドクン、と胸が嫌な音を立てた。
真理恵が和人を好きだと聞いたからなのかな。
この数日間、自分でも変だと思うくらいに、二人のことを意識しすぎているように思う。
「未夢? おい、未夢っ!」
「……え?」
名前を呼ばれて顔を上げると、心配そうにこちらを見る和人と目が合う。
「大丈夫か? もしかして具合悪い?」
「ううん、大丈夫」
私、そんなに具合悪そうな顔してたのかな?
なるべく平然を装っていたつもりだったから、和人に指摘されるほど態度にでてしまっていたことに内心驚いた。
「ケーキ食べないんだったら、いくらでももらってやるぜ?」
そのとき、私の隣に座っていた健の手が伸びてきて、私のケーキの上のイチゴをひょいとフォークでさらっていく。
パン、パンとクラッカーの音が弾ける。
週末の土曜日は、私の誕生日だ。毎年誕生日には、私の家で誕生日パーティーをするのが恒例になっている。
パーティーには、今年も健と和人と真理恵が参加してくれた。
「ありがとう!」
高校に入ってからバイトを始めた健は、この日のためにわざわざ日程を空けてくれた。和人は午前中が部活だったため、お昼過ぎから来てくれたんだ。
今は、みんなで生クリームのホールの誕生日ケーキを囲んでいるところだ。
ろうそくの火を消してケーキを切り分けると、それぞれのお皿にケーキを乗せる。
「なんか十六歳って聞くと、またちょっと大人になったような感じがするね」
実はこの四人の中では、私が一番誕生日が遅い。
だから誕生日が来ると、やっとみんなに追いつけたような気持ちになる。
「とは言っても、中身は大して変わらないよな、お前」
「えー、ちょっとは大人っぽくなってない?」
和人に言われて真理恵の方を見るけれど、真理恵も「確かに変わってない」と笑うだけ。
もう、二人ともそんなにはっきり言うことないじゃない……!
「まぁいいんじゃない? 誕生日早くても、それだけ早く老けるだけじゃん」
「ちょっと、健! 私もあんたと同じ四月生まれなんだけど、その言い方はなくない?」
「だってそうだろ? 俺なんて学年上がった瞬間に歳取る感じするし。少しでも若い方がいいじゃん」
健と真理恵のやり取りを見て、思わず笑ってしまった。
「健、悪いけど、なんかその発言ジジ臭い」
「は? マジで? ショックなんだけど!」
きっと健は、私を励ますつもりで言ってくれたんだろうけど、さすがにこの歳でする会話じゃない気がする。
健は少しでも若い方がいいと言うけれど、私は四月生まれの真理恵や健がうらやましい。
だって、早く大人になれるような気がするから。
とはいえ、漠然と大人になることに憧れがあるだけで、特別、大人になってやりたいことがあるわけではないんだけどね。
「あ、和人。ケーキついてるよ」
「え、どこ?」
真理恵に指摘されて、和人は自分の顔のそばに手を当てる。
「違う違う、ここだよ」
真理恵がハンカチで、和人の左頬に触れる。ほんのわずかの生クリームをハンカチで拭き取った。
何てことない、私たちの間柄ではありふれた光景だ。
それなのに、どういうわけか私の中でドクン、と胸が嫌な音を立てた。
真理恵が和人を好きだと聞いたからなのかな。
この数日間、自分でも変だと思うくらいに、二人のことを意識しすぎているように思う。
「未夢? おい、未夢っ!」
「……え?」
名前を呼ばれて顔を上げると、心配そうにこちらを見る和人と目が合う。
「大丈夫か? もしかして具合悪い?」
「ううん、大丈夫」
私、そんなに具合悪そうな顔してたのかな?
なるべく平然を装っていたつもりだったから、和人に指摘されるほど態度にでてしまっていたことに内心驚いた。
「ケーキ食べないんだったら、いくらでももらってやるぜ?」
そのとき、私の隣に座っていた健の手が伸びてきて、私のケーキの上のイチゴをひょいとフォークでさらっていく。
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