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*第2章*
初恋の行方-健Side-(1)
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俺の初恋は、未夢だった。
小さい頃、記憶にある時点ではすでに好きになっていた。
俺、和人、未夢、真理恵は家も近所のいわゆる幼なじみで、小さい頃は親も混じって親しくしていた。
未夢は優しくて、ふわふわとした雰囲気を持った女の子で、俺らにとってお姫さまのような存在だった。
もちろん真理恵も大切な幼なじみには変わりなかったけれど、未夢とはちょっと違ったんだ。
真理恵は、気が強くてハッキリものを言うタイプで、未夢をいじめっ子から守って逆にいじめ返しに行くようなやつだったから、どちらかと言うと、男友達に近いようなものを感じていたところがあった。
そして俺の知る限りでは、和人の初恋も未夢だった。
小さい頃、よく真理恵も含めて未夢を取り合ってケンカした記憶がある。
だけど、未夢は少し鈍いところがあるようで、俺の気持ちにも和人の気持ちにも気づかないまま、大きくなった。
未夢が和人のことを好きなんじゃないかと気づいたのは、ちょうど十月の終わり頃だった。
真理恵と和人が付き合い始めたのは、それから間もないことだった。
その少し前から未夢と和人、そして真理恵の雰囲気がどことなくギクシャクし始めていたことには何となく気づいていたけれど、まさか和人と真理恵が付き合うとは想定外だった。
付き合い始めた二人を見て、案の定未夢は落ち込んでいた。俺らの前では無理して笑ってるけど、正直見てて痛々しかった。
未夢は和人のことは好きじゃないと言っていたけれど、それが嘘だってことは、見ていたらわかる。
けれど、俺はどうしても納得できなかった。
俺の記憶にある限り、和人も未夢ことが好きだったはずなのに、いつの間に真理恵のことを好きになっていたのだろう?
そんな十一月の初旬、俺は和人だけを俺の家に呼んだ。
「どうした? わざわざ二人で話だなんて」
約束の時間ほぼぴったりに俺の家に来た和人は、不思議そうに俺を見た。
わざわざ和人単独で話があると呼び出すことなんて、滅多にないから無理ない。
「単刀直入に聞く。お前、未夢のこと好きだったんじゃなかったのかよ」
「あ? 何の話かと思えば……」
和人はわずかに眉を寄せて、小さく息を吐き出す。
「こたえろよ!」
気の抜けたような言い種をする和人の瞳は、どことなく諦めにも似た感情が見える。最近の和人の理解不能な行動に気が立っていた俺は、思わず和人を責め立てた。
思い返せば、真理恵と付き合う少し前、未夢の部屋に来たくせに、新刊のマンガだけを黙って置いて帰った日の和人も変だった。
あの日の俺は、好きな人がいるのか聞かれて、思わず未夢を押し倒してしまった。
恐らく和人が未夢の部屋の外にマンガを置いたと思われる音も、同じタイミングで聞こえた。
その日の夜、和人にその話を持ちかけたときは、“俺は何も見てないし、何も聞いてない”って、俺に向かってあっさりと言い放ったんだ。
未夢のことを好きなのかどうか聞いても、はっきりしたこたえはもらえなかった。
だけど、俺の目に狂いはなかったはずだ。
きっと未夢のことが好きなのに、どういうわけか真理恵と付き合っている和人。
俺には和人の考えてることが、さっぱり理解できねーよ!
和人が部屋に入ってくるなり、突っかかるように言葉を投げつけた俺をなだめるように、和人は俺をベッドの上に座らせる。
「まあまあ落ち着けって。健、何をそんなに興奮してんだよ」
和人は俺の前に腕を組んで立って、俺を見下ろしていた。
「そんなにらむなって」
そりゃ、にらみたくもなるよ。
未夢の気持ちを手に入れておいて、あんな風に傷つけるなんて、相手が和人だとしても許せない。
「で、どうなんだよ」
「ああ、好きだよ」
だけど次に問いかけたときには、和人はほぼ即答でそう返してきた。
「だったら……っ」
「でも、それは幼なじみとしてな」
「はぁあ!?」
この流れで、誰も幼なじみとして好きかどうかなんて、聞いてないっつーの!
