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*第1章*
三人の幼なじみ(3)
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放課後。真理恵と一緒に帰路につく。
朝は、私たちは四人一緒に登校することが多いけれど、帰りは別々のことが多い。
和人はバスケ部の活動で遅くなるし、健は今日はバイトの日だ。
真理恵と二人ということから、私は意を決して気になっていたことを聞いてみることにした。
「真理恵って、好きな人いるの?」
もともと二重の大きな真理恵の瞳が、更に大きく見開かれてこちらに向けられる。
長いまつ毛がパサパサと音を立てるようにまばたきしたあと、真理恵は驚いたとばかりに口を開いた。
「何を言い出すかと思えば。いきなりどうしたの?」
「や。ほら、今日私には好きな人いないのかって言ってたじゃん。そういうこと聞いてくるってことは、真理恵には恋愛対象として好きな人っているのかなって思って……」
真理恵は、しばらく戸惑うような表情を見せる。
もしかして、聞いたらダメだったかな?
いつもと雰囲気の違う真理恵の様子に、何となく不安になる。
まだ赤くなる手前の街路樹の紅葉へ視線をそらしかけたとき、真理恵の小さな声が耳に届いた。
「……いるよ」
「え!?」
驚いて、真理恵の方へ視線を戻す。
すると、真理恵は少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「いるよ、好きな人」
「うそ。誰、だれ!?」
美人でかっこいい真理恵の好きな人。
大好きな幼なじみの好きな人。
恋愛沙汰の話に疎いとよく真理恵に言われる私だけど、気にならないわけがない。
誰々と詰め寄る私の両肩を押して、真理恵は私を見る。
目の前に見える瞳は少し緊張しているみたいで、私も引き締まるような気持ちになる。
「健と和人には内緒だよ?」
「うん、もちろんだよ!」
「……もう一回聞くけどさ、未夢って好きな人、いないんだよね?」
「え? うん」
「健や和人のことも、恋愛対象として見てない?」
「うん、多分……?」
健のことも、和人のことも大好き。
もちろん、真理恵のこともだ。
とはいえ、健と和人のことに関して言えば、恋愛対象うんぬんで見たことがなかったからよくわからないっていうのが、本当のところ。
でも、そう聞くってことは、もしかして真理恵の好きな人って……。
さすがの私でも、そのこたえは頭の中に浮かんだ二人のどちらかに間違いないと確信した。
「よかった。じゃあ、未夢にだけ教えるね」
健か、和人か──。
「私、和人のことが好きなんだ」
真理恵の顔が心なしか赤く見えたのは、恥ずかしさからなのか、それとも夕陽の赤さからなのかはわからない。
秋風にショートヘアがサラサラと揺れる姿が、一瞬私が今まで知っていた真理恵とは別人のように見えた。
「そうなんだ……」
「なかなか今の関係を壊したくなくて、何もできてないけどさ。未夢は、応援してくれる?」
「もちろんだよ」
「よかった」
オレンジ色に染まる真理恵の安心したような笑顔を見て、ズキンと胸が痛む。
それと同時に、怖くなった。
何かが変わってしまうような。
私がずっと大切にしてきた、自分たちの関係が壊れてしまうような。
とにかく、すごく不安になった。
「あ、だからって、露骨に私と和人を二人きりにしなくていいからね。怪しまれたらいけないし」
「うん」
「でも、スッキリした~! ずっと誰にも言えなくて、黙ってたからさ」
「……」
ねぇ、真理恵。私たち、ずっと一緒だよね?
今まで当たり前のように言ってた言葉は、怖くて今日は口に出せなかった。
真理恵は、いつから和人のことを恋愛対象として好きだったんだろう?
ずっと一緒にいたのに、全然気づかなかったよ。
それに、和人は真理恵のことをどう思ってるんだろう……?
