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*第2章*
消えない初恋(2)
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「あとは、このページのこの髪型がいいかなって思うんだ」
真理恵は、小さい頃からずっとショートヘアだ。
ファッション雑誌を開いて指し示したページには、デート用の髪型が特集されている。
そこには、真理恵くらいの髪の長さの女の人が、ヘアアイロンで髪に動きをつけて、可愛い赤いリボンのついたカチューシャで決めている姿が映っていた。
「あ、いいじゃん。真理恵にすごく似合いそう」
「本当!? じゃあ、これにしよっ!」
一通り決め終えたところで真理恵のスマホが光り、着信音が流れ出す。
「あ、和人からだ。ちょっと、ごめんね」
「うん」
和人からの電話だったようで、真理恵は廊下の方へと出ていってしまった。
バタンと部屋の扉が閉まれば、真理恵の声は聞こえるけれど、何を話しているかまでは聞き取れない程度にしか聞こえない。
和人から、か……。
何話してるんだろう?
今じゃないといけないことなのかな?
気にはなるけれど、ドアに耳を当ててまで盗み聞きしようとは思わない。
なんか、やだな。
和人のことが好きだって気づいてから、どんどん嫌な自分になってきてる気がする。
真理恵のデートだって、正直私は行ってほしくない。
ただでさえ美人な真理恵が、可愛く着飾って和人に会わないでほしい。
本当なら大好きな二人の初デートを一緒になって喜びたいのに、それが出来ない。
小さくため息を吐き出せば、さらに部屋の空気が重たくなったように感じた。
一人ぽつんと残された部屋では、廊下から微かに聞こえる真理恵の声が気になって落ち着かない。
だけど、ずっと意識をそっちに向けてたって仕方ない。気を紛らわせるために、私はさっきまで真理恵と一緒に見ていたティーンズ向けのファッション誌をパラパラとめくった。
真理恵、いつからファッション誌なんて読むようになったんだろう?
やっぱり、和人に恋してからなのかな?
結局真理恵と和人のことばかり考えてる自分に、さらにうんざりする。
適当にパラパラとページをめくっていると、ちょうど恋愛の段階別コラムが載っているページが目に留まった。
何となく、そのページを読み進める。
その中の、“片思い”のところのコラムに強く惹かれた。
きっと今、正に自分が片思いの状態だからなのだろう。
そこには、どうやら恋愛関係のジンクスが紹介されているようだった。
・彼と両思いになれる
・彼と急接近
・彼に想いが届く
そんな類いのキャッチフレーズとともに、いくつも似たようなジンクスがずらりと並んでいる。
効果があるのかどうかは、わからない。
だけど、大半はやっぱり自分の恋の成就を願うものばかりで、なんとなく気が引ける。
和人のことは好きだ。だから、二人でいるところを見るのは辛い。
けれど、二人が別れればいいと思っているわけでもなければ、決して真理恵を裏切りたいわけでもなかった。
ただ興味本位でそのコラムを読んでいた私は、さらにページの隅の方に小さくかかれたジンクスに目を留めた。
と、そのとき、電話を終えたのであろう真理恵が、ガチャリとドアを開けて部屋に入ってきた。
「お待たせ! ごめんね」
「ううん、大丈夫」
瞬時にファッション誌を閉じて、真理恵を見上げる。
「あ、それ取ってもらっていい?」
「え!? え、あ、うん……」
真理恵がファッション誌を指し示したので、一瞬ギクリとしたけれど、特別さっきの行動が不自然に見えたわけでもなさそう。
和人から、何の用事だったんだろう?
気になるけれど、私から聞くのも何か変だよね……。
いつからか聞きたいことも聞けなくなって、真理恵の考えていることもわからなくて、いつも一緒にいるのに遠い存在のように感じる。
それはやっぱり、私の気持ちの問題なのだろうか。
「よし、じゃあ明日はこれで決まりだね! ありがとう、未夢」
「うん。楽しんできてね」
幸せそうに笑う真理恵に、私はなんとか笑顔を向けたのだった。
真理恵と和人の初デートは、近所でも有名な水族館らしい。
小さい頃、私も和人、健、真理恵と私のお父さんに連れられて一緒に行ったことがある。
上機嫌の真理恵が帰っていって、本棚の一番下に入っていたアルバムを引っ張り出す。
そこには、ちょうど小学二年生くらいの私たちが水族館の大きな水槽を背景に写っていた。
その頃から背の高かった真理恵が先頭を歩き、私がまだ幼い和人と健に両手を繋がれている写真が目に留まる。
そういえば、私が他の人にぶつかってしまって、真理恵に和人と健の間に入るように指示されたんだったな……。
ここに最後に行ったのはいつだっただろう。
行く度にまた四人で行きたいねと言ってたけれど、もうここ何年も行けてない。
あの頃と今の私たちは、同じようできっと変わってしまったんだと思う。
いつからかはわからないけれど、和人と真理恵が付き合いはじめる前から、少しずつ変化していたんだと思う。
ずっと変わらないままだと思っていたのは、きっと私だけだったんだ。
戻れるなら戻りたい。何も気にやむことなく、四人で一緒にいられたあの頃に。
願ったって、叶うわけないのだけれど。
真理恵は、小さい頃からずっとショートヘアだ。
ファッション雑誌を開いて指し示したページには、デート用の髪型が特集されている。
そこには、真理恵くらいの髪の長さの女の人が、ヘアアイロンで髪に動きをつけて、可愛い赤いリボンのついたカチューシャで決めている姿が映っていた。
「あ、いいじゃん。真理恵にすごく似合いそう」
「本当!? じゃあ、これにしよっ!」
一通り決め終えたところで真理恵のスマホが光り、着信音が流れ出す。
「あ、和人からだ。ちょっと、ごめんね」
「うん」
和人からの電話だったようで、真理恵は廊下の方へと出ていってしまった。
バタンと部屋の扉が閉まれば、真理恵の声は聞こえるけれど、何を話しているかまでは聞き取れない程度にしか聞こえない。
和人から、か……。
何話してるんだろう?
