秘密の恋人は鬼上司!?~ウソから始まるSweet Love~

美和優希

文字の大きさ
66 / 75
11.もう俺の前から逃がさない。

(3)

しおりを挟む
 梨緒との作戦を実行するのは、それから三週間後のことになった。

 お休みが被っていた私と梨緒は、全く同じメイクをして、全く同じ服装をする。

 今日は、本郷店長は出勤日だけど早上がりの日だ。


 梨緒の提案で、本郷店長の住むマンションの近くの駅で待ち合わせることになった。

 待ち合わせ時間は、19時。

 ドキドキしながら少し離れたところから、待ち合わせ場所を見ていると、十分前に本郷店長はその場に現れた。


 仕事を終えて、店舗から直接来たんだと思う。

 駅の改札内から現れた本郷店長は、黒いフレームのメガネはかけていないものの、いつもの見慣れたスーツ姿に黒いカバンを持っている。


「わっ! もう来たよ!」

「じゃあ、もう出ていく?」


 物影に隠れているものの、本郷店長の姿を見つけるなり心拍数が一気に跳ね上がる。

 梨緒は早くと促すけれど、なかなか心の準備が整わない。


 本郷店長も落ち着かないのか、キョロキョロと周囲を見回したり、腕時計を確認したりしている。


 すでに待ち合わせ場所に現れた本郷店長を待たせるのも悪いなと思いながらも、結局私の決心が着いたのは、待ち合わせ時刻の三分前だった。


 それでも梨緒に引っ張られるようにして、物陰から飛び出した。

 もう数歩あるけば、本郷店長の目の前にたどり着く。


 ここから見えるのは、本郷店長の横顔だけだ。

 本郷店長はまだ私たちの存在に気づいていない。


 一旦梨緒とその場に立ち止まると、梨緒の作戦通り足を揃えて一歩一歩本郷店長の方へと踏み出す。


 あと一歩の距離のところで、本郷店長はこちらを向いて、彼の切れ長の瞳に私たちを映した。

 本郷店長は、驚いたように目を見開いて私と梨緒とを見比べる。


「「本郷さん。どちらが“あなたといつも会っていた梨緒”かわかりますか?」」

 私と梨緒が同時に発した言葉に、本郷店長は納得したようにフッと笑う。


「俺を試そうってことか。じゃあ、こちらも条件をつけさせてもらう。もし俺が、“俺の待っていた梨緒”を当てられた場合、もう俺の前から逃がさない」

 私と梨緒とを交互に見ながら、本郷店長はまるで宣言するようにそう言った。

 ざわつく駅前。
 だけど、周囲のざわつきはどこか遠くに感じていた。

 むしろ、それよりも固唾を飲み込む音や全身がドキドキと脈打つ音の方が大きく聞こえる。


 時間にしては、ほんの数秒のことだったんだと思うけれど、やけにこの数秒が長い時間のようにさえ思えた。


「俺が待っていたのは、お前だ」


 私と梨緒とを見定めるように見ていた本郷店長が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 本郷店長は、私の腕を掴むなりグイっと力強く引き寄せた。


 トンと私の肩が本郷店長の胸元に触れる。

 そして本郷店長は、さらに驚くことを口にしたのだ。


「そうだろ? 梨緒。いや、高倉奈緒」

「……えっ?」


 これでもかっていうくらいに目を見開いて、目の前の本郷店長の顔を見上げる。

 驚きのあまり、言葉が出ない。
 何か言おうと開いた口は、ぱくぱくと動かすのがやっとだった。


「大正解~! 奈緒、よかったじゃない! 本郷さんも、私の都合でこんなことになってすみません。奈緒をよろしくお願いします」

「ちょっ、梨緒!」

「じゃあ、私は邪魔者になる前に撤退するわね~」

 勝手に次から次へと言葉を並べる梨緒を呼び留めるも、梨緒はヒラヒラと私に手を振って、改札内へと消えていった。


 ど、どどどどうしよう……!

 いや、これでよかったのかもしれないけど、こんなところで二人にされて、これからどうしたらいいのよ。

 っていうか、本郷店長はいつから私の正体に気づいてたの……?


「おい」

「は、はいぃぃっ!」

 ギギギと首を無理やり後ろへと向けて、本郷店長の方へと向き直る。


「……どういうことか、説明してもらおうか」

「す、すみません……」


 いつも仕事中に本郷店長に怒られるときと同じ瞳を向けられて、思わずびくりと肩を強ばらせる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完】経理部の女王様が落ちた先には

Bu-cha
恋愛
エブリスタにて恋愛トレンドランキング4位 高級なスーツ、高級な腕時計を身に付け ピンヒールの音を響かせ歩く “経理部の女王様” そんな女王様が落ちた先にいたのは 虫1匹も殺せないような男だった・・・。 ベリーズカフェ総合ランキング4位 2022年上半期ベリーズカフェ総合ランキング53位 2022年下半期ベリーズカフェ総合ランキング44位 関連物語 『ソレは、脱がさないで』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高4位 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高2位 『大きなアナタと小さなわたしのちっぽけなプライド』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高13位 『初めてのベッドの上で珈琲を』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位 『“こだま”の森~FUJIメゾン・ビビ』 ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 17位 私の物語は全てがシリーズになっておりますが、どれを先に読んでも楽しめるかと思います。 伏線のようなものを回収していく物語ばかりなので、途中まではよく分からない内容となっております。 物語が進むにつれてその意味が分かっていくかと思います。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

処理中です...