「何怒ってんだよ。いいじゃん、俺のことをライバルだと思ってたんなら、ライバルじゃないってわかって」
「だけど、だってお前」
「だけど何。何か間違ったこと言ったか?」
和人はいつもそうだ。
いつも冷静なところは尊敬できる点だし、俺自身足りないところだってわかってるんだけど、今日は無性に和人のそんなところがムカつく。
あたかも自分の意見が一番正しいみたいな言い方して、納得できるはずかない。
「……じゃあ、質問を変える。和人は、真理恵のこと、好きなのか?」
「まぁ、そういうことになるな。真理恵のことは好きだよ」
「幼なじみとしてじゃなく?」
「幼なじみとしてじゃなくな」
「いつから」
和人は真理恵のことが、幼なじみとしてじゃなく好きだって言うけど、実際に今までそう見えた試しがない。
俺自身、真理恵が和人のことを好きだったことには気づいてなかったし、俺がそんな和人の変化にも気づけてなかっただけだと言われればそれまでなのだが。
小さい頃、記憶にある時点ではすでに好きになっていた。
俺、和人、未夢、真理恵は家も近所のいわゆる幼なじみで、小さい頃は親も混じって親しくしていた。
未夢は優しくて、ふわふわとした雰囲気を持った女の子で、俺らにとってお姫さまのような存在だった。
もちろん真理恵も大切な幼なじみには変わりなかったけれど、未夢とはちょっと違ったんだ。
真理恵は、気が強くてハッキリものを言うタイプで、未夢をいじめっ子から守って逆にいじめ返しに行くようなやつだったから、どちらかと言うと、男友達に近いようなものを感じていたところがあった。
そして俺の知る限りでは、和人の初恋も未夢だった。
小さい頃、よく真理恵も含めて未夢を取り合ってケンカした記憶がある。
だけど、未夢は少し鈍いところがあるようで、俺の気持ちにも和人の気持ちにも気づかないまま、大きくなった。
未夢が和人のことを好きなんじゃないかと気づいたのは、ちょうど十月の終わり頃だった。
真理恵と和人が付き合い始めたのは、それから間もないことだった。
その少し前から未夢と和人、そして真理恵の雰囲気がどことなくギクシャクし始めていたことには何となく気づいていたけれど、まさか和人と真理恵が付き合うとは想定外だった。
付き合い始めた二人を見て、案の定未夢は落ち込んでいた。俺らの前では無理して笑ってるけど、正直見てて痛々しかった。
未夢は和人のことは好きじゃないと言っていたけれど、それが嘘だってことは、見ていたらわかる。
けれど、俺はどうしても納得できなかった。
俺の記憶にある限り、和人も未夢ことが好きだったはずなのに、いつの間に真理恵のことを好きになっていたのだろう?
そんな十一月の初旬、俺は和人だけを俺の家に呼んだ。
「どうした? わざわざ二人で話だなんて」
約束の時間ほぼぴったりに俺の家に来た和人は、不思議そうに俺を見た。
わざわざ和人単独で話があると呼び出すことなんて、滅多にないから無理ない。
「単刀直入に聞く。お前、未夢のこと好きだったんじゃなかったのかよ」
「あ? 何の話かと思えば……」
和人はわずかに眉を寄せて、小さく息を吐き出す。
「こたえろよ!」
気の抜けたような言い種をする和人の瞳は、どことなく諦めにも似た感情が見える。最近の和人の理解不能な行動に気が立っていた俺は、思わず和人を責め立てた。
思い返せば、真理恵と付き合う少し前、未夢の部屋に来たくせに、新刊のマンガだけを黙って置いて帰った日の和人も変だった。
あの日の俺は、好きな人がいるのか聞かれて、思わず未夢を押し倒してしまった。
恐らく和人が未夢の部屋の外にマンガを置いたと思われる音も、同じタイミングで聞こえた。
その日の夜、和人にその話を持ちかけたときは、“俺は何も見てないし、何も聞いてない”って、俺に向かってあっさりと言い放ったんだ。
未夢のことを好きなのかどうか聞いても、はっきりしたこたえはもらえなかった。
だけど、俺の目に狂いはなかったはずだ。
きっと未夢のことが好きなのに、どういうわけか真理恵と付き合っている和人。
俺には和人の考えてることが、さっぱり理解できねーよ!
和人が部屋に入ってくるなり、突っかかるように言葉を投げつけた俺をなだめるように、和人は俺をベッドの上に座らせる。
「まあまあ落ち着けって。健、何をそんなに興奮してんだよ」
和人は俺の前に腕を組んで立って、俺を見下ろしていた。
「そんなにらむなって」
そりゃ、にらみたくもなるよ。
未夢の気持ちを手に入れておいて、あんな風に傷つけるなんて、相手が和人だとしても許せない。
「で、どうなんだよ」
「ああ、好きだよ」
だけど次に問いかけたときには、和人はほぼ即答でそう返してきた。
「だったら……っ」
「でも、それは幼なじみとしてな」
「はぁあ!?」
この流れで、誰も幼なじみとして好きかどうかなんて、聞いてないっつーの!
「何怒ってんだよ。いいじゃん、俺のことをライバルだと思ってたんなら、ライバルじゃないってわかって」
「だけど、だってお前」
「だけど何。何か間違ったこと言ったか?」
和人はいつもそうだ。
いつも冷静なところは尊敬できる点だし、俺自身足りないところだってわかってるんだけど、今日は無性に和人のそんなところがムカつく。
あたかも自分の意見が一番正しいみたいな言い方して、納得できるはずかない。
「……じゃあ、質問を変える。和人は、真理恵のこと、好きなのか?」
「まぁ、そういうことになるな。真理恵のことは好きだよ」
「幼なじみとしてじゃなく?」
「幼なじみとしてじゃなくな」
「いつから」
和人は真理恵のことが、幼なじみとしてじゃなく好きだって言うけど、実際に今までそう見えた試しがない。
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