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11.もう俺の前から逃がさない。
(5)
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私の様子に本郷店長はひとつため息を吐き出すと、今度は私をグイっと引き寄せて、思いきり抱き締めた。
「ったく。それでもお前のことが好きなんだよ。どうしても、諦められないくらいに」
そして、再び私の唇は、本郷店長のそれによって塞がれたのだった。
*
「いつから私が高倉奈緒だって気づいてたんですか?」
今まで騙していた罰のキスを受けたあと、私たちは本郷店長のマンションまでの道のりを歩く。
せっかくだから寄って行けと、本郷店長に言われたからだ。
「その姿のお前と高倉奈緒が完全に結びついたのは、最近だ」
「そうだったんですね……」
本郷店長のことだから、意外と最初の方から何かしら思われていた可能性もあるかもしれないと思ったけど、そうでもなかったみたいだ。
「だけど、もしかしてって思ったことは何度もあった」
一瞬ホッとしたのも束の間、本郷店長のその言葉に胸がドクンと跳び跳ねた。
「初めてお前と出会った次の日。店舗で高倉奈緒を見たとき、なんとなく似てるなって思った」
パッと見の印象は全く違ったけれど、何気ない仕草や話し方が似てると、本郷店長は感じたらしい。
「同じ“高倉”だったし、最初は姉妹かなんかだと思ったんだ」
その言葉を聞いて、ハッと思う。
そういえば、梨緒の姿で二回目に会ったとき、姉妹はいるかって聞かれた。
結局あのときは何もこたえず仕舞いだったけど、あれはこういう経緯で聞かれてたんだ……!
その時点から、いい線を突いてた本郷店長に、思わず感心させられる。
「そして、桜木店で紗枝子の化粧の練習台になったお前を見たとき、化粧の力に目がいった」
本郷店長が、あのときの写真を私に見せて来たときのことが思い返される。
「出会った頃、本当の姿はもっと地味だって、梨緒の姿のお前は俺に言っただろ? 梨緒はいつも化粧をバッチリ決めてたから、素顔はこんな感じなのかなと考えるようになった」
素顔は、って。
一応、高倉奈緒の姿でもメイクはしてるんだけど……。
ほぼすっぴんに近い薄いメイクだし、そう思われても仕方ないのかもしれないけれど。
「それからお前、俺に夜ご飯を作ってくれたとき、やけどしただろ? すると次の日、高倉奈緒も同じ位置にあまりにもそっくりな傷を作って現れた。最初は偶然の一致かと思ったが、治った傷痕の様子を見ていると、まさか、と思うことはあったな」
「そう、だったんですね……」
いくら店舗にいるときはできる限りカットバンを貼るようにしていたとはいえ、完全に治った今でも、うっすらとよく見ないとわからない程度の傷痕が残っている。
それが梨緒の姿の私にも、高倉奈緒にもあるんだから、やっぱりちょっと不自然だったよね……。
「だけど、いつも俺と会ってた梨緒が偽者で、全くの別の奴と会っていたとわかったとき、今まで似てると思っていた点が、全て疑いに変わった。それまではいくら似ている点があっても、頭の中では俺の会ってる梨緒と高倉奈緒が同一人物だなんてあり得ないと思い込んでいたところがあった。でも、そういう目で見れば見るほど、高倉奈緒が梨緒の姿と重なって仕方なかった」
「いつ、私が本郷店長と会ってた梨緒だと確信したんですか?」
話している間に、本郷店長の住むマンションの部屋の前までたどり着いた。
八階の角の部屋のドアを開けた本郷店長に、中に入るように促されて、遠慮がちに足を踏み入れる。
バタンとドアが閉まるなり、私はドアに背をつけるような形で、本郷店長と向き合っていた。
本郷店長の両手は私を囲うようにドアへとつけられている。
「……確信なんてあったわけねぇだろ?」
「え?」
「決定的な証拠は何もつかめなかったんだから。だから、直接高倉奈緒に聞くんじゃなくて、梨緒の姿で教えられてた連絡先に連絡した。ダメ元だったが、正体がわかったと言えばさすがに動揺するかと思ってな」
