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11.もう俺の前から逃がさない。
(3)
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梨緒との作戦を実行するのは、それから三週間後のことになった。
お休みが被っていた私と梨緒は、全く同じメイクをして、全く同じ服装をする。
今日は、本郷店長は出勤日だけど早上がりの日だ。
梨緒の提案で、本郷店長の住むマンションの近くの駅で待ち合わせることになった。
待ち合わせ時間は、19時。
ドキドキしながら少し離れたところから、待ち合わせ場所を見ていると、十分前に本郷店長はその場に現れた。
仕事を終えて、店舗から直接来たんだと思う。
駅の改札内から現れた本郷店長は、黒いフレームのメガネはかけていないものの、いつもの見慣れたスーツ姿に黒いカバンを持っている。
「わっ! もう来たよ!」
「じゃあ、もう出ていく?」
物影に隠れているものの、本郷店長の姿を見つけるなり心拍数が一気に跳ね上がる。
梨緒は早くと促すけれど、なかなか心の準備が整わない。
本郷店長も落ち着かないのか、キョロキョロと周囲を見回したり、腕時計を確認したりしている。
すでに待ち合わせ場所に現れた本郷店長を待たせるのも悪いなと思いながらも、結局私の決心が着いたのは、待ち合わせ時刻の三分前だった。
それでも梨緒に引っ張られるようにして、物陰から飛び出した。
もう数歩あるけば、本郷店長の目の前にたどり着く。
ここから見えるのは、本郷店長の横顔だけだ。
本郷店長はまだ私たちの存在に気づいていない。
一旦梨緒とその場に立ち止まると、梨緒の作戦通り足を揃えて一歩一歩本郷店長の方へと踏み出す。
あと一歩の距離のところで、本郷店長はこちらを向いて、彼の切れ長の瞳に私たちを映した。
本郷店長は、驚いたように目を見開いて私と梨緒とを見比べる。
「「本郷さん。どちらが“あなたといつも会っていた梨緒”かわかりますか?」」
私と梨緒が同時に発した言葉に、本郷店長は納得したようにフッと笑う。
「俺を試そうってことか。じゃあ、こちらも条件をつけさせてもらう。もし俺が、“俺の待っていた梨緒”を当てられた場合、もう俺の前から逃がさない」
私と梨緒とを交互に見ながら、本郷店長はまるで宣言するようにそう言った。
ざわつく駅前。
だけど、周囲のざわつきはどこか遠くに感じていた。
むしろ、それよりも固唾を飲み込む音や全身がドキドキと脈打つ音の方が大きく聞こえる。
時間にしては、ほんの数秒のことだったんだと思うけれど、やけにこの数秒が長い時間のようにさえ思えた。
「俺が待っていたのは、お前だ」
私と梨緒とを見定めるように見ていた本郷店長が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
本郷店長は、私の腕を掴むなりグイっと力強く引き寄せた。
トンと私の肩が本郷店長の胸元に触れる。
そして本郷店長は、さらに驚くことを口にしたのだ。
「そうだろ? 梨緒。いや、高倉奈緒」
「……えっ?」
これでもかっていうくらいに目を見開いて、目の前の本郷店長の顔を見上げる。
驚きのあまり、言葉が出ない。
何か言おうと開いた口は、ぱくぱくと動かすのがやっとだった。
「大正解~! 奈緒、よかったじゃない! 本郷さんも、私の都合でこんなことになってすみません。奈緒をよろしくお願いします」
「ちょっ、梨緒!」
「じゃあ、私は邪魔者になる前に撤退するわね~」
勝手に次から次へと言葉を並べる梨緒を呼び留めるも、梨緒はヒラヒラと私に手を振って、改札内へと消えていった。
ど、どどどどうしよう……!
いや、これでよかったのかもしれないけど、こんなところで二人にされて、これからどうしたらいいのよ。
っていうか、本郷店長はいつから私の正体に気づいてたの……?
