初恋*幼なじみ~歪に絡み合う想いの四重奏~

美和優希

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*第2章*

消えない初恋(3)

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 ずっと漠然と早く大人になりたいとは思っていたけれど、今はそれが怖い。

 四人の関係がどんどん変わっていってしまうような気がするから。

 みんなで一緒に居られなくなるくらいなら、大人になんてならなくていい。


 私の思考を遮るように、再び私の部屋の扉がノックされた。


 あれ? 真理恵、忘れ物したのかな?


 一瞬そう思ってアルバムを閉じかけたけれど、聞こえたのはまた違う人物のものだった。


「よぉ! もしかして、さっきまで真理恵が来てたの?」


 私の部屋に入ってくるなり、不思議そうに尋ねてくるのは健だ。


「え、あ、うん。どうしたの? 健も真理恵に用があった?」

「ううん、俺が未夢のところに行こうとしたら、ちょうど真理恵が未夢の家を出て真理恵の家に入っていくところが見えたからさ。ってか、それアルバムじゃん! なっつかしー!」

「わっ!」


 私の手の中にあったアルバムは、一瞬にして健に取られてしまった。


「水族館かぁ~。もう長いこと行けてないよな~。ってか、聞いた!? あいつらの初デートもここなんだって」

「うん、真理恵から聞いたよ~」

「未夢も聞いてたか。よりによってここかよ、って思った。デートって言われちゃ、俺たちがついていくわけにもいかないしさぁ~」


 最近は、真理恵と和人のことで頭が一杯になってしまっていたけれど、私には大切な幼なじみがもう一人いたんだ。

 同じような立ち位置の健の話を聞いていると、何となく安心させられた。

 私は一人じゃないんだって。


「だよね。私もまた四人で行ける日を楽しみにしてたからさ、え、二人で行っちゃうの!? ってちょっと思った」


 健と話して安心したからか、最近までずっと凝り固まっていた心がフッと和らぐのを感じた。

 思わずあははと笑うと、健はそんな私を見て、少し驚いたような顔をしたあと、柔らかく目を細めた。


「え、何? どうしたの?」

「や、未夢がそんな風に笑うの、久しぶりだなって思って」

「そうかな。私、いつも笑ってるよ?」

「まぁ、笑ってるか笑ってないかって聞かれたら笑ってたけど、心から笑ってなかっただろ?」

「え……?」


 真理恵と和人の前では、なるべくマイナスな気持ちは出さないように、常に笑顔でいることを心がけていた。

 そうでもしないと、消しきれない和人への気持ちや、辛い想いが表面上に出てしまいそうだったから。


 私としては、最大限隠しているつもりだったと言うのに、健にはそれを見抜かれていたと言うのだろうか。


「真理恵と和人と、何かあった?」


 ストレートに尋ねられて、ズキンと胸に鈍い痛みが襲う。


「ううん。何で?」

「だって、少なくとも和人とは結構前からギクシャクしてるみたいだし、真理恵といるときは無理してるように見えたからさ」

 そんなに私ってわかりやすいのかな。


「無理なんてしてないよ。全部、健の気のせいだよ」

「そうかぁ? こんなこと聞くのもなと思ったけどさ、未夢ってもしかして、本当は和人のこと……」

「好きじゃない!」


 健が言いたいことがわかってしまった私は、健の口からその言葉を聞く前に、声を張り上げるようにして否定した。


「そうか、変なこと聞いて悪かった」


 ちょっと強く否定しすぎて逆に不自然だったかな?


「ううん、ごめんね。でも、本当に和人のことは幼なじみとしか思ってないから」


 健にも、余計な心配をかけさせたくない。

 一度この気持ちを外に出すことを許してしまえば、抑えがきかなくなってしまいそうで怖いから、本当のことは言えない。


「でも、何か悩んでることにはかわりないんだろ? 何ならさ、俺らも明日、水族館デートするか?」


 健は明るく笑って言う。

 きっと健なりに私のことを元気づけようとしてくれてるんだ。


「付き合ってもないのにデートって言い方、変な感じ。普通に一緒に遊びに行くって言い方でいいじゃん。それに、明日水族館行ったところで、真理恵たちと鉢合わせたら気まずいでしょ」

「や、まぁ、そうだけど」


 健はどこか不服そうだ。

 それだけ、私のことを心配してくれてるのだろう。ごめんねと心の中で謝った。

 真理恵や和人だけでなく健もいつも一緒にいるのだから、健の前でも心配させないように笑顔でいなければならない。


「大丈夫! 健に心配してもらうほどのことじゃないから。ありがとう」

「そうかぁ? 未夢はすぐに俺らに遠慮するから。無理するなよ」

「うん」


 しばらく健は心配そうに私のことを見ていたけれど、「また俺に頼る気になったら言ってな」という一言を最後に、いつもの健に戻った。


 健がいてくれて、本当によかった。

 健がいなかったら、私は本当にひとりぼっちになった気がして、潰れてしまっていたかもしれないから。


 だから、本当に申し訳ないくらいに健には感謝してる。
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