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*第1章*
気づいた恋心(1)
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「は? 好きな人?」
私の部屋でゲームをやっていた健が、間の抜けたような声で返事をして、ようやくこちらを見た。
「そう、好きな人。健はいない?」
この日は、健は私の部屋に置いてあるテレビゲームをしに、放課後、私の家に上がり込んでいた。
私の部屋に置いてあるといっても、これは健のものだ。
昔からみんながよく私の部屋に出入りするせいで、私の部屋にはみんなの私物があふれている。
テレビのそばには、健のテレビゲーム。本棚には、和人の小説やマンガ。CDコンポの周りには、真理恵の好きなアーティストのCD、といった感じだ。
だから特別用事がなくても、これらのものを目的として、みんなが私の部屋に訪れることも多かった。
私としては、ここがみんなにとってくつろげる場所ならそれでいいと思っているし、何よりこうやって家族のように過ごす時間が好きだった。
「何だよ突然。つーか、未夢ってそういうことに疎そうっつーか、興味なさそうって感じなのに」
「まぁ、そうなんだけどさ」
健は意外なものでも見るような目で私を見ると、コントローラーをその場に置く。
私が気づいてなかっただけで、健や和人にも好きな人っているのかな、と素朴に疑問に感じたから聞いてみたけれど、かえって健とも気まずくなってしまったのかもしれない。
何とも言えない空気に耐えられなくて、それをぶち壊すように明るい声で口を開いた。
「と、友達にさ、好きな人がいるって話聞いてね、みんなはどうなのかな~ってちょっと気になっただけ。だから、気にしな……きゃっ」
慌てて何とかその場を取り繕うとするも、突然健に肩を引っ張られて世界が反転した。
「た、ける……?」
一瞬にして私の身体は床に横たえられていて、健がまるで私を組み敷くように私の上に覆い被さっていたのだ。
真剣な健の瞳に見つめられる。
一体、突然どうしたというのだろう?
目の前に居るのは私のよく知っている健のはずなのに、全く知らない人のように思えた。
「やだな、どうしたの突然。なんか健、怖いって」
「や。未夢って、俺らといるのが当たり前になりすぎてるけどさ、俺……」
健が何かを言いかけたとき、ガサッと廊下の方から物音が聞こえて、私も健もびくりと肩を震わせる。
「誰だろう……?」
健の胸元を押せば、すんなり私から離れてくれた。
廊下へと出ようとして、この部屋のドアが少し開いていることに気づく。
だけど、廊下へ出てみても誰もいなかった。
「あれ……?」
かわりに私の足元にかさりとビニールの袋が触れるような音がして、視線を落とす。すると、そこには中身の入った本屋の袋が置いてあった。
中を見てみると、いつも私も読ませてもらっているマンガの最新巻だった。
以前、和人に一巻から貸してもらったときに読んで、私もファンになったんだ。
それからは、和人はこのマンガは全てこの部屋に置いてくれている。
「未夢、どうした?」
廊下から一歩出たまま部屋に戻らない私を不思議に思ったのだろう。健も私の部屋から出てくる。
「や、和人が来てたみたいで……」
「は? 来てたみたい、って何だよ。ってか、それは?」
健は私が手に取った本屋の袋とマンガに気づいたようで、私の手からするりと抜き取る。
「これが廊下に置いてあったの。やっぱり、和人が来たんじゃないかって。でも、何でなにも言わずに帰っちゃったんだろう? 一言声かけてくれたって良かったのにね」
「まさかあいつ、さっきの見て……」
さっきの、って?
この廊下から物音がしたとき、私は健に押し倒されるような格好になっていた。
和人がさっきの光景を見た可能性は、かなり高い。
でもだからって、和人にとって私の部屋に入る妨げとなるのだろうか?
和人らしくない行動に頭を悩ませていると、ふわりと優しく私の頭が撫でられた。
私の部屋でゲームをやっていた健が、間の抜けたような声で返事をして、ようやくこちらを見た。
「そう、好きな人。健はいない?」
この日は、健は私の部屋に置いてあるテレビゲームをしに、放課後、私の家に上がり込んでいた。
私の部屋に置いてあるといっても、これは健のものだ。
昔からみんながよく私の部屋に出入りするせいで、私の部屋にはみんなの私物があふれている。
テレビのそばには、健のテレビゲーム。本棚には、和人の小説やマンガ。CDコンポの周りには、真理恵の好きなアーティストのCD、といった感じだ。
だから特別用事がなくても、これらのものを目的として、みんなが私の部屋に訪れることも多かった。
私としては、ここがみんなにとってくつろげる場所ならそれでいいと思っているし、何よりこうやって家族のように過ごす時間が好きだった。
「何だよ突然。つーか、未夢ってそういうことに疎そうっつーか、興味なさそうって感じなのに」
「まぁ、そうなんだけどさ」
健は意外なものでも見るような目で私を見ると、コントローラーをその場に置く。
私が気づいてなかっただけで、健や和人にも好きな人っているのかな、と素朴に疑問に感じたから聞いてみたけれど、かえって健とも気まずくなってしまったのかもしれない。
何とも言えない空気に耐えられなくて、それをぶち壊すように明るい声で口を開いた。
「と、友達にさ、好きな人がいるって話聞いてね、みんなはどうなのかな~ってちょっと気になっただけ。だから、気にしな……きゃっ」
慌てて何とかその場を取り繕うとするも、突然健に肩を引っ張られて世界が反転した。
「た、ける……?」
一瞬にして私の身体は床に横たえられていて、健がまるで私を組み敷くように私の上に覆い被さっていたのだ。
真剣な健の瞳に見つめられる。
一体、突然どうしたというのだろう?
目の前に居るのは私のよく知っている健のはずなのに、全く知らない人のように思えた。
「やだな、どうしたの突然。なんか健、怖いって」
「や。未夢って、俺らといるのが当たり前になりすぎてるけどさ、俺……」
健が何かを言いかけたとき、ガサッと廊下の方から物音が聞こえて、私も健もびくりと肩を震わせる。
「誰だろう……?」
健の胸元を押せば、すんなり私から離れてくれた。
廊下へと出ようとして、この部屋のドアが少し開いていることに気づく。
だけど、廊下へ出てみても誰もいなかった。
「あれ……?」
かわりに私の足元にかさりとビニールの袋が触れるような音がして、視線を落とす。すると、そこには中身の入った本屋の袋が置いてあった。
中を見てみると、いつも私も読ませてもらっているマンガの最新巻だった。
以前、和人に一巻から貸してもらったときに読んで、私もファンになったんだ。
それからは、和人はこのマンガは全てこの部屋に置いてくれている。
「未夢、どうした?」
廊下から一歩出たまま部屋に戻らない私を不思議に思ったのだろう。健も私の部屋から出てくる。
「や、和人が来てたみたいで……」
「は? 来てたみたい、って何だよ。ってか、それは?」
健は私が手に取った本屋の袋とマンガに気づいたようで、私の手からするりと抜き取る。
「これが廊下に置いてあったの。やっぱり、和人が来たんじゃないかって。でも、何でなにも言わずに帰っちゃったんだろう? 一言声かけてくれたって良かったのにね」
「まさかあいつ、さっきの見て……」
さっきの、って?
この廊下から物音がしたとき、私は健に押し倒されるような格好になっていた。
和人がさっきの光景を見た可能性は、かなり高い。
でもだからって、和人にとって私の部屋に入る妨げとなるのだろうか?
和人らしくない行動に頭を悩ませていると、ふわりと優しく私の頭が撫でられた。
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