「おい」
「は、はいぃぃっ!」
ギギギと首を無理やり後ろへと向けて、本郷店長の方へと向き直る。
「……どういうことか、説明してもらおうか」
「す、すみません……」
いつも仕事中に本郷店長に怒られるときと同じ瞳を向けられて、思わずびくりと肩を強ばらせる。
お休みが被っていた私と梨緒は、全く同じメイクをして、全く同じ服装をする。
今日は、本郷店長は出勤日だけど早上がりの日だ。
梨緒の提案で、本郷店長の住むマンションの近くの駅で待ち合わせることになった。
待ち合わせ時間は、19時。
ドキドキしながら少し離れたところから、待ち合わせ場所を見ていると、十分前に本郷店長はその場に現れた。
仕事を終えて、店舗から直接来たんだと思う。
駅の改札内から現れた本郷店長は、黒いフレームのメガネはかけていないものの、いつもの見慣れたスーツ姿に黒いカバンを持っている。
「わっ! もう来たよ!」
「じゃあ、もう出ていく?」
物影に隠れているものの、本郷店長の姿を見つけるなり心拍数が一気に跳ね上がる。
梨緒は早くと促すけれど、なかなか心の準備が整わない。
本郷店長も落ち着かないのか、キョロキョロと周囲を見回したり、腕時計を確認したりしている。
すでに待ち合わせ場所に現れた本郷店長を待たせるのも悪いなと思いながらも、結局私の決心が着いたのは、待ち合わせ時刻の三分前だった。
それでも梨緒に引っ張られるようにして、物陰から飛び出した。
もう数歩あるけば、本郷店長の目の前にたどり着く。
ここから見えるのは、本郷店長の横顔だけだ。
本郷店長はまだ私たちの存在に気づいていない。
一旦梨緒とその場に立ち止まると、梨緒の作戦通り足を揃えて一歩一歩本郷店長の方へと踏み出す。
あと一歩の距離のところで、本郷店長はこちらを向いて、彼の切れ長の瞳に私たちを映した。
本郷店長は、驚いたように目を見開いて私と梨緒とを見比べる。
「「本郷さん。どちらが“あなたといつも会っていた梨緒”かわかりますか?」」
私と梨緒が同時に発した言葉に、本郷店長は納得したようにフッと笑う。
「俺を試そうってことか。じゃあ、こちらも条件をつけさせてもらう。もし俺が、“俺の待っていた梨緒”を当てられた場合、もう俺の前から逃がさない」
私と梨緒とを交互に見ながら、本郷店長はまるで宣言するようにそう言った。
ざわつく駅前。
だけど、周囲のざわつきはどこか遠くに感じていた。
むしろ、それよりも固唾を飲み込む音や全身がドキドキと脈打つ音の方が大きく聞こえる。
時間にしては、ほんの数秒のことだったんだと思うけれど、やけにこの数秒が長い時間のようにさえ思えた。
「俺が待っていたのは、お前だ」
私と梨緒とを見定めるように見ていた本郷店長が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
本郷店長は、私の腕を掴むなりグイっと力強く引き寄せた。
トンと私の肩が本郷店長の胸元に触れる。
そして本郷店長は、さらに驚くことを口にしたのだ。
「そうだろ? 梨緒。いや、高倉奈緒」
「……えっ?」
これでもかっていうくらいに目を見開いて、目の前の本郷店長の顔を見上げる。
驚きのあまり、言葉が出ない。
何か言おうと開いた口は、ぱくぱくと動かすのがやっとだった。
「大正解~! 奈緒、よかったじゃない! 本郷さんも、私の都合でこんなことになってすみません。奈緒をよろしくお願いします」
「ちょっ、梨緒!」
「じゃあ、私は邪魔者になる前に撤退するわね~」
勝手に次から次へと言葉を並べる梨緒を呼び留めるも、梨緒はヒラヒラと私に手を振って、改札内へと消えていった。
ど、どどどどうしよう……!
いや、これでよかったのかもしれないけど、こんなところで二人にされて、これからどうしたらいいのよ。
っていうか、本郷店長はいつから私の正体に気づいてたの……?
「おい」
「は、はいぃぃっ!」
ギギギと首を無理やり後ろへと向けて、本郷店長の方へと向き直る。
「……どういうことか、説明してもらおうか」
「す、すみません……」
いつも仕事中に本郷店長に怒られるときと同じ瞳を向けられて、思わずびくりと肩を強ばらせる。
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