ざわざわと胸が嫌な感情に包まれて、苦しくなる。
幼なじみ以上恋人未満。
言うならば、私たちと健と和人はそんな関係だと思うって、少し前に何かの拍子に真理恵が話していたことがある。
何気なく聞いていた私は、そこに恋愛感情が加わったらどうなるかだなんて、全くもって考えたことなかった。
そして、さすがに恋愛経験ゼロの私には、慌てて考えたところで、全くもって想像すらつかないのだった。
放課後。真理恵と一緒に帰路につく。
朝は、私たちは四人一緒に登校することが多いけれど、帰りは別々のことが多い。
和人はバスケ部の活動で遅くなるし、健は今日はバイトの日だ。
真理恵と二人ということから、私は意を決して気になっていたことを聞いてみることにした。
「真理恵って、好きな人いるの?」
もともと二重の大きな真理恵の瞳が、更に大きく見開かれてこちらに向けられる。
長いまつ毛がパサパサと音を立てるようにまばたきしたあと、真理恵は驚いたとばかりに口を開いた。
「何を言い出すかと思えば。いきなりどうしたの?」
「や。ほら、今日私には好きな人いないのかって言ってたじゃん。そういうこと聞いてくるってことは、真理恵には恋愛対象として好きな人っているのかなって思って……」
真理恵は、しばらく戸惑うような表情を見せる。
もしかして、聞いたらダメだったかな?
いつもと雰囲気の違う真理恵の様子に、何となく不安になる。
まだ赤くなる手前の街路樹の紅葉へ視線をそらしかけたとき、真理恵の小さな声が耳に届いた。
「……いるよ」
「え!?」
驚いて、真理恵の方へ視線を戻す。
すると、真理恵は少し恥ずかしそうに言葉を続けた。
「いるよ、好きな人」
「うそ。誰、だれ!?」
美人でかっこいい真理恵の好きな人。
大好きな幼なじみの好きな人。
恋愛沙汰の話に疎いとよく真理恵に言われる私だけど、気にならないわけがない。
誰々と詰め寄る私の両肩を押して、真理恵は私を見る。
目の前に見える瞳は少し緊張しているみたいで、私も引き締まるような気持ちになる。
「健と和人には内緒だよ?」
「うん、もちろんだよ!」
「……もう一回聞くけどさ、未夢って好きな人、いないんだよね?」
「え? うん」
「健や和人のことも、恋愛対象として見てない?」
「うん、多分……?」
健のことも、和人のことも大好き。
もちろん、真理恵のこともだ。
とはいえ、健と和人のことに関して言えば、恋愛対象うんぬんで見たことがなかったからよくわからないっていうのが、本当のところ。
でも、そう聞くってことは、もしかして真理恵の好きな人って……。
さすがの私でも、そのこたえは頭の中に浮かんだ二人のどちらかに間違いないと確信した。
「よかった。じゃあ、未夢にだけ教えるね」
健か、和人か──。
「私、和人のことが好きなんだ」
真理恵の顔が心なしか赤く見えたのは、恥ずかしさからなのか、それとも夕陽の赤さからなのかはわからない。
秋風にショートヘアがサラサラと揺れる姿が、一瞬私が今まで知っていた真理恵とは別人のように見えた。
「そうなんだ……」
「なかなか今の関係を壊したくなくて、何もできてないけどさ。未夢は、応援してくれる?」
「もちろんだよ」
「よかった」
オレンジ色に染まる真理恵の安心したような笑顔を見て、ズキンと胸が痛む。
それと同時に、怖くなった。
何かが変わってしまうような。
私がずっと大切にしてきた、自分たちの関係が壊れてしまうような。
とにかく、すごく不安になった。
「あ、だからって、露骨に私と和人を二人きりにしなくていいからね。怪しまれたらいけないし」
「うん」
「でも、スッキリした~! ずっと誰にも言えなくて、黙ってたからさ」
「……」
ねぇ、真理恵。私たち、ずっと一緒だよね?
今まで当たり前のように言ってた言葉は、怖くて今日は口に出せなかった。
真理恵は、いつから和人のことを恋愛対象として好きだったんだろう?
ずっと一緒にいたのに、全然気づかなかったよ。
それに、和人は真理恵のことをどう思ってるんだろう……?
ざわざわと胸が嫌な感情に包まれて、苦しくなる。
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言うならば、私たちと健と和人はそんな関係だと思うって、少し前に何かの拍子に真理恵が話していたことがある。
何気なく聞いていた私は、そこに恋愛感情が加わったらどうなるかだなんて、全くもって考えたことなかった。
そして、さすがに恋愛経験ゼロの私には、慌てて考えたところで、全くもって想像すらつかないのだった。
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