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6.敵意を向けられても困るのですが。
(4)
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「まぁ。だって、やりたいなら態度で示さなきゃ、伝わりっこないだろ?」
「そ、そうですけど……」
「お前は遠慮しすぎなんだよ。もうちょっと自己主張してもいいと、俺は思うが」
「そうですかね……?」
なんだか、本郷店長らしい考えだな。
「でも、よく私がイルカタッチに参加したいと思ってるってわかりましたね」
「そりゃ、お前のことずっと見てるつもりだからな」
うぅぅ……。
本郷店長って、本当にストレートだよね……。
仕事中の本郷店長を見てても、彼は裏表のない真面目な人のように見える。だから、きっと本当にそう思って言ってくれてるのだろう。
なんだか、嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったいような、変な感じだ。
「あ、あの、本郷さん……?」
水槽の中に見える海ガメに視線を落としていると、突然私の両肩に本郷店長の両手が触れる。
いつの間にか私の背中に密着する本郷店長の身体に、鼓動がさらに加速した。
斜め後ろを見上げると、目を柔らかく細めてこちらを見る本郷店長と目が合う。
ゆっくりと近づく本郷店長の顔。
ドキンと胸が大きく脈打った。
思わず目を閉じたとき、本郷店長の囁くような声が耳に届いた。
「梨緒……」
その瞬間、ハッと我に返って本郷店長の胸元を両手で押し返していた。
「あ、悪い。ったく、何やってんだ、俺は……」
「い、いえ。す、すみません。私こそ、びっくりしてしまって……」
ひゃ~。もし、今本郷店長が梨緒の名前を呼ばなかったら、もしかしなくても私、本郷店長とキ、キスしてたんだよね……?
私、一体どうしちゃったんだろう?
本郷店長とキスしちゃってもいいって、一瞬でも思ってた。
それに今、“梨緒”って呼ばれて、酷く傷ついているのも確かだ。
いつも本郷店長は私のことを“お前”と呼ぶことが多いから、てっきり奈緒としての私を見てくれてるのではないかと錯覚してしまう。
そんなこと、ないのにね……。
*
館内を一通り見終えると、出口付近にあったお土産物屋さんへと寄った。
「お前、これとか好きなんじゃね?」
本郷店長に目の前に出されたのは、ちょうど抱き枕になりそうなくらいの大きさの、イルカのぬいぐるみ。
「わあ、可愛いですね!」
手渡されるがままにイルカのぬいぐるみを手に取ると、丸い瞳がこちらを見つめているようで、思わず内心身悶える。
あのまま気まずい雰囲気になってしまうのかと心配したけれど、本郷店長はそれまでと変わらず私と接してくれている。
「そう言うと思った。じゃあ、今日付き合ってくれた礼とさっきのお詫びとして、それ、プレゼントしてやるよ」
さっきのお詫びって……。
「き、気にしなくても、大丈夫ですよ」
あれは、本郷店長じゃなくて、私が悪いのに……。
少なからず本郷店長を騙してる罪悪感に、胸が痛んだ。
だけど、本郷店長にそれ以上何かを伝える前に、本郷店長は私の手からイルカのぬいぐるみを取り上げて、レジの方へと持っていってしまった。
本郷店長がレジで会計を済ませて、私は大きな紙袋に入ったイルカのぬいぐるみを受け取る。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
再び本郷店長の大きな手に手を取られて、出口の方へと進もうとしたときだった。
「あっれー? やっぱり司だ!」
私も本郷店長も声の聞こえた方へと振り向くと、女性三人組の中から、背の高いショートヘアの女の人がカツカツとヒールの音を鳴らしながらこちらに歩いてきた。
「そ、そうですけど……」
「お前は遠慮しすぎなんだよ。もうちょっと自己主張してもいいと、俺は思うが」
「そうですかね……?」
なんだか、本郷店長らしい考えだな。
「でも、よく私がイルカタッチに参加したいと思ってるってわかりましたね」
「そりゃ、お前のことずっと見てるつもりだからな」
うぅぅ……。
本郷店長って、本当にストレートだよね……。
仕事中の本郷店長を見てても、彼は裏表のない真面目な人のように見える。だから、きっと本当にそう思って言ってくれてるのだろう。
なんだか、嬉しいような恥ずかしいような、くすぐったいような、変な感じだ。
「あ、あの、本郷さん……?」
水槽の中に見える海ガメに視線を落としていると、突然私の両肩に本郷店長の両手が触れる。
いつの間にか私の背中に密着する本郷店長の身体に、鼓動がさらに加速した。
斜め後ろを見上げると、目を柔らかく細めてこちらを見る本郷店長と目が合う。
ゆっくりと近づく本郷店長の顔。
ドキンと胸が大きく脈打った。
思わず目を閉じたとき、本郷店長の囁くような声が耳に届いた。
「梨緒……」
その瞬間、ハッと我に返って本郷店長の胸元を両手で押し返していた。
「あ、悪い。ったく、何やってんだ、俺は……」
「い、いえ。す、すみません。私こそ、びっくりしてしまって……」
ひゃ~。もし、今本郷店長が梨緒の名前を呼ばなかったら、もしかしなくても私、本郷店長とキ、キスしてたんだよね……?
私、一体どうしちゃったんだろう?
本郷店長とキスしちゃってもいいって、一瞬でも思ってた。
それに今、“梨緒”って呼ばれて、酷く傷ついているのも確かだ。
いつも本郷店長は私のことを“お前”と呼ぶことが多いから、てっきり奈緒としての私を見てくれてるのではないかと錯覚してしまう。
そんなこと、ないのにね……。
*
館内を一通り見終えると、出口付近にあったお土産物屋さんへと寄った。
「お前、これとか好きなんじゃね?」
本郷店長に目の前に出されたのは、ちょうど抱き枕になりそうなくらいの大きさの、イルカのぬいぐるみ。
「わあ、可愛いですね!」
手渡されるがままにイルカのぬいぐるみを手に取ると、丸い瞳がこちらを見つめているようで、思わず内心身悶える。
あのまま気まずい雰囲気になってしまうのかと心配したけれど、本郷店長はそれまでと変わらず私と接してくれている。
「そう言うと思った。じゃあ、今日付き合ってくれた礼とさっきのお詫びとして、それ、プレゼントしてやるよ」
さっきのお詫びって……。
「き、気にしなくても、大丈夫ですよ」
あれは、本郷店長じゃなくて、私が悪いのに……。
少なからず本郷店長を騙してる罪悪感に、胸が痛んだ。
だけど、本郷店長にそれ以上何かを伝える前に、本郷店長は私の手からイルカのぬいぐるみを取り上げて、レジの方へと持っていってしまった。
本郷店長がレジで会計を済ませて、私は大きな紙袋に入ったイルカのぬいぐるみを受け取る。
「あ、ありがとうございます」
「ん」
再び本郷店長の大きな手に手を取られて、出口の方へと進もうとしたときだった。
「あっれー? やっぱり司だ!」
私も本郷店長も声の聞こえた方へと振り向くと、女性三人組の中から、背の高いショートヘアの女の人がカツカツとヒールの音を鳴らしながらこちらに歩いてきた。
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