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「今までの関係が変わる瞬間」
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「ご、ごめんね。気に触ること、言っちゃったみたいで……っ」
だけど、目の前の浩平は全く動く素振りを見せない。
鍋を混ぜていた手が止まり、鍋の中のカレーは、プクップクッと沸騰をはじめている。
「今回は私が悪かったから。ね、カレー焦げちゃうから、どいて?」
「……俺は、明里といられればそれでいいんだよ!」
「え、……?」
どこか苦しそうに、まるで訴えるように浩平は口を開く。
「毎日、毎晩、明里の住む家に帰って、一緒に晩飯食って、くだらない話で盛り上がって……。俺は、今もこれから先もずっと、明里が嫌って言うまでそういう生活をして、生きていきたいんだよ」
浩平がそんな風に思っててくれてたなんて……。
嬉しさと感動で、言葉より先に、涙が溢れ出た。
「……なのにお前は、素敵な出会いだのなんだの言いやがって。俺はそんなの、いらねーんだよ」
荒々しい声と裏腹に、浩平の額が優しく私の額に触れる。
「いい加減気づけよ、俺は明里が好きなんだ」
次の瞬間、浩平の熱い唇が私の唇に触れた。
「……嫌なら拒めよ」
キスの合間に、浩平は囁くように告げる。
「……嫌、じゃない。私も浩平のことが、ずっと好きだったから……っ」
私も精一杯の想いを浩平に伝えた。
同時に、私たちの唇は、再び一層深く重なりあった。
まるでプロポーズを匂わせるような、大好きな幼馴染みからの告白……。
いつの間にか、さっき反射的につかんだ浩平の手は、私の手を握って、壁に押さえつけている。
触れた部分から伝わる熱に、私の脳内まで沸騰してしまいそうだった。
*
「カレー焦げてなくて良かった~」
「お前、さっきからカレーの心配ばっかじゃねーかよ」
幸せに浸る中、ブクブクと激しくカレーが沸騰し続けたあまり、お鍋に入れたままになっていたお玉がカタンと鍋から飛び出してしまった。
その音で、ムードを壊すように、慌てて我に返った私。
無事に火を止めて、カレーを混ぜて、その匂いからも焦げてないことを確認して、今、こうして二人でカツカレーを食べている。
「当たり前じゃない! だって、浩平に焦げたカレー食べさせるわけにはいかないでしょ?」
「……俺は、明里が作ったものなら、焦げてても腐ってても食うけどな」
ぼそりとぶっきらぼうにそう言って、そっぽ向いてしまった浩平。
でも、さっきのは仕方ないにしろ、私だってあのまま浩平と甘い展開を希望してたんだから!
いつもより、こころなしか、ほんのり赤みを帯びた浩平の頬。
私はそっと浩平の耳元に唇を寄せて、小さく耳打ちした。
「……よかったら、今夜泊まって帰る?」
お互いに、明日はお休みだし。
今日は、できるだけ長く浩平の傍に居たいし……。
「バッ! お前、自分が何言ってるのかわかってんのか!?」
どこか焦ったように、浩平は突然叫びだす。
「あ、やっぱ恥ずかしいよね。一緒に寝るなんて、小さい頃以来だし……」
「いや、そうじゃなくて、……」
そこまで聞いて、私はやっと浩平が言ってる意味がわかった。
「ご、ごめん。ただ、浩平と一緒に居たいって思っただけで、特に、深い意味は……」
慌てて弁解したものの、なんだかこれって、浩平を拒否してるようにも取れるよね……?
混乱した頭の中、頭上から聞こえたのは浩平のプッと吹き出すような笑い声だった。
「わかってるよ、明里の言いたいことくらい。俺らは俺らのペースでいこうぜ、な?」
「う、うん」
「ま、それも、明里次第だけどなっ!」
「こ、浩平っ!」
まだまだ始まったばかりの新しい関係。
私と浩平のペースで、しっかり煮込んだカレーのように、私たちの愛もじっくり煮込んでいこうね。
*今までの関係が変わる瞬間*
*END*
だけど、目の前の浩平は全く動く素振りを見せない。
鍋を混ぜていた手が止まり、鍋の中のカレーは、プクップクッと沸騰をはじめている。
「今回は私が悪かったから。ね、カレー焦げちゃうから、どいて?」
「……俺は、明里といられればそれでいいんだよ!」
「え、……?」
どこか苦しそうに、まるで訴えるように浩平は口を開く。
「毎日、毎晩、明里の住む家に帰って、一緒に晩飯食って、くだらない話で盛り上がって……。俺は、今もこれから先もずっと、明里が嫌って言うまでそういう生活をして、生きていきたいんだよ」
浩平がそんな風に思っててくれてたなんて……。
嬉しさと感動で、言葉より先に、涙が溢れ出た。
「……なのにお前は、素敵な出会いだのなんだの言いやがって。俺はそんなの、いらねーんだよ」
荒々しい声と裏腹に、浩平の額が優しく私の額に触れる。
「いい加減気づけよ、俺は明里が好きなんだ」
次の瞬間、浩平の熱い唇が私の唇に触れた。
「……嫌なら拒めよ」
キスの合間に、浩平は囁くように告げる。
「……嫌、じゃない。私も浩平のことが、ずっと好きだったから……っ」
私も精一杯の想いを浩平に伝えた。
同時に、私たちの唇は、再び一層深く重なりあった。
まるでプロポーズを匂わせるような、大好きな幼馴染みからの告白……。
いつの間にか、さっき反射的につかんだ浩平の手は、私の手を握って、壁に押さえつけている。
触れた部分から伝わる熱に、私の脳内まで沸騰してしまいそうだった。
*
「カレー焦げてなくて良かった~」
「お前、さっきからカレーの心配ばっかじゃねーかよ」
幸せに浸る中、ブクブクと激しくカレーが沸騰し続けたあまり、お鍋に入れたままになっていたお玉がカタンと鍋から飛び出してしまった。
その音で、ムードを壊すように、慌てて我に返った私。
無事に火を止めて、カレーを混ぜて、その匂いからも焦げてないことを確認して、今、こうして二人でカツカレーを食べている。
「当たり前じゃない! だって、浩平に焦げたカレー食べさせるわけにはいかないでしょ?」
「……俺は、明里が作ったものなら、焦げてても腐ってても食うけどな」
ぼそりとぶっきらぼうにそう言って、そっぽ向いてしまった浩平。
でも、さっきのは仕方ないにしろ、私だってあのまま浩平と甘い展開を希望してたんだから!
いつもより、こころなしか、ほんのり赤みを帯びた浩平の頬。
私はそっと浩平の耳元に唇を寄せて、小さく耳打ちした。
「……よかったら、今夜泊まって帰る?」
お互いに、明日はお休みだし。
今日は、できるだけ長く浩平の傍に居たいし……。
「バッ! お前、自分が何