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2.お相手は、まさかの鬼上司!?
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私が彼の姿に気付いたのとほぼ同時に、本郷さんが顔を上げて、私の姿を捉える。
「よぉ、この前ぶりだな」
「……お、お疲れさまです」
「は? 何でお疲れさま?」
「い、いえ。ちょっと、つい、癖で……」
うわぁ、頭では今の自分は“梨緒”だってわかってたはずなんだけど、つい会社での癖で“お疲れさまです”って挨拶しちゃったよ……。
“こんばんは”とか、“お久しぶりです”とかの方がまだ自然だったよね、絶対。
「まぁ、いい。ちょっと付き合え」
「え?」
手首をつかまれて、ドキンと心臓が跳ねる。
私の心境を知らない本郷さんに、先程の不自然な挨拶を気に留めている様子はなさそうだ。
本郷さんは軽く笑みを浮かべると、私の手を引いてどんどん駅から遠ざかっていく。
「……ほ、本郷さん!」
「何だよ」
「一体、どこへ……?」
「あ? そのうちわかる、ついてこい」
えぇえぇええ!?
それ、こたえになってないですからっ!
だけど、本郷さんの雰囲気に完全に呑まれてしまった私がそんなことを言い返せるわけもなく、私は手を引かれるがままに夜道を進んでいくことになった。
*
「あの、本郷さん。ここは……」
「なんだよ。こういうところ、苦手か?」
「い、いえ。そういうわけでは、ないんですけど……」
連れてこられたのは、繁華街の一角にあるビルの地下一階に位置するフランス料理店。
白いテーブルクロスのかかった長方形の机に、私と本郷さんは向かい合うように座っていた。
テーブルの上には、何本かの形や大きさの異なるナイフやフォークに、ワイングラスまで置かれている。
スタイリッシュな雰囲気の店内。キッチンの傍に置かれたワインセラーには、世界各国のワインが何種類も飾られている。
なんだか慣れない場所に、特に何をしているわけでもないのに、ドキドキするよ……。
「それにしても、お前、ガチガチに固まりすぎだろ。まさか俺のこと、警戒してるんじゃねぇだろうな?」
「い、いえ。警戒なんて、してないですよ?」
「何だよ、それ。でもまぁ、お前のこと取って食ったりしないから、安心しろよ」
本郷さんは、ハハハっと高らかに笑う。
最近ではいつも顔を会わせている本郷店長と同一人物のはずなのに、なんだか別の人みたい……。
だって本郷店長がこんな風に笑う姿なんて、一緒に仕事をしはじめて一週間弱、見たことないもん。
本郷さんが私をからかっている間に、最初の料理が運ばれてくる。
「前菜の、マグロとトマトのカルパッチョでございます」
大きめのお皿にオシャレに盛り付けられたお料理に、思わず目を輝かせてしまう。
「すごく美味しそうですね!」
そのとき、フッと笑う声が前方から聞こえて、思わず顔を上げた。
「やっと、笑ったな」
「……え?」
「お前、この前の合コンのときもそうだったけど、ほとんど笑わなかったから」
「あ、そうでしたっけ……?」
確かにこの前の合コンのときは、梨緒のフリをするのに一生懸命で、そんな心の余裕なんてなかったもんな。
「そうそう。やっぱり笑顔の方がいいな。俺の思った通り、笑った方が可愛い」
か、可愛い、だなんて……!
生まれてこのかた、相手はあの本郷店長とはいえ、男性から言われる日がくるなんて……!
