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11.もう俺の前から逃がさない。
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それが、今日。
「で、今日、本物の高倉梨緒の隣に立つお前を見たとき、メイクはしているものの、自信なさげに見える顔は、そういう目で見れば見るほど、高倉奈緒の顔に見えた」
「……ひゃっ」
その瞬間、本郷店長は私の首筋に顔を埋めてくる。
「知ってたか? お前、ここに三つ並んだホクロがあるんだぜ?」
ウェーブがかった栗色のロングヘアを掻き分けて、本郷店長は私の首筋を舌でなぞる。
触れられた場所からゾクゾクと全身に刺激が走った。
「高倉奈緒のときは、髪を束ねたときに見えてたぞ。これも、お前が偽者の梨緒だと明かしたあとで気づいた」
し、知らなかった……!
しかも、本郷店長がなぞったのは、私が普通にしていてもなかなか見えない場所だ。
こんなところ、自分でも気づかないよ……!
「確信なんてなかったが、これだけ条件がそろえば、ほぼ間違いないっていう変な自信が俺の中にはあったな。お前を見間違えるはずがないとも思っていたし」
本郷店長は私の首筋から顔を離して、再び私と向き直る。
彼の整った顔が少しずつ私に近づいて、キスされるんだと思ったとき、私は思わず本郷店長の顔を両手で押し返していた。
「ま、待ってください……!」
「あ? なんだよ」
「ほ、本郷店長は、私で、いいんですか?」
ずっと気にかかっていたことだ。
だって本郷店長が好意を寄せてくれたのは、梨緒の姿の私なのに……。
「本物の梨緒じゃなくて、いいんですか?」
「高倉奈緒は、お前一人しかいねぇだろ?」
「……え?」
「結局、初めて会ったときから俺と会ってたのはお前だったんだろ? 確かに、最初は華やかな見た目に惹かれたところもある。だけど、お前の頼りない雰囲気とか、言いたいことをはっきり言えないどうしようもないところを見る限り、お前には俺が必要だろ? だから、いいんだよ」
「い、え、あ……」
なんだか散々けなされたような気もするけれど……。
つまりそれって、私で良いって言ってくれてるってことなんだよね……?
「なんだよ、違うのか? 言い方は悪かったかもしれないが、俺はそんなお前自身に惚れたんだ」
「違わ、ない、です……」
瞬間、甘いキスをふわりと落とされる。
私には本郷店長が必要なことは間違いなんかじゃない。
そして何より、そんな私自身を好きになったんだという、一番ほしかった言葉をもらえたことが何より嬉しかった。
見た目は梨緒でも奈緒としての中身を、本郷店長は見てくれていたんだ。
そう思うと、涙が溢れてきた。
「わっ、その顔で泣くな。化粧が落ちたらえらいことになるぞ?」
「え、あ。ハハっ」
慌てたようにそう言う本郷店長がなんだか可笑しく思えて、笑ってしまった。
「顔、洗ってこいよ」
「……え?」
「お前の素の姿でいてくれたらいいから。俺は、梨緒のフリしたお前も可愛いとは思ってたが、奈緒の姿で充分可愛いと思ってる」
「そんな、ことは……っ」
いつだって華やかな梨緒とは正反対で、陰の存在だった私。
その私が、可愛い……!?
