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2.仲直りの醤油めし
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*
「……そうか。おまえはその話を聞いて、どう思った?」
一通り話を聞いたあと、晃さんは真っ直ぐに私を見て問いかけた。
「和樹くんを救うためのお手伝いをしたいとは思いますが……」
どうしたいのかは至ってシンプルだ。
最初は仕事として接していたけれど、和樹くんの心に触れたら、仕事とかそんなの関係なく助たいと思っている。
だけど、現実はなかなか厳しい。
「そのためにはお兄さんと仲直りして、お兄さんがバスケを続けてくれることが一番だと思うんですけど、それって実際問題不可能ですよね……」
「不可能かどうかはさておき、その二点が和樹をこの世に縛りつけている未練に間違いないだろうな」
やっぱり、そうだよね……。
問題は明確なのに、答えが見つからない。
「二人ともその話はあとにして、そろそろ食ったら? せっかく熱々の出したのに冷めとるやん」
「そうだな……悪い」
「す、すみません……!」
苦笑いをこぼした拓也さんに指摘され、すっかり冷えた唐揚げに手をつける。
せっかくの料理が冷めてしまって勿体ない気持ちになるが、さすがに深刻な話をしながらガツガツ食べられるほど私は器用じゃない。
少し冷めてしまっても、美味しさが大きく損なわれていないのは、拓也さんの料理の技術のおかげなのだろう。冷めても唐揚げはサクサクだし、醤油めしの風味を感じられた。
一旦和樹くんのことは後回しにして、料理を堪能する。
だけど、美味しい料理を食べたからといって良い案が思いつくというわけでもなく、食べ終わったあと、再度私は頭を抱えていた。
「……やっぱりお互いに気持ちを伝えられないのがネックですよね」
仲直りするにもバスケを続けてもらうにも、和樹くんの気持ちを直接お兄さんに伝える手段がないのだ。どうにかして伝えられないだろうか。
本当なら和樹くんが自分の口で伝えられるのが一番の解決策なのだけど、お兄さんのところへ連れていったところで、和樹くんの姿は見えない。
それにもし第三者の私たちがお兄さんに突撃したところで、まともに話を聞いてもらえるかどうか……。
「それやったら、ちょっといい案思いついたんやけど」
そこに入ってきたのは、拓也さんだ。白い和帽子を脱いで、私と晃さんの間に椅子を持ってきて腰かける。
「まぁ本人の気持ちが一番大切やけん、明日和樹くんもおるときにここで話したんでいい?」
いい案を思いついたと言っておいて、今はまだ教えてくれないらしい。
もどかしい気持ちになりながらも、晃さんもそんなにいい考えがあるならと拓也さんを信用して、この場は解散となったのだった。
*
翌朝。和樹くんを連れて食堂に向かうと、すでに拓也さんは人数分の朝食を用意して待っていた。
基本的に幽霊のお客様と従業員の食事の時間は、通常の朝食の時間帯と被らないようになっている。
「おはよう。和樹くんは、ちゃんと来とる?」
「はい、今私の隣にいますよ」
私から少し横に視点を定めた拓也さんはじっとその場を見つめたあと和樹くんの姿が見えたらしく、「よぉ」と友好的な挨拶をする。
和樹くんはペコリと頭を下げた。
「それなら、説明するな」
みんなが朝食の並ぶテーブルについたのを確認すると、拓也さんは至って真面目に考えてくれた案を説明する。
真剣にそれを聞き入っていた和樹くんはすんなり賛同するものの、私にはどう考えても上手くいくとは思えなかった。
「待ってください。さすがに無理がありますよ」
あまりにハチャメチャな提案に、つい口を出してしまった。
拓也さんの説明は、こうだ。
和樹くんの未練を果たすためには、やっぱり和樹くんの気持ちをお兄さんに何かしらの形で伝えた方がいいと思う。
だから、お兄さんの学校が終わる時間帯を見計らって、お兄さんの学校に行き、様子を見ようと言うのだ。
今日は日曜日のため、明日、月曜日の夕方に。
それだけなら、何も問題ない。そうすることで、新たに何かしら良い方法が浮かぶことだってあるだろうし。
問題はここからだ。
お兄さんと上手く接触がはかれたら、私が和樹くんの代わりに気持ちを伝えろと言うのだ。
……しかも、和樹くんの彼女という設定で。
「何で? 我ながら名案やと思ったんやけど。いきなりどこの誰かわからん霊能力者から和樹くんの気持ち聞かされるより、和樹くんの彼女が気持ちを伝える方が自然やん」
拓也さんはそれのどこに問題があるかわからないとばかりに首を傾げる。