いや待てよ、落ち着くんだ、奈緒。
今の私は、梨緒の姿。
だから、奈緒の笑顔ではなくて、梨緒の笑顔について可愛いって言われてるんだから。
高まった気持ちも一瞬、一気に風船がしぼむように小さくなっていく。
だけど、そんな気持ちさえ気づかれるわけにはいかない。
「……あ、あの……。何で私、だったんですか……?」
なるべく平然とお料理を口に運びながら、一番気になっていたことを口に出す。
「よぉ、この前ぶりだな」
「……お、お疲れさまです」
「は? 何でお疲れさま?」
「い、いえ。ちょっと、つい、癖で……」
うわぁ、頭では今の自分は“梨緒”だってわかってたはずなんだけど、つい会社での癖で“お疲れさまです”って挨拶しちゃったよ……。
“こんばんは”とか、“お久しぶりです”とかの方がまだ自然だったよね、絶対。
「まぁ、いい。ちょっと付き合え」
「え?」
手首をつかまれて、ドキンと心臓が跳ねる。
私の心境を知らない本郷さんに、先程の不自然な挨拶を気に留めている様子はなさそうだ。
本郷さんは軽く笑みを浮かべると、私の手を引いてどんどん駅から遠ざかっていく。
「……ほ、本郷さん!」
「何だよ」
「一体、どこへ……?」
「あ? そのうちわかる、ついてこい」
えぇえぇええ!?
それ、こたえになってないですからっ!
だけど、本郷さんの雰囲気に完全に呑まれてしまった私がそんなことを言い返せるわけもなく、私は手を引かれるがままに夜道を進んでいくことになった。
*
「あの、本郷さん。ここは……」
「なんだよ。こういうところ、苦手か?」
「い、いえ。そういうわけでは、ないんですけど……」
連れてこられたのは、繁華街の一角にあるビルの地下一階に位置するフランス料理店。
白いテーブルクロスのかかった長方形の机に、私と本郷さんは向かい合うように座っていた。
テーブルの上には、何本かの形や大きさの異なるナイフやフォークに、ワイングラスまで置かれている。
スタイリッシュな雰囲気の店内。キッチンの傍に置かれたワインセラーには、世界各国のワインが何種類も飾られている。
なんだか慣れない場所に、特に何をしているわけでもないのに、ドキドキするよ……。
「それにしても、お前、ガチガチに固まりすぎだろ。まさか俺のこと、警戒してるんじゃねぇだろうな?」
「い、いえ。警戒なんて、してないですよ?」
「何だよ、それ。でもまぁ、お前のこと取って食ったりしないから、安心しろよ」
本郷さんは、ハハハっと高らかに笑う。
最近ではいつも顔を会わせている本郷店長と同一人物のはずなのに、なんだか別の人みたい……。
だって本郷店長がこんな風に笑う姿なんて、一緒に仕事をしはじめて一週間弱、見たことないもん。
本郷さんが私をからかっている間に、最初の料理が運ばれてくる。
「前菜の、マグロとトマトのカルパッチョでございます」
大きめのお皿にオシャレに盛り付けられたお料理に、思わず目を輝かせてしまう。
「すごく美味しそうですね!」
そのとき、フッと笑う声が前方から聞こえて、思わず顔を上げた。
「やっと、笑ったな」
「……え?」
「お前、この前の合コンのときもそうだったけど、ほとんど笑わなかったから」
「あ、そうでしたっけ……?」
確かにこの前の合コンのときは、梨緒のフリをするのに一生懸命で、そんな心の余裕なんてなかったもんな。
「そうそう。やっぱり笑顔の方がいいな。俺の思った通り、笑った方が可愛い」
か、可愛い、だなんて……!
生まれてこのかた、相手はあの本郷店長とはいえ、男性から言われる日がくるなんて……!
いや待てよ、落ち着くんだ、奈緒。
今の私は、梨緒の姿。
だから、奈緒の笑顔ではなくて、梨緒の笑顔について可愛いって言われてるんだから。
高まった気持ちも一瞬、一気に風船がしぼむように小さくなっていく。
だけど、そんな気持ちさえ気づかれるわけにはいかない。
「……あ、あの……。何で私、だったんですか……?」
なるべく平然とお料理を口に運びながら、一番気になっていたことを口に出す。
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