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*第3章*
踏み外した道-和人Side-(2)
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『やだな、どうしたの突然。なんか健、怖いって』
だけどそう自分に言い聞かせるも、そのとき聞こえた未夢の声に、胸がざわつく。
慌てて再び中を覗くと、健が未夢を床に押し倒していた。
あいつ……。
思わず健をぶっ飛ばしに行こうかと思ったけどできなかったのは、未夢が本気で嫌がってる感じじゃなかったのと、健が見たことないくらいに真剣な瞳で未夢に何かを伝えようとしていたからだ。
『や。未夢って、俺らといるのが当たり前になりすぎてるけどさ、俺……』
何かなんて、容易に想像がつく。
健はある程度の年齢になってからは口に出したことがなかったけど、未夢のことが好きで堪らないのだろうということは、そばで見ていたら嫌というほどわかった。
そんな二人を見ていたら、そこに俺の入る隙なんてないような気がして、入り口付近にマンガの入った袋を置いて立ち去ろうとした。
だけど袋を置くとき、買い物袋特有の音は立てずに済んだものの、ガサッと本が床に当たる音が小さくしてしまって、健の言葉がそこで途切れてしまったんだ。
ヤバイと思った俺は、まるで逃げるようにその場をあとにした。
未夢のお母さんに帰る挨拶をすると、案の定驚かれたけれど、適当に言い繕って未夢の家を出た。
そしてそれから一時間もしないうちに、健が俺の家にやって来た。
『お前、さっき未夢の家にいただろ?』
なんとなく予想はついたけど、健は俺の部屋に入るなり、第一声にそう聞いていた。
『とぼけたってムダだぜ? お前の残していったマンガが何よりの証拠だ』
まるで探偵マンガのセリフのような言い方に、思わず笑いそうになる。
『勝手にとぼけたことにすんなよ。確かにいたけど、それが何か?』
『お前、さっきの見たんだろ?』
『見たって、何を?』
冷静に、冷静に。
ここまで聞いたら、健が何を言いに来たのか、容易に想像がつく。
健が未夢を押し倒した場面を俺が見ていたことに、なんとなく健は気づいているのだろう。
だから多分健のことだから、あれは俺が勝手にやった、だとか、付き合ってるわけじゃない、とか弁解に来たんだろう。
『それは……っ』
だけど、俺はそんなの聞きたくなかった。
『俺は何も見てないし、何も聞いてない。それでいいだろ?』
だって健が未夢を押し倒したのは事実だし、健が未夢への想いを抑えきれなくなってきてるのも紛れもない事実に変わりないのだから。
『……っ』
案の定、健は押し黙る。
健はあのとき俺の姿を見ていたわけではなく、憶測でしか話してないだろう。
だから、俺が見ても聞いてもない、と言ったらそれを否定するものを持っていないはずだ。
『和人もさ、未夢のこと好きなんだよな?』
和人“も”。つまりは、健“も”ということに間違いないってことだろう。
だけど、俺がここで好きだと言ってどうなるのだろう?
健と本気で未夢を奪い合うなんて、下手したら未夢の望む四人の関係が壊れてしまうかもしれない。
今日の未夢を見る限り、健と付き合うのも時間の問題だろうし、変に未夢を困らせる材料を増やしたくはない。
そもそも最近の俺は未夢に避けられてるようなところがあったし、俺には可能性はほぼないだろう。
小さい頃に父親が出ていったことで、女手ひとつで育った健。
健のお母さんは必死で働く一方で、寂しそうにしている健をずっと傍で見てきた。
だけど、みんなの前ではなるべく明るく振る舞っていて、さらには高校に入ってからは、少しでもお母さんを助けるためにとバイトまで始めた健は、本当にすごいと思う。
そんな健だから、何だかんだ言って俺は健には幸せになってほしかった。
『どうだろうな』
曖昧な言い方をしてしまったのは、このときはまだ完全に自分を隠すことができなかったからだと思う。
『わかった。なるべく俺も和人相手にはフェアにいきたいから、今日はごめん』
俺は一言も未夢が好きだとも、今日健が未夢を押し倒してるところを見たとも言ってないのに、健はそう言って俺の部屋を出ていった。
だけどそのとき、未夢と健のために、未夢のことをあきらめようって思ったのは確かだっだ。
俺さえ我慢すれば、未夢と健が難なくくっついて終わるはずだった。俺の脳内シュミレーションでは。