「ふぎゃ……っ。な、何するんですか!」
私が必死で身振り手振りで否定していると、突然本郷店長に鼻をつままれたのだ。
「俺が可愛いっつってんだから、可愛いんだ。ほら、洗面所も風呂場も使っていいから、とりあえずその顔、落としてこい」
そう言い残して、本郷店長は奥へと入っていく。
再びこちらに戻ってきた本郷店長に渡されたのは、ふわふわの白いバスタオルだった。
「一応、洗面はそこのドアの中だから。クレンジングも洗顔も試供品で良ければ使ってないのがあるから、良かったら使ってくれ。頭も何とかするなら、風呂も入ってくれていいから。俺は、リビングで待ってる」
一通り説明すると、本郷店長はリビングへと繋がるドアの向こうへと消えていった。
「で、今日、本物の高倉梨緒の隣に立つお前を見たとき、メイクはしているものの、自信なさげに見える顔は、そういう目で見れば見るほど、高倉奈緒の顔に見えた」
「……ひゃっ」
その瞬間、本郷店長は私の首筋に顔を埋めてくる。
「知ってたか? お前、ここに三つ並んだホクロがあるんだぜ?」
ウェーブがかった栗色のロングヘアを掻き分けて、本郷店長は私の首筋を舌でなぞる。
触れられた場所からゾクゾクと全身に刺激が走った。
「高倉奈緒のときは、髪を束ねたときに見えてたぞ。これも、お前が偽者の梨緒だと明かしたあとで気づいた」
し、知らなかった……!
しかも、本郷店長がなぞったのは、私が普通にしていてもなかなか見えない場所だ。
こんなところ、自分でも気づかないよ……!
「確信なんてなかったが、これだけ条件がそろえば、ほぼ間違いないっていう変な自信が俺の中にはあったな。お前を見間違えるはずがないとも思っていたし」
本郷店長は私の首筋から顔を離して、再び私と向き直る。
彼の整った顔が少しずつ私に近づいて、キスされるんだと思ったとき、私は思わず本郷店長の顔を両手で押し返していた。
「ま、待ってください……!」
「あ? なんだよ」
「ほ、本郷店長は、私で、いいんですか?」
ずっと気にかかっていたことだ。
だって本郷店長が好意を寄せてくれたのは、梨緒の姿の私なのに……。
「本物の梨緒じゃなくて、いいんですか?」
「高倉奈緒は、お前一人しかいねぇだろ?」
「……え?」
「結局、初めて会ったときから俺と会ってたのはお前だったんだろ? 確かに、最初は華やかな見た目に惹かれたところもある。だけど、お前の頼りない雰囲気とか、言いたいことをはっきり言えないどうしようもないところを見る限り、お前には俺が必要だろ? だから、いいんだよ」
「い、え、あ……」
なんだか散々けなされたような気もするけれど……。
つまりそれって、私で良いって言ってくれてるってことなんだよね……?
「なんだよ、違うのか? 言い方は悪かったかもしれないが、俺はそんなお前自身に惚れたんだ」
「違わ、ない、です……」
瞬間、甘いキスをふわりと落とされる。
私には本郷店長が必要なことは間違いなんかじゃない。
そして何より、そんな私自身を好きになったんだという、一番ほしかった言葉をもらえたことが何より嬉しかった。
見た目は梨緒でも奈緒としての中身を、本郷店長は見てくれていたんだ。
そう思うと、涙が溢れてきた。
「わっ、その顔で泣くな。化粧が落ちたらえらいことになるぞ?」
「え、あ。ハハっ」
慌てたようにそう言う本郷店長がなんだか可笑しく思えて、笑ってしまった。
「顔、洗ってこいよ」
「……え?」
「お前の素の姿でいてくれたらいいから。俺は、梨緒のフリしたお前も可愛いとは思ってたが、奈緒の姿で充分可愛いと思ってる」
「そんな、ことは……っ」
いつだって華やかな梨緒とは正反対で、陰の存在だった私。
その私が、可愛い……!?
「ふぎゃ……っ。な、何するんですか!」
私が必死で身振り手振りで否定していると、突然本郷店長に鼻をつままれたのだ。
「俺が可愛いっつってんだから、可愛いんだ。ほら、洗面所も風呂場も使っていいから、とりあえずその顔、落としてこい」
そう言い残して、本郷店長は奥へと入っていく。
再びこちらに戻ってきた本郷店長に渡されたのは、ふわふわの白いバスタオルだった。
「一応、洗面はそこのドアの中だから。クレンジングも洗顔も試供品で良ければ使ってないのがあるから、良かったら使ってくれ。頭も何とかするなら、風呂も入ってくれていいから。俺は、リビングで待ってる」
一通り説明すると、本郷店長はリビングへと繋がるドアの向こうへと消えていった。
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