9 / 61
*第1章*
きっかけ(2)
しおりを挟む
「自分のことしか考えられない野郎に、未夢を渡せるかよ」
「ちょ、ちょっと、和人……っ!?」
和人、すごい力。抜け出せないよ……。
「わかりました。天野さんは、新谷くんと付き合ってるってわかっただけでも充分です」
「井村くん……っ、誤解だから!」
「天野さん、無理しなくていいですよ。今度こそあきらめます、ごめんなさい」
井村くんは私と和人に背を向けると、あっという間に走り去っていってしまった。
完全に誤解された……。どうしよう。
「ちょっと、和人! 井村くん、誤解しちゃったじゃない!」
「別にいいだろ? それで未夢のことあきらめてくれるなら」
「そうじゃなくて……っ」
誰と誰が付き合っているという内容は、ウワサになったら流れるのが早いって、前、真理恵が言ってた。
もし、井村くんが私と和人が付き合ってるなんてウワサを流して、それが真理恵の耳に届いたらどうなるだろう?
私と和人は付き合ってないって知ってはいても、きっと真理恵はいい気はしないと思う。
「何だよ。あいつ、なんか粘着質な感じだったし、今後付きまとわれることを思えば良かったんじゃねーの?」
「そ、そうだけど……」
「それより、あいつに何もされてないか?」
和人は、心配そうに私を見つめてくる。
どうしたんだろう?
さっきから、私は変だ。
和人の切れ長の瞳に見られてるだけなのに、なんか異様にドキドキする。
「だ、大丈夫だよ。それより、離して……」
未だに和人は私の肩に腕をまわして、身体を密着させていた。
もし真理恵に見られたら、最近そればっかり考えているけれど、この状況で気にせずに居られるわけがない。
「ああ、悪い」
パッと私から距離を取るように離れる。どことなくぎこちない和人の動作に、ちょっと冷たく言い過ぎたかなと反省した。
和人に助けてもらったというのに、これじゃあ恩を仇で返しているみたいだ。
「ごめんね。ところで、何で和人がここに?」
「昼練してたときにあいつに連れて行かれる未夢が見えて、何となく嫌な予感がしてあとを追ったんだ。やっぱり、来て正解だったな」
ふぅ、と和人は小さく息を吐き出す。
言われて見れば、和人の格好はバスケ部の練習着のタンクトップとハーフパンツ姿だ。
私が本当に困ったとき、和人は昔からいち早く私の前に現れて、いつも助けてくれるんだ。
「そっか、ありがとう」
「ってか最近、未夢、俺にそっけなくね?」
和人に思わぬ言葉をもらって、内心びくりとする。
やっぱり少なからず態度に出てしまっていたのだろう。
「え、そうだっけ?」
「そうだって。何か今もだけど、よそよそしくね? 俺、何かしたか?」
確かに最近の私は、自分でもおかしいと思うくらいに和人のことを意識している。和人に私の違和感に気づくなっていう方が無理があったのかもしれない。
でも、本当の理由は和人に悟られちゃダメだ。
隠し通さなければならない。
「ううん、そんなことないよ。和人の気のせいじゃない?」
「そうか? まぁ何かあったらすぐに言えよ。俺でよければ力になるからさ」
ふわりと私の頭を撫でてくれる、大きな手。
和人は優しい。
「……うん」
だけど、私がいつまでも和人に甘えていたら、きっと真理恵は良く思わないよね。きっと、和人の優しさからも卒業した方がいいんだ。
そう思うと、胸がかつてないくらいに苦しくなった。
「ちょ、ちょっと、和人……っ!?」
和人、すごい力。抜け出せないよ……。
「わかりました。天野さんは、新谷くんと付き合ってるってわかっただけでも充分です」
「井村くん……っ、誤解だから!」
「天野さん、無理しなくていいですよ。今度こそあきらめます、ごめんなさい」
井村くんは私と和人に背を向けると、あっという間に走り去っていってしまった。
完全に誤解された……。どうしよう。
「ちょっと、和人! 井村くん、誤解しちゃったじゃない!」
「別にいいだろ? それで未夢のことあきらめてくれるなら」
「そうじゃなくて……っ」
誰と誰が付き合っているという内容は、ウワサになったら流れるのが早いって、前、真理恵が言ってた。
もし、井村くんが私と和人が付き合ってるなんてウワサを流して、それが真理恵の耳に届いたらどうなるだろう?
私と和人は付き合ってないって知ってはいても、きっと真理恵はいい気はしないと思う。
「何だよ。あいつ、なんか粘着質な感じだったし、今後付きまとわれることを思えば良かったんじゃねーの?」
「そ、そうだけど……」
「それより、あいつに何もされてないか?」
和人は、心配そうに私を見つめてくる。
どうしたんだろう?
さっきから、私は変だ。
和人の切れ長の瞳に見られてるだけなのに、なんか異様にドキドキする。
「だ、大丈夫だよ。それより、離して……」
未だに和人は私の肩に腕をまわして、身体を密着させていた。
もし真理恵に見られたら、最近そればっかり考えているけれど、この状況で気にせずに居られるわけがない。
「ああ、悪い」
パッと私から距離を取るように離れる。どことなくぎこちない和人の動作に、ちょっと冷たく言い過ぎたかなと反省した。
和人に助けてもらったというのに、これじゃあ恩を仇で返しているみたいだ。
「ごめんね。ところで、何で和人がここに?」
「昼練してたときにあいつに連れて行かれる未夢が見えて、何となく嫌な予感がしてあとを追ったんだ。やっぱり、来て正解だったな」
ふぅ、と和人は小さく息を吐き出す。
言われて見れば、和人の格好はバスケ部の練習着のタンクトップとハーフパンツ姿だ。
私が本当に困ったとき、和人は昔からいち早く私の前に現れて、いつも助けてくれるんだ。
「そっか、ありがとう」
「ってか最近、未夢、俺にそっけなくね?」
和人に思わぬ言葉をもらって、内心びくりとする。
やっぱり少なからず態度に出てしまっていたのだろう。
「え、そうだっけ?」
「そうだって。何か今もだけど、よそよそしくね? 俺、何かしたか?」
確かに最近の私は、自分でもおかしいと思うくらいに和人のことを意識している。和人に私の違和感に気づくなっていう方が無理があったのかもしれない。
でも、本当の理由は和人に悟られちゃダメだ。
隠し通さなければならない。
「ううん、そんなことないよ。和人の気のせいじゃない?」
「そうか? まぁ何かあったらすぐに言えよ。俺でよければ力になるからさ」
ふわりと私の頭を撫でてくれる、大きな手。
和人は優しい。
「……うん」
だけど、私がいつまでも和人に甘えていたら、きっと真理恵は良く思わないよね。きっと、和人の優しさからも卒業した方がいいんだ。
そう思うと、胸がかつてないくらいに苦しくなった。
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話
紫ゆかり
恋愛
オムニバス形式です。
理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。
大人の女性のストーリーです。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる