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第3章
限界(1)
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奏ちゃんとのデートから、数日が経つ。
あの日、喫茶店バロンで食事をしたあとは、Wild Wolfの練習にお邪魔させてもらって、いつも塾の終わる時間に合わせて無事に家に帰った。
「おねーちゃん、なほ、よるごはんオムライスがいいー」
今日は元々塾のない曜日の日。
塾のない曜日は奈穂のお迎えに行ったあと、夜ご飯を作るのが私の日課になっている。
「はいはい、オムライスね。もうすぐお母さん帰ってくると思うから、それまで一人で遊んでてね」
「はーい!」
元気に片手を上げる奈穂。
奏ちゃんと付き合う前までは、家事→学校→奈穂のお迎え→塾→寝るの繰り返しだった毎日。
だけど奏ちゃんと付き合いはじめてから、生活にメリハリがついたというか、色鮮やかになったように思う。
「よしっ!」
その分、最近では以前までは面倒に感じていたことですら、楽しく感じるんだ。
奈穂の分のオムライスが焼けた頃、お母さんが帰ってくる。
そしてお母さんとお父さんの分を焼いたあと、自分の分を焼く。
お父さんのオムライスにラップをかけて、私もお母さんと奈穂と一緒に席についてオムライスを食べ始めた。
私がオムライスを8割ほど食べた頃、お父さんが帰ってきた。
「おとーさん、おかえりなさいー!」
すでにオムライスを食べ終えた奈穂が、部屋に入ってきたお父さんに小走りで駆け寄っていく。
「ただいま」
お父さんは奈穂の頭をゴシゴシと撫でると、次の瞬間こちらに厳しい表情を向けた。
「花梨、ちょっと来なさい」
私の方へ来ると、私の腕をつかんで立ち上がらせるお父さん。
な、何……っ!?
「ちょっと、お父さん! 花梨がオムライス作ってくれてるんだから、冷めないうちに食べましょう?」
お父さんの様子に、お母さんはそう言うけれど。
「そんなもの、あとでレンジで温めればいいだろう。それより、こっちの話が先だ」
「……はい」
私は渋々お父さんに連れられて、お父さんの部屋へと連れて行かれた。
「この前、塾が休みだった日があったというのは本当か」
「……え。何で」
何でお父さんが、知ってるの?
「本当に決まってるよな。その日、お前が塾に行ってるはずの時間帯に、そこの先生に会ったんだ」
「……っ!?」
「お宅の娘さんはよく頑張ってますと、褒めてくれてたぞ。それなのにお前って奴は、家にも帰らずどこを遊び歩いていたんだ」
ピシャリと言い放たれて、返す言葉が見つからない。
「自白してくるかと待っていたが、もう限界だ。やっぱり少したるみすぎなんじゃないか?」
「内緒で遊びに行ってたことは、悪かったと思ってます。ごめんなさい」
「原因はこの前の男にあるのか? 悪いことは言わないから、花梨が傷つく前にあの男だけはやめなさい」
「……っ」
私が傷つくって何?
お父さんに奏ちゃんは、一体どんな風に映ってるのよ……。
「それに内緒であろうとなかろうと、遊びに行く暇があるならその時間を勉強にあてることだってできるだろう。勉強をしないにしても、それなら一人遊びに行くんじゃなくて、お母さんを手伝ってやるなりしなさい。奈穂だってまだ小さいんだし、お母さんだって働いてるんだから助け合わないといけないだろう、家族なんだから」
「そうだけど……」
「わかったなら、もっと頑張りなさい」
頑張りなさいって……。
最近は思うような成績が取れないこともあったけど、私は勉強は自分なりにちゃんと頑張ってきたつもりだ。
それに家の手伝いだって、毎日奈穂を幼稚園にお迎えに行って、塾のない日は夜ご飯作ってるのに、これ以上何を頑張れと言うのだろう。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。私、勉強と家の手伝いは、ちゃんとしてるつもりで……」
「言い訳は聞かん。遊びに行ってたのが、何よりも怠けていた証拠ではないか! 言われたことだけやってたらいいってわけじゃないんだからな」
「それは……っ」
「だから、言い訳は聞かんと言っておるだろう」
私が“無断で”遊びに行ったことに対して怒ってるんじゃなくて、“遊びに行くこと自体”を怒ってる、お父さん。
昔からそうだった。
今回のことは、私が無断で遊びに出たのは悪かったと思っている。
