秘密の恋人は鬼上司!?~ウソから始まるSweet Love~

美和優希

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1.この姿で気に入られても困りますから……!

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 オレンジ色のランタン風のお洒落な照明がところどころについてるものの、薄暗い店内。

 私たちは、六人がけのお座敷に通された。

 自己紹介もそこそこにして始まった中、私は目の前でグツグツと炊かれているお鍋とにらめっこしていた。


「ねぇーねぇー、梨緒ちゃんって、結構大人しいよねぇ?」

 金髪でやたらとアクセサリーをつけた男性……、ええと名前は確か山口さんが、私の隣に寄り添うように座ってきた。


「え! えぇええと、そんなこと、ないですよ?」

 最初、女子三人と向かい合うように、男子三人は座っていた。

 一番出口に近い端っこに座っていた私。

 山口さんは、三人の男子のうち真ん中に座っていたはずなのに、いつの間に私の隣まで来たの!?

 しかも、距離近いから!

 それに、何話していいかわからないし!


「あ、梨緒、猫被ってるだけですよぉ~。普段はもっとよくしゃべる子なのにね~」


 耳元で猫なで声が聞こえたと思えば、私の後ろにはいつの間にか、白鳥さんの姿があった。


「梨緒ってすごいんですよ~。合コンには、しらみ潰しのように参加して、絶え間なく男の人はべらせてるんですよ? 梨緒も、毎回ちょっと遊べる男の人探してるって感じだし?」

「え……っ?」


 ちょっと! 何それ!

 白鳥さんの中での梨緒のイメージって、一体どうなってるのよ!


 確かに梨緒は、合コンは好きみたいだけど、それはただ飲み会とかそういった類いのことが好きなだけみたいだし。

 彼氏がいる中、合コンに参加してる梨緒も悪いけど、そんな遊べる男の人をとっかえひっかえ探してることはないと思うんだけど……。


「え、マジで? なんか俺、めっちゃラッキーな情報仕入れちゃった!?」


 ゲラゲラと笑いながら、山口さんは私の肩を抱き寄せてくる。

 う……っ。お酒臭い……。


 何か言い返してやりたいけれど、そんな勇気も出せずにいると、私と目が合った白鳥さんは意地悪く笑った。


「本当、梨緒、清楚ぶっちゃって今日はどうしたのよ。何も言い返して来ないなんて、されたい放題ね。私と澤田は、本郷さん狙いだから。邪魔しないでね?」

「え、白鳥ちゃんも澤田ちゃんも本郷狙い!? やっぱり、あいつ連れてきたの失敗だったか……」


 山口さんの視線の先、私とは対角線上の端にいる本郷さんの方を見ると、澤田さんが上目使いで本郷さんの腕に寄りかかっている。

 本郷ほんごう つかさ。二十九歳。

 黒髪でクールな雰囲気の彼は、一見近寄り難いオーラが出ているけれど、すっかり女性陣二人は彼に熱を上げていた。


 切れ長の瞳に、スッと通った鼻。
 ほどよい厚さの魅惑的な唇。

 それらがバランスよくついた彼は、これまで男性とは無縁だった私から見てもかっこいいと思う。

 それだけに、二人が夢中になるのも無理ないなと思う。


 彼を除けば、残ってるのは目の前のチャラそうな山口さんと、さっきまで澤田さんに猛烈にアピールしていた、菊地さんだ。


「山口、梨緒ちゃん、俺もそっちにまぜて~」


 けれど澤田さんが本郷さん狙いだと知って、菊池さんはこちらに戻ってきたようだ。 


「梨緒~、男が二人も群がってきたよ? よかったね~! じゃあ、私は本郷さんのところに行ってくるね~?」


 その様子を見てなのだろう、白鳥さんは私の方へと手をヒラヒラと振って、対角線上の隅へと移動してしまった。


 そんなぁ……。

 改めて目の前を見ると、山口さんと菊地さんがニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてこちらを見ている。

 こんなの、拷問だから……!


 私が一人になったのをいいことに、二人は根掘り葉掘り梨緒のことを質問攻めにしてきた。

 今まで付き合った男性の数とか。
 今、彼氏がいるのか、とか。
 どんな男がタイプだとか……。

 いくら双子の妹のことでも、そこまで知らないよ~!

 梨緒のことも、どこまで私の口から話していいかわからないし……!


「梨緒ちゃん、なんか想像以上にノリ悪くね?」

 頑なに口ごもってばかりで、何ひとつちゃんとした返事をしない私に嫌気でもさしてくれたかな……?

 怪訝そうにこちらを見る男性二人に一瞬だけ期待したけど、それは大きな勘違いだった。


「これ飲んで、テンションあげちゃえよ~」

 そんな言葉とともに菊地さんから突きつけられたのは、並々とビールの注がれた大ジョッキ。

 シュワシュワと泡の弾けるそれは、さっき菊地さんが頼んで持ってきてもらったばかりのものだ。


「あ、私、ビールはちょっと……」

「何? 梨緒ちゃん、もしかしてお酒苦手?」

「いや、そういう訳じゃないんですけど……」

「それなら大丈夫大丈夫! ここのビールは喉越しもいいし、女の子でも飲みやすいからさ~!」

「一杯飲んでみよ~!」


 完全に酔っ払いモードの二人の勢いに負けて、私は手渡された大ジョッキを受け取る。


 正直、ビールの独特の臭いとか苦味が苦手なんだけどなぁ……。

 だから、手の中にある大ジョッキに口をつけることを、どうしても躊躇ってしまう。

 でも、この場の雰囲気を壊すことも出来ないし……。


 ええい! もうどうにでもなれ!

 とにかく時間が早く過ぎていくことだけを願いながら、私は大ジョッキの中のビールを身体の中に流し込んだ。
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