今じゃないといけないことなのかな?
気にはなるけれど、ドアに耳を当ててまで盗み聞きしようとは思わない。
なんか、やだな。
和人のことが好きだって気づいてから、どんどん嫌な自分になってきてる気がする。
真理恵のデートだって、正直私は行ってほしくない。
ただでさえ美人な真理恵が、可愛く着飾って和人に会わないでほしい。
本当なら大好きな二人の初デートを一緒になって喜びたいのに、それが出来ない。
小さくため息を吐き出せば、さらに部屋の空気が重たくなったように感じた。
一人ぽつんと残された部屋では、廊下から微かに聞こえる真理恵の声が気になって落ち着かない。
だけど、ずっと意識をそっちに向けてたって仕方ない。気を紛らわせるために、私はさっきまで真理恵と一緒に見ていたティーンズ向けのファッション誌をパラパラとめくった。
真理恵、いつからファッション誌なんて読むようになったんだろう?
やっぱり、和人に恋してからなのかな?
結局真理恵と和人のことばかり考えてる自分に、さらにうんざりする。
適当にパラパラとページをめくっていると、ちょうど恋愛の段階別コラムが載っているページが目に留まった。
何となく、そのページを読み進める。
その中の、“片思い”のところのコラムに強く惹かれた。
きっと今、正に自分が片思いの状態だからなのだろう。
そこには、どうやら恋愛関係のジンクスが紹介されているようだった。
・彼と両思いになれる
・彼と急接近
・彼に想いが届く
そんな類いのキャッチフレーズとともに、いくつも似たようなジンクスがずらりと並んでいる。
効果があるのかどうかは、わからない。
だけど、大半はやっぱり自分の恋の成就を願うものばかりで、なんとなく気が引ける。
和人のことは好きだ。だから、二人でいるところを見るのは辛い。
けれど、二人が別れればいいと思っているわけでもなければ、決して真理恵を裏切りたいわけでもなかった。
ただ興味本位でそのコラムを読んでいた私は、さらにページの隅の方に小さくかかれたジンクスに目を留めた。
と、そのとき、電話を終えたのであろう真理恵が、ガチャリとドアを開けて部屋に入ってきた。
「お待たせ! ごめんね」
「ううん、大丈夫」
瞬時にファッション誌を閉じて、真理恵を見上げる。
「あ、それ取ってもらっていい?」
「え!? え、あ、うん……」
真理恵がファッション誌を指し示したので、一瞬ギクリとしたけれど、特別さっきの行動が不自然に見えたわけでもなさそう。
和人から、何の用事だったんだろう?
気になるけれど、私から聞くのも何か変だよね……。
いつからか聞きたいことも聞けなくなって、真理恵の考えていることもわからなくて、いつも一緒にいるのに遠い存在のように感じる。
それはやっぱり、私の気持ちの問題なのだろうか。
「よし、じゃあ明日はこれで決まりだね! ありがとう、未夢」
「うん。楽しんできてね」
幸せそうに笑う真理恵に、私はなんとか笑顔を向けたのだった。
真理恵と和人の初デートは、近所でも有名な水族館らしい。
小さい頃、私も和人、健、真理恵と私のお父さんに連れられて一緒に行ったことがある。
上機嫌の真理恵が帰っていって、本棚の一番下に入っていたアルバムを引っ張り出す。
そこには、ちょうど小学二年生くらいの私たちが水族館の大きな水槽を背景に写っていた。
その頃から背の高かった真理恵が先頭を歩き、私がまだ幼い和人と健に両手を繋がれている写真が目に留まる。
そういえば、私が他の人にぶつかってしまって、真理恵に和人と健の間に入るように指示されたんだったな……。
ここに最後に行ったのはいつだっただろう。
行く度にまた四人で行きたいねと言ってたけれど、もうここ何年も行けてない。
あの頃と今の私たちは、同じようできっと変わってしまったんだと思う。
いつからかはわからないけれど、和人と真理恵が付き合いはじめる前から、少しずつ変化していたんだと思う。
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