そうしたら、本郷店長の思惑通り、私は梨緒の姿で本郷店長と会った。
「ったく。それでもお前のことが好きなんだよ。どうしても、諦められないくらいに」
そして、再び私の唇は、本郷店長のそれによって塞がれたのだった。
*
「いつから私が高倉奈緒だって気づいてたんですか?」
今まで騙していた罰のキスを受けたあと、私たちは本郷店長のマンションまでの道のりを歩く。
せっかくだから寄って行けと、本郷店長に言われたからだ。
「その姿のお前と高倉奈緒が完全に結びついたのは、最近だ」
「そうだったんですね……」
本郷店長のことだから、意外と最初の方から何かしら思われていた可能性もあるかもしれないと思ったけど、そうでもなかったみたいだ。
「だけど、もしかしてって思ったことは何度もあった」
一瞬ホッとしたのも束の間、本郷店長のその言葉に胸がドクンと跳び跳ねた。
「初めてお前と出会った次の日。店舗で高倉奈緒を見たとき、なんとなく似てるなって思った」
パッと見の印象は全く違ったけれど、何気ない仕草や話し方が似てると、本郷店長は感じたらしい。
「同じ“高倉”だったし、最初は姉妹かなんかだと思ったんだ」
その言葉を聞いて、ハッと思う。
そういえば、梨緒の姿で二回目に会ったとき、姉妹はいるかって聞かれた。
結局あのときは何もこたえず仕舞いだったけど、あれはこういう経緯で聞かれてたんだ……!
その時点から、いい線を突いてた本郷店長に、思わず感心させられる。
「そして、桜木店で紗枝子の化粧の練習台になったお前を見たとき、化粧の力に目がいった」
本郷店長が、あのときの写真を私に見せて来たときのことが思い返される。
「出会った頃、本当の姿はもっと地味だって、梨緒の姿のお前は俺に言っただろ? 梨緒はいつも化粧をバッチリ決めてたから、素顔はこんな感じなのかなと考えるようになった」
素顔は、って。
一応、高倉奈緒の姿でもメイクはしてるんだけど……。
ほぼすっぴんに近い薄いメイクだし、そう思われても仕方ないのかもしれないけれど。
「それからお前、俺に夜ご飯を作ってくれたとき、やけどしただろ? すると次の日、高倉奈緒も同じ位置にあまりにもそっくりな傷を作って現れた。最初は偶然の一致かと思ったが、治った傷痕の様子を見ていると、まさか、と思うことはあったな」
「そう、だったんですね……」
いくら店舗にいるときはできる限りカットバンを貼るようにしていたとはいえ、完全に治った今でも、うっすらとよく見ないとわからない程度の傷痕が残っている。
それが梨緒の姿の私にも、高倉奈緒にもあるんだから、やっぱりちょっと不自然だったよね……。
「だけど、いつも俺と会ってた梨緒が偽者で、全くの別の奴と会っていたとわかったとき、今まで似てると思っていた点が、全て疑いに変わった。それまではいくら似ている点があっても、頭の中では俺の会ってる梨緒と高倉奈緒が同一人物だなんてあり得ないと思い込んでいたところがあった。でも、そういう目で見れば見るほど、高倉奈緒が梨緒の姿と重なって仕方なかった」
「いつ、私が本郷店長と会ってた梨緒だと確信したんですか?」
話している間に、本郷店長の住むマンションの部屋の前までたどり着いた。
八階の角の部屋のドアを開けた本郷店長に、中に入るように促されて、遠慮がちに足を踏み入れる。
バタンとドアが閉まるなり、私はドアに背をつけるような形で、本郷店長と向き合っていた。
本郷店長の両手は私を囲うようにドアへとつけられている。
「……確信なんてあったわけねぇだろ?」
「え?」
「決定的な証拠は何もつかめなかったんだから。だから、直接高倉奈緒に聞くんじゃなくて、梨緒の姿で教えられてた連絡先に連絡した。ダメ元だったが、正体がわかったと言えばさすがに動揺するかと思ってな」
そうしたら、本郷店長の思惑通り、私は梨緒の姿で本郷店長と会った。
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