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*第2章*
消えない初恋(1)
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十一月になり、また一段と冬が近づく。
真理恵から和人と付き合い始めたって聞いた夜、和人からもみんなに二人の交際についての話があった。
学校では、真理恵と和人のことは美男美女のカップルと、瞬く間に広まった。
真理恵は美人だし、和人だってかっこいい部類だから、当然と言えば当然だ。
そういう話を他の子から聞かされる度に、お似合いの二人だなって私も思う。
真理恵の言っていた通り、二人が付き合い始めたからといって、私たち四人の関係が大きく変わることはなかった。
「ただいま。あー、疲れた」
現に今だって、放課後部活帰りの和人が、どういうわけか私の部屋のフローリングの床の上に大の字で寝そべっている。
「和人ってば、あたかも自分の家のように言ってるけど、ここ私の家だよ?」
「そうだけどさ。やっぱりここが落ち着くんだよ」
「何それ。ってか、真理恵は?」
「真理恵は、今夜は真理恵のいとこの家族が家に遊びに来るんだと」
「へぇ~」
なるほど、そういうことか。思わず納得する。
真理恵と付き合い始めてから、いつも二人はセットだ。今となっては理由なく、和人単独で私の家には来ないだろう。
「で、和人は今日は何の用?」
「んー? ほら、この前貸したマンガの最新巻。そろそろ読もうかなと思ってな」
すくっと立ち上がって、和人は本棚の前へと移動する。
そこに並ぶ和人の本を見て、そのうちの一冊を取り出した。
「あー、これこれ。おもしろかった?」
それは、一ヶ月近く前に和人が私の部屋の前に無言で置いて帰ったマンガだ。
「おもしろかったよ。って、和人まだ読んでなかったの!?」
「ったり前じゃん。未夢と一緒に読もうと思って買ってきてたんだからな?」
どこか拗ねたような口調の和人。
なんだか子どもみたいで可愛い。
だけど和人の言ってることは、違うような気がした。
「それなら和人がその本持ってきてくれたとき、声かけてくれたらよかったじゃん。私も健も一緒にいたのに」
「だからだよ」
「……え?」
「二人の様子を見て、声かけられなかったんだよ」
「なんで?」
「なんで、って……」
私が健と一緒にいたからって、なんで声かけられなかったんだろう?
和人は、前同じ質問をしたときもはぐらかしてきただけで、こたえてくれなかった。
「とにかく、そんな雰囲気じゃなかったんだよ。じゃあこれ借りて帰るな」
「え、うん……。今日はもう帰っちゃうんだ」
借りて帰るとは言っても、元々は和人のものだ。
けど、部屋に入ってくつろいだのは一瞬、目的の本を手にしてすぐに帰ろうとする和人の姿を見て、寂しく思ってしまったのは事実。
「まぁ。あんまり居座って、真理恵にうるさく言われてもいけないし」
「そっか。また真理恵と一緒に来てね」
本当にその通りだ。きっと私たちの間柄だから、和人が私の家に上がるのは許されているだけで、本来彼女がいるのに他の女子の家に上がって部屋で二人きりだなんて御法度だ。
「おう! じゃあな」
「うん、おやすみ」
パタンと閉まる部屋の扉の音は、私と和人の間を隔てられた音に聞こえて仕方なかった。
今まで通りと言えば、そうだ。
四人で私の部屋に集まることもあるし、みんなが自由に私の部屋を出入りしてるのも変わらない。
だけど、全てを完全に今まで通りにできるわけないんだ……。
時間が経てば、自分の気持ちに整理がつくと思っていたけれど、未だにその気配はない。
むしろ、どんどん自分の感情だけが渦巻いていってるようにさえ感じる。
和人の姿を見れば、好きだと思って、声を聞けばもっと話したいと思う。
好きだって気づいてからは、和人のそばにいるだけでもドキドキするようになって、現実を見て苦しくなる。
真理恵のことは好きだけど、最近は真理恵の口から和人の話題が出ることさえ辛い。
いっそのこと、何もかもを忘れてしまえたらいいのにとさえ思う。
二人の幸せの邪魔する可能性のある私の気持ちなんて、無い方が良いのだから。
それを隠すためにも、私はなるべくいつも通り、いや、いつも以上に笑顔でいることを心がけるようになった。
*
数日後の土曜日。真理恵がファッション雑誌と大量の衣類を持って、私の部屋に来た。
それからは、かれこれ数時間は真理恵のファッションショーをしている。
「未夢ーっ! これは!?」
「あ、それもよく似合うよ!」
というのも明日の日曜日、和人の部活がお休みらしく、とうとう初デートをするんだそうだ。
「でも、やっぱりパンツコーデの方がいいかな? 私、普段全くスカート履かないもんね」
真理恵が今身にまとっているのは、ウールの白いワンピース。
色白でモデル体型の真理恵には、本当によく似合って見えた。
スカートから覗く脚なんて、すらりとして長く見えるし、細身で背の高い真理恵を見ていると本当にうらやましくなる。
「そんなことないよ。本物のモデルさんみたい。それにデートなんだから、いつもと同じ服じゃダメだって!」
「それもそうだね」
きっと明日のデートのために、たくさん服を調達したんだろう。
