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第1章
惹かれる心(2)
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「予鈴のチャイム鳴ったら起こすから、委員長の身体のためにも寝た方がいいよ」
「そんな……、わ」
「悪くない」
悪いよ、と言いかけたところで、それに被せるように柳澤くんが言う。
「ほら、目閉じて?」
言われるがままに、目を閉じる。
すると柳澤くんは子守唄のような、優しいギターの音色を響かせてくれる。
さっきまで寝るものかって思ってたはずなのに、すぅっと意識が遠退いていった。
*
あ、れ……?
目を開けると、白い天井が視界一杯に広がった。
上体を起こせば、私は黄色いカーテンに覆われた空間にいるようだった。
ふと自分の座っている場所を確認すると、白い布団にベッド。
すぐ傍には、私の寝ていたベッドに突っ伏すようにして、傍に置かれたパイプイスに座る柳澤くんが寝ていた。
あれ、私……。
っていうか、授業はっ!?
ベッドから飛び出して、カーテンを開ける。
どうやら、私は保健室に居たようだ。
壁にかけられた時計を見ると、お昼休みのあとの五限目の授業が終わろうとしているところだった。
「……あれ? いいんちょー?」
柳澤くんが起きたのだろう。
いつも以上におっとりとした柳澤くんの声が背後から聞こえる。
「柳澤くん、どうしよう。私……」
これって、完全にサボりだよね……。
「大丈夫。先生やクラスのみんなには、委員長は体調不良で倒れたことになってるから」
「え?」
「ごめんな、絶対起こすって言ったのに、委員長、声かけても揺すっても全然起きなくて……。仕方ないから保健室に連れて来ちゃった」
「そう、だったんだ……」
私ったら、柳澤くんに相当迷惑かけてたんだ……。
「ご、ごめんね」
「いいよ。っていうか、委員長軽すぎだから。寝るだけじゃなくて、もっと食べるようにもした方がいいよ」
「……っ!?」
ちょ、ちょっと、それって……!?
顔に身体中の熱が集まっていく。
「言ったじゃん。俺がここまで連れて来たって」
そう言って手渡されたのは、この前ももらったウサギパン。
「はい、委員長用! ただでさえ寝てないんだから、モリモリ食べて、モリモリ肉付けなきゃ身体持たないよ?」
「もうっ!」
モリモリ肉付けて……って。
柳澤くんらしいというか、なんて言うかデリカシーなさすぎでしょ……。
「あ、もしかして、ウサギパン口にあわなかった? この前、美味しそうに食べてたように見えたから……」
「そんなことないから」
私が気にしてるのは、そこじゃない!
でもこんな柳澤くんだから、さっきの発言も許せちゃうんだろうな。
「なら良いんだけど」
私に再びウサギパンを差し出す柳澤くん。
「ありがとう」
私がそれを受け取ると、本当に嬉しそうな笑みを見せる柳澤くん。やっぱり私は柳澤くんには敵わない。
「教室、戻ろっか」
差し出された手を、自然とつかんでいた。
心地いい緊張に包まれる。
それと同時に、心の中に渦巻く罪悪感。
だけど、それ以上に膨れ上がる感情を抑えきれずにいる私がいた。
「そんな……、わ」
「悪くない」
悪いよ、と言いかけたところで、それに被せるように柳澤くんが言う。
「ほら、目閉じて?」
言われるがままに、目を閉じる。
すると柳澤くんは子守唄のような、優しいギターの音色を響かせてくれる。
さっきまで寝るものかって思ってたはずなのに、すぅっと意識が遠退いていった。
*
あ、れ……?
目を開けると、白い天井が視界一杯に広がった。
上体を起こせば、私は黄色いカーテンに覆われた空間にいるようだった。
ふと自分の座っている場所を確認すると、白い布団にベッド。
すぐ傍には、私の寝ていたベッドに突っ伏すようにして、傍に置かれたパイプイスに座る柳澤くんが寝ていた。
あれ、私……。
っていうか、授業はっ!?
ベッドから飛び出して、カーテンを開ける。
どうやら、私は保健室に居たようだ。
壁にかけられた時計を見ると、お昼休みのあとの五限目の授業が終わろうとしているところだった。
「……あれ? いいんちょー?」
柳澤くんが起きたのだろう。
いつも以上におっとりとした柳澤くんの声が背後から聞こえる。
「柳澤くん、どうしよう。私……」
これって、完全にサボりだよね……。
「大丈夫。先生やクラスのみんなには、委員長は体調不良で倒れたことになってるから」
「え?」
「ごめんな、絶対起こすって言ったのに、委員長、声かけても揺すっても全然起きなくて……。仕方ないから保健室に連れて来ちゃった」
「そう、だったんだ……」
私ったら、柳澤くんに相当迷惑かけてたんだ……。
「ご、ごめんね」
「いいよ。っていうか、委員長軽すぎだから。寝るだけじゃなくて、もっと食べるようにもした方がいいよ」
「……っ!?」
ちょ、ちょっと、それって……!?
顔に身体中の熱が集まっていく。
「言ったじゃん。俺がここまで連れて来たって」
そう言って手渡されたのは、この前ももらったウサギパン。
「はい、委員長用! ただでさえ寝てないんだから、モリモリ食べて、モリモリ肉付けなきゃ身体持たないよ?」
「もうっ!」
モリモリ肉付けて……って。
柳澤くんらしいというか、なんて言うかデリカシーなさすぎでしょ……。
「あ、もしかして、ウサギパン口にあわなかった? この前、美味しそうに食べてたように見えたから……」
「そんなことないから」
私が気にしてるのは、そこじゃない!
でもこんな柳澤くんだから、さっきの発言も許せちゃうんだろうな。
「なら良いんだけど」
私に再びウサギパンを差し出す柳澤くん。
「ありがとう」
私がそれを受け取ると、本当に嬉しそうな笑みを見せる柳澤くん。やっぱり私は柳澤くんには敵わない。
「教室、戻ろっか」
差し出された手を、自然とつかんでいた。
心地いい緊張に包まれる。
それと同時に、心の中に渦巻く罪悪感。
だけど、それ以上に膨れ上がる感情を抑えきれずにいる私がいた。
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