未夢の望む、四人の関係も大きく壊れることもないと思った。
それなのに、俺の考えは甘かったんだと思い知らされる。
だけどそう自分に言い聞かせるも、そのとき聞こえた未夢の声に、胸がざわつく。
慌てて再び中を覗くと、健が未夢を床に押し倒していた。
あいつ……。
思わず健をぶっ飛ばしに行こうかと思ったけどできなかったのは、未夢が本気で嫌がってる感じじゃなかったのと、健が見たことないくらいに真剣な瞳で未夢に何かを伝えようとしていたからだ。
『や。未夢って、俺らといるのが当たり前になりすぎてるけどさ、俺……』
何かなんて、容易に想像がつく。
健はある程度の年齢になってからは口に出したことがなかったけど、未夢のことが好きで堪らないのだろうということは、そばで見ていたら嫌というほどわかった。
そんな二人を見ていたら、そこに俺の入る隙なんてないような気がして、入り口付近にマンガの入った袋を置いて立ち去ろうとした。
だけど袋を置くとき、買い物袋特有の音は立てずに済んだものの、ガサッと本が床に当たる音が小さくしてしまって、健の言葉がそこで途切れてしまったんだ。
ヤバイと思った俺は、まるで逃げるようにその場をあとにした。
未夢のお母さんに帰る挨拶をすると、案の定驚かれたけれど、適当に言い繕って未夢の家を出た。
そしてそれから一時間もしないうちに、健が俺の家にやって来た。
『お前、さっき未夢の家にいただろ?』
なんとなく予想はついたけど、健は俺の部屋に入るなり、第一声にそう聞いていた。
『とぼけたってムダだぜ? お前の残していったマンガが何よりの証拠だ』
まるで探偵マンガのセリフのような言い方に、思わず笑いそうになる。
『勝手にとぼけたことにすんなよ。確かにいたけど、それが何か?』
『お前、さっきの見たんだろ?』
『見たって、何を?』
冷静に、冷静に。
ここまで聞いたら、健が何を言いに来たのか、容易に想像がつく。
健が未夢を押し倒した場面を俺が見ていたことに、なんとなく健は気づいているのだろう。
だから多分健のことだから、あれは俺が勝手にやった、だとか、付き合ってるわけじゃない、とか弁解に来たんだろう。
『それは……っ』
だけど、俺はそんなの聞きたくなかった。
『俺は何も見てないし、何も聞いてない。それでいいだろ?』
だって健が未夢を押し倒したのは事実だし、健が未夢への想いを抑えきれなくなってきてるのも紛れもない事実に変わりないのだから。
『……っ』
案の定、健は押し黙る。
健はあのとき俺の姿を見ていたわけではなく、憶測でしか話してないだろう。
だから、俺が見ても聞いてもない、と言ったらそれを否定するものを持っていないはずだ。
『和人もさ、未夢のこと好きなんだよな?』
和人“も”。つまりは、健“も”ということに間違いないってことだろう。
だけど、俺がここで好きだと言ってどうなるのだろう?
健と本気で未夢を奪い合うなんて、下手したら未夢の望む四人の関係が壊れてしまうかもしれない。
今日の未夢を見る限り、健と付き合うのも時間の問題だろうし、変に未夢を困らせる材料を増やしたくはない。
そもそも最近の俺は未夢に避けられてるようなところがあったし、俺には可能性はほぼないだろう。
小さい頃に父親が出ていったことで、女手ひとつで育った健。
健のお母さんは必死で働く一方で、寂しそうにしている健をずっと傍で見てきた。
だけど、みんなの前ではなるべく明るく振る舞っていて、さらには高校に入ってからは、少しでもお母さんを助けるためにとバイトまで始めた健は、本当にすごいと思う。
そんな健だから、何だかんだ言って俺は健には幸せになってほしかった。
『どうだろうな』
曖昧な言い方をしてしまったのは、このときはまだ完全に自分を隠すことができなかったからだと思う。
『わかった。なるべく俺も和人相手にはフェアにいきたいから、今日はごめん』
俺は一言も未夢が好きだとも、今日健が未夢を押し倒してるところを見たとも言ってないのに、健はそう言って俺の部屋を出ていった。
だけどそのとき、未夢と健のために、未夢のことをあきらめようって思ったのは確かだっだ。
俺さえ我慢すれば、未夢と健が難なくくっついて終わるはずだった。俺の脳内シュミレーションでは。
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