これでも厳選したんだと言う割りには、大きな紙袋で四袋、衣類の詰まった袋が私の部屋に運び込まれた。
そのために真理恵は、私と真理恵の家を三往復はしてたのだから。
真理恵から和人と付き合い始めたって聞いた夜、和人からもみんなに二人の交際についての話があった。
学校では、真理恵と和人のことは美男美女のカップルと、瞬く間に広まった。
真理恵は美人だし、和人だってかっこいい部類だから、当然と言えば当然だ。
そういう話を他の子から聞かされる度に、お似合いの二人だなって私も思う。
真理恵の言っていた通り、二人が付き合い始めたからといって、私たち四人の関係が大きく変わることはなかった。
「ただいま。あー、疲れた」
現に今だって、放課後部活帰りの和人が、どういうわけか私の部屋のフローリングの床の上に大の字で寝そべっている。
「和人ってば、あたかも自分の家のように言ってるけど、ここ私の家だよ?」
「そうだけどさ。やっぱりここが落ち着くんだよ」
「何それ。ってか、真理恵は?」
「真理恵は、今夜は真理恵のいとこの家族が家に遊びに来るんだと」
「へぇ~」
なるほど、そういうことか。思わず納得する。
真理恵と付き合い始めてから、いつも二人はセットだ。今となっては理由なく、和人単独で私の家には来ないだろう。
「で、和人は今日は何の用?」
「んー? ほら、この前貸したマンガの最新巻。そろそろ読もうかなと思ってな」
すくっと立ち上がって、和人は本棚の前へと移動する。
そこに並ぶ和人の本を見て、そのうちの一冊を取り出した。
「あー、これこれ。おもしろかった?」
それは、一ヶ月近く前に和人が私の部屋の前に無言で置いて帰ったマンガだ。
「おもしろかったよ。って、和人まだ読んでなかったの!?」
「ったり前じゃん。未夢と一緒に読もうと思って買ってきてたんだからな?」
どこか拗ねたような口調の和人。
なんだか子どもみたいで可愛い。
だけど和人の言ってることは、違うような気がした。
「それなら和人がその本持ってきてくれたとき、声かけてくれたらよかったじゃん。私も健も一緒にいたのに」
「だからだよ」
「……え?」
「二人の様子を見て、声かけられなかったんだよ」
「なんで?」
「なんで、って……」
私が健と一緒にいたからって、なんで声かけられなかったんだろう?
和人は、前同じ質問をしたときもはぐらかしてきただけで、こたえてくれなかった。
「とにかく、そんな雰囲気じゃなかったんだよ。じゃあこれ借りて帰るな」
「え、うん……。今日はもう帰っちゃうんだ」
借りて帰るとは言っても、元々は和人のものだ。
けど、部屋に入ってくつろいだのは一瞬、目的の本を手にしてすぐに帰ろうとする和人の姿を見て、寂しく思ってしまったのは事実。
「まぁ。あんまり居座って、真理恵にうるさく言われてもいけないし」
「そっか。また真理恵と一緒に来てね」
本当にその通りだ。きっと私たちの間柄だから、和人が私の家に上がるのは許されているだけで、本来彼女がいるのに他の女子の家に上がって部屋で二人きりだなんて御法度だ。
「おう! じゃあな」
「うん、おやすみ」
パタンと閉まる部屋の扉の音は、私と和人の間を隔てられた音に聞こえて仕方なかった。
今まで通りと言えば、そうだ。
四人で私の部屋に集まることもあるし、みんなが自由に私の部屋を出入りしてるのも変わらない。
だけど、全てを完全に今まで通りにできるわけないんだ……。
時間が経てば、自分の気持ちに整理がつくと思っていたけれど、未だにその気配はない。
むしろ、どんどん自分の感情だけが渦巻いていってるようにさえ感じる。
和人の姿を見れば、好きだと思って、声を聞けばもっと話したいと思う。
好きだって気づいてからは、和人のそばにいるだけでもドキドキするようになって、現実を見て苦しくなる。
真理恵のことは好きだけど、最近は真理恵の口から和人の話題が出ることさえ辛い。
いっそのこと、何もかもを忘れてしまえたらいいのにとさえ思う。
二人の幸せの邪魔する可能性のある私の気持ちなんて、無い方が良いのだから。
それを隠すためにも、私はなるべくいつも通り、いや、いつも以上に笑顔でいることを心がけるようになった。
*
数日後の土曜日。真理恵がファッション雑誌と大量の衣類を持って、私の部屋に来た。
それからは、かれこれ数時間は真理恵のファッションショーをしている。
「未夢ーっ! これは!?」
「あ、それもよく似合うよ!」
というのも明日の日曜日、和人の部活がお休みらしく、とうとう初デートをするんだそうだ。
「でも、やっぱりパンツコーデの方がいいかな? 私、普段全くスカート履かないもんね」
真理恵が今身にまとっているのは、ウールの白いワンピース。
色白でモデル体型の真理恵には、本当によく似合って見えた。
スカートから覗く脚なんて、すらりとして長く見えるし、細身で背の高い真理恵を見ていると本当にうらやましくなる。
「そんなことないよ。本物のモデルさんみたい。それにデートなんだから、いつもと同じ服じゃダメだって!」
「それもそうだね」
きっと明日のデートのために、たくさん服を調達したんだろう。
これでも厳選したんだと言う割りには、大きな紙袋で四袋、衣類の詰まった袋が私の部屋に運び込まれた。
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