だけど、そうでもしないと遊びに行かせてもらえないのも事実なわけで……。
お父さんは、私は勉強と家の手伝いさえしてればいいって思ってるんだ……。
あの日、喫茶店バロンで食事をしたあとは、Wild Wolfの練習にお邪魔させてもらって、いつも塾の終わる時間に合わせて無事に家に帰った。
「おねーちゃん、なほ、よるごはんオムライスがいいー」
今日は元々塾のない曜日の日。
塾のない曜日は奈穂のお迎えに行ったあと、夜ご飯を作るのが私の日課になっている。
「はいはい、オムライスね。もうすぐお母さん帰ってくると思うから、それまで一人で遊んでてね」
「はーい!」
元気に片手を上げる奈穂。
奏ちゃんと付き合う前までは、家事→学校→奈穂のお迎え→塾→寝るの繰り返しだった毎日。
だけど奏ちゃんと付き合いはじめてから、生活にメリハリがついたというか、色鮮やかになったように思う。
「よしっ!」
その分、最近では以前までは面倒に感じていたことですら、楽しく感じるんだ。
奈穂の分のオムライスが焼けた頃、お母さんが帰ってくる。
そしてお母さんとお父さんの分を焼いたあと、自分の分を焼く。
お父さんのオムライスにラップをかけて、私もお母さんと奈穂と一緒に席についてオムライスを食べ始めた。
私がオムライスを8割ほど食べた頃、お父さんが帰ってきた。
「おとーさん、おかえりなさいー!」
すでにオムライスを食べ終えた奈穂が、部屋に入ってきたお父さんに小走りで駆け寄っていく。
「ただいま」
お父さんは奈穂の頭をゴシゴシと撫でると、次の瞬間こちらに厳しい表情を向けた。
「花梨、ちょっと来なさい」
私の方へ来ると、私の腕をつかんで立ち上がらせるお父さん。
な、何……っ!?
「ちょっと、お父さん! 花梨がオムライス作ってくれてるんだから、冷めないうちに食べましょう?」
お父さんの様子に、お母さんはそう言うけれど。
「そんなもの、あとでレンジで温めればいいだろう。それより、こっちの話が先だ」
「……はい」
私は渋々お父さんに連れられて、お父さんの部屋へと連れて行かれた。
「この前、塾が休みだった日があったというのは本当か」
「……え。何で」
何でお父さんが、知ってるの?
「本当に決まってるよな。その日、お前が塾に行ってるはずの時間帯に、そこの先生に会ったんだ」
「……っ!?」
「お宅の娘さんはよく頑張ってますと、褒めてくれてたぞ。それなのにお前って奴は、家にも帰らずどこを遊び歩いていたんだ」
ピシャリと言い放たれて、返す言葉が見つからない。
「自白してくるかと待っていたが、もう限界だ。やっぱり少したるみすぎなんじゃないか?」
「内緒で遊びに行ってたことは、悪かったと思ってます。ごめんなさい」
「原因はこの前の男にあるのか? 悪いことは言わないから、花梨が傷つく前にあの男だけはやめなさい」
「……っ」
私が傷つくって何?
お父さんに奏ちゃんは、一体どんな風に映ってるのよ……。
「それに内緒であろうとなかろうと、遊びに行く暇があるならその時間を勉強にあてることだってできるだろう。勉強をしないにしても、それなら一人遊びに行くんじゃなくて、お母さんを手伝ってやるなりしなさい。奈穂だってまだ小さいんだし、お母さんだって働いてるんだから助け合わないといけないだろう、家族なんだから」
「そうだけど……」
「わかったなら、もっと頑張りなさい」
頑張りなさいって……。
最近は思うような成績が取れないこともあったけど、私は勉強は自分なりにちゃんと頑張ってきたつもりだ。
それに家の手伝いだって、毎日奈穂を幼稚園にお迎えに行って、塾のない日は夜ご飯作ってるのに、これ以上何を頑張れと言うのだろう。
「そんな言い方しなくてもいいじゃない。私、勉強と家の手伝いは、ちゃんとしてるつもりで……」
「言い訳は聞かん。遊びに行ってたのが、何よりも怠けていた証拠ではないか! 言われたことだけやってたらいいってわけじゃないんだからな」
「それは……っ」
「だから、言い訳は聞かんと言っておるだろう」
私が“無断で”遊びに行ったことに対して怒ってるんじゃなくて、“遊びに行くこと自体”を怒ってる、お父さん。
昔からそうだった。
今回のことは、私が無断で遊びに出たのは悪かったと思っている。
だけど、そうでもしないと遊びに行かせてもらえないのも事実なわけで……。
お父さんは、私は勉強と家の手伝いさえしてればいいって思ってるんだ……。
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