空に想いを乗せて

美和優希

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第1章

惹かれる心(1)

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 桜舞う季節はいつの間にか終わっていて、葉桜の緑あふれる季節になった。

 相変わらず、昼休みの柳澤くんとの密会は続いている。



「いいんちょー? ねぇ、委員長ってばっ!」

「あ、ご、ごめん。何か言った?」


 パッと顔を上げると、柳澤くんの整った顔がどアップで視界に飛び込む。


 結局、何だかんだ悩みつつも、今日も私はこの屋上へと来ていた。



「いいんちょー、眠い?」

「いや、そういうわけじゃ……」


 さっきまで空に向かってギターを演奏しながら歌っていた柳澤くんは演奏をやめて、私をまっすぐ見つめていた。


 思わず否定の言葉が口を出たけれど、お弁当を食べ終えて心地いい気候と柳澤くんの奏でる音色を聞きながら、いつの間にかうとうとしていたのは事実だ。


 そのとき不意に自分の目の前に影ができて、ぱちりと目を開ける。



「……ほぇ?」


 真正面から私の顔を覗き込む、柳澤くん。

 ただでさえ近かった柳澤くんの顔が、私の顔の目の前に迫った。



「ちょ、や、やな……っ」


 ち、近いよ……っ!

 ドキドキと脈打つ鼓動が恥ずかしくて、思わず目を伏せる。



「クマが濃くなってる」

 へ? く、くま……?

 混乱した私の頭の中には、メルヘンチックな茶色い熊さんの姿が浮かぶ。



「委員長、最近ちゃんと寝てる?」


 ピッと柳澤くんに目の下を人さし指で押さえられる。

 熊じゃなくて、隈のことだったんだ!


 何だか恥ずかしくて、パッと目元を両手で覆った。


 この前の塾の学力テストが思うような結果が出なかったことから、夜勉強する時間を増やしたからだろう。

 それとともに最近、こうやってうとうとすることが増えていたのも事実。


「あはは、委員長でもそんな反応するんだ!」

「な……っ」


 委員長でもって、一体どういう意味よ!

 目元を覆った手を緩めて、その指の隙間から柳澤くんをキッと見る。



「だから、その反応反則だって!」

「反則?」

「そう、反則。っで、委員長って、いつも睡眠時間何時間くらいなの?」


 何で反則なのかを聞きたかったのに、あっさり話題を変えられちゃったよ……。



「え、っと、最近は3~4時間くらいかな? 最低でも3時間は切らないように努力してる」

「少なっ!! 俺なんて、その2、3倍は寝てるわ!」

「そうなんだ」


 そんなに体力がすごくあるわけではないし、私だってもっと寝なきゃダメだってわかってるけど、これでもまだやらないといけないことをちゃんとできていないというのに……。

 1日が24時間だなんて、少な過ぎるくらい……。



「少し寝なよ」

「……え? 今?」

 柳澤くんと居るのに……?
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