むしろ問題しかないと思うのは私だけなのだろうか。
「……そうか。おまえはその話を聞いて、どう思った?」
一通り話を聞いたあと、晃さんは真っ直ぐに私を見て問いかけた。
「和樹くんを救うためのお手伝いをしたいとは思いますが……」
どうしたいのかは至ってシンプルだ。
最初は仕事として接していたけれど、和樹くんの心に触れたら、仕事とかそんなの関係なく助たいと思っている。
だけど、現実はなかなか厳しい。
「そのためにはお兄さんと仲直りして、お兄さんがバスケを続けてくれることが一番だと思うんですけど、それって実際問題不可能ですよね……」
「不可能かどうかはさておき、その二点が和樹をこの世に縛りつけている未練に間違いないだろうな」
やっぱり、そうだよね……。
問題は明確なのに、答えが見つからない。
「二人ともその話はあとにして、そろそろ食ったら? せっかく熱々の出したのに冷めとるやん」
「そうだな……悪い」
「す、すみません……!」
苦笑いをこぼした拓也さんに指摘され、すっかり冷えた唐揚げに手をつける。
せっかくの料理が冷めてしまって勿体ない気持ちになるが、さすがに深刻な話をしながらガツガツ食べられるほど私は器用じゃない。
少し冷めてしまっても、美味しさが大きく損なわれていないのは、拓也さんの料理の技術のおかげなのだろう。冷めても唐揚げはサクサクだし、醤油めしの風味を感じられた。
一旦和樹くんのことは後回しにして、料理を堪能する。
だけど、美味しい料理を食べたからといって良い案が思いつくというわけでもなく、食べ終わったあと、再度私は頭を抱えていた。
「……やっぱりお互いに気持ちを伝えられないのがネックですよね」
仲直りするにもバスケを続けてもらうにも、和樹くんの気持ちを直接お兄さんに伝える手段がないのだ。どうにかして伝えられないだろうか。
本当なら和樹くんが自分の口で伝えられるのが一番の解決策なのだけど、お兄さんのところへ連れていったところで、和樹くんの姿は見えない。
それにもし第三者の私たちがお兄さんに突撃したところで、まともに話を聞いてもらえるかどうか……。
「それやったら、ちょっといい案思いついたんやけど」
そこに入ってきたのは、拓也さんだ。白い和帽子を脱いで、私と晃さんの間に椅子を持ってきて腰かける。
「まぁ本人の気持ちが一番大切やけん、明日和樹くんもおるときにここで話したんでいい?」
いい案を思いついたと言っておいて、今はまだ教えてくれないらしい。
もどかしい気持ちになりながらも、晃さんもそんなにいい考えがあるならと拓也さんを信用して、この場は解散となったのだった。
*
翌朝。和樹くんを連れて食堂に向かうと、すでに拓也さんは人数分の朝食を用意して待っていた。
基本的に幽霊のお客様と従業員の食事の時間は、通常の朝食の時間帯と被らないようになっている。
「おはよう。和樹くんは、ちゃんと来とる?」
「はい、今私の隣にいますよ」
私から少し横に視点を定めた拓也さんはじっとその場を見つめたあと和樹くんの姿が見えたらしく、「よぉ」と友好的な挨拶をする。
和樹くんはペコリと頭を下げた。
「それなら、説明するな」
みんなが朝食の並ぶテーブルについたのを確認すると、拓也さんは至って真面目に考えてくれた案を説明する。
真剣にそれを聞き入っていた和樹くんはすんなり賛同するものの、私にはどう考えても上手くいくとは思えなかった。
「待ってください。さすがに無理がありますよ」
あまりにハチャメチャな提案に、つい口を出してしまった。
拓也さんの説明は、こうだ。
和樹くんの未練を果たすためには、やっぱり和樹くんの気持ちをお兄さんに何かしらの形で伝えた方がいいと思う。
だから、お兄さんの学校が終わる時間帯を見計らって、お兄さんの学校に行き、様子を見ようと言うのだ。
今日は日曜日のため、明日、月曜日の夕方に。
それだけなら、何も問題ない。そうすることで、新たに何かしら良い方法が浮かぶことだってあるだろうし。
問題はここからだ。
お兄さんと上手く接触がはかれたら、私が和樹くんの代わりに気持ちを伝えろと言うのだ。
……しかも、和樹くんの彼女という設定で。
「何で? 我ながら名案やと思ったんやけど。いきなりどこの誰かわからん霊能力者から和樹くんの気持ち聞かされるより、和樹くんの彼女が気持ちを伝える方が自然やん」
拓也さんはそれのどこに問題があるかわからないとばかりに首を傾げる。
むしろ問題しかないと思うのは私だけなのだろうか。
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