54 / 75
9.お前は一体誰なんだよ。
(4)
しおりを挟む
溢れ出す気持ちに逆らえずに、今自分が梨緒の姿でいることも忘れて、すぐ傍にある本郷店長の服をきゅっと掴む。
そして、うつむき加減だった顔を本郷店長の方へと少し上に向けたとき、私の唇は本郷店長によって奪われていた。
「……んっ」
角度を変えて、優しく唇を重ねる。
酸素を求めて少し開いた口からは、温かい舌が入ってきた。
強引だけど、優しいキス。
「……抵抗しないってことは、嫌じゃないのか?」
唇が解放されると同時に、本郷店長の声が降ってくる。
強引に唇を奪っておきながら、私の表情をうかがう熱い瞳はどこか不安そうだ。
「嫌、じゃない、です……」
嫌なわけがない……。
私の返事に嬉しそうな笑みを浮かべると、再び本郷店長は唇を重ねてきた。
本郷店長には伝わってるかな。
私が今、こんなにドキドキしてるってことが。
「……好きだ、梨緒」
キスの合間に、吐息混じりに囁かれる。
だけど、私は何もこたえられなかった。
その言葉を合図に、たった今忘れかけていた現実へと引き戻されてしまったから。
今の私は、梨緒の姿だったんだと。
だからといって、キスを拒むこともできなくて……。
ゴンドラが地上に近づくまで、絶え間なく降り注ぐキスに身を任せていた。
動物園をあとにすると、私と本郷店長は電車で数駅揺られてショッピングセンターへとたどり着く。
あんな濃厚なキスをしてしまってから、本郷店長の顔をまともに見ることができずにいる。
本郷店長はきっとあのキスで私の気持ちに気づいたんだろうな。
私の右手は、観覧車から降りてから、ずっと握られたままだった。
駅と隣接する形のショッピングセンターは、さすが三ヶ月ほど前にオープンしたばかりなだけあってとても綺麗だ。
百貨店と映画館を中核として、飲食店や服屋といった様々なお店が入っている。
駅から二階の入り口に入って、案内図を見る。
四階建てのショッピングセンターの最上階に、目的の映画館があるようだ。
案内図と一緒に、今上映されている映画とそのタイムスケジュールのかかれた紙もあり、それらに目を通す。
「運が良かったみたいだな。この時間帯だと、上映開始時間がちょうどいいのがいくつかあるな。お前、何か観たいのあるか?」
「……そ、そうですね」
緊張してたのは自分だけだったのか、と思ってしまうくらい、いつもと同じ調子で本郷店長はそう言ってくる。
今から見ることができそうなのは、ラブコメ、感動系の恋愛もの、ファンタジー、ホラーの四種類だ。
この選択肢だと、ラブコメかな……?
感動系も気になるけど、泣いて目元のメイクが落ちたら困るし……。
そこは現実的に考えて、ラブコメものがいいと本郷店長に伝える。
「何となくそう言うと思った。じゃあ、これにするか」
本郷店長は再び私の手を取ると、エスカレーターの方へと歩き出した。
三階に上がると、すぐ四階へのエスカレーターがあるわけではなく、フロアを横切って四階へと続くエスカレーターへと行かなければならない造りになっている。
飲食店と女性服のお店が主に並んでいる三階。
四階へのエスカレーターに乗るためには、女性服のお店が主に並ぶフロアから飲食店が並ぶフロアへと横切っていく必要があった。
華やかな女性服のフロアから落ち着いた感じの飲食店のフロアが見えてきたとき、そこに少しの人だかりができているのが見えた。
そして、うつむき加減だった顔を本郷店長の方へと少し上に向けたとき、私の唇は本郷店長によって奪われていた。
「……んっ」
角度を変えて、優しく唇を重ねる。
酸素を求めて少し開いた口からは、温かい舌が入ってきた。
強引だけど、優しいキス。
「……抵抗しないってことは、嫌じゃないのか?」
唇が解放されると同時に、本郷店長の声が降ってくる。
強引に唇を奪っておきながら、私の表情をうかがう熱い瞳はどこか不安そうだ。
「嫌、じゃない、です……」
嫌なわけがない……。
私の返事に嬉しそうな笑みを浮かべると、再び本郷店長は唇を重ねてきた。
本郷店長には伝わってるかな。
私が今、こんなにドキドキしてるってことが。
「……好きだ、梨緒」
キスの合間に、吐息混じりに囁かれる。
だけど、私は何もこたえられなかった。
その言葉を合図に、たった今忘れかけていた現実へと引き戻されてしまったから。
今の私は、梨緒の姿だったんだと。
だからといって、キスを拒むこともできなくて……。
ゴンドラが地上に近づくまで、絶え間なく降り注ぐキスに身を任せていた。
動物園をあとにすると、私と本郷店長は電車で数駅揺られてショッピングセンターへとたどり着く。
あんな濃厚なキスをしてしまってから、本郷店長の顔をまともに見ることができずにいる。
本郷店長はきっとあのキスで私の気持ちに気づいたんだろうな。
私の右手は、観覧車から降りてから、ずっと握られたままだった。
駅と隣接する形のショッピングセンターは、さすが三ヶ月ほど前にオープンしたばかりなだけあってとても綺麗だ。
百貨店と映画館を中核として、飲食店や服屋といった様々なお店が入っている。
駅から二階の入り口に入って、案内図を見る。
四階建てのショッピングセンターの最上階に、目的の映画館があるようだ。
案内図と一緒に、今上映されている映画とそのタイムスケジュールのかかれた紙もあり、それらに目を通す。
「運が良かったみたいだな。この時間帯だと、上映開始時間がちょうどいいのがいくつかあるな。お前、何か観たいのあるか?」
「……そ、そうですね」
緊張してたのは自分だけだったのか、と思ってしまうくらい、いつもと同じ調子で本郷店長はそう言ってくる。
今から見ることができそうなのは、ラブコメ、感動系の恋愛もの、ファンタジー、ホラーの四種類だ。
この選択肢だと、ラブコメかな……?
感動系も気になるけど、泣いて目元のメイクが落ちたら困るし……。
そこは現実的に考えて、ラブコメものがいいと本郷店長に伝える。
「何となくそう言うと思った。じゃあ、これにするか」
本郷店長は再び私の手を取ると、エスカレーターの方へと歩き出した。
三階に上がると、すぐ四階へのエスカレーターがあるわけではなく、フロアを横切って四階へと続くエスカレーターへと行かなければならない造りになっている。
飲食店と女性服のお店が主に並んでいる三階。
四階へのエスカレーターに乗るためには、女性服のお店が主に並ぶフロアから飲食店が並ぶフロアへと横切っていく必要があった。
華やかな女性服のフロアから落ち着いた感じの飲食店のフロアが見えてきたとき、そこに少しの人だかりができているのが見えた。
1
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
【完】経理部の女王様が落ちた先には
Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位
高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け
ピンヒールの音を響かせ歩く
“経理部の女王様”
そんな女王様が落ちた先にいたのは
虫1匹も殺せないような男だった・・・。
ベリーズカフェ総合ランキング4位
2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位
2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位
関連物語
『ソレは、脱がさないで』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位
『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位
私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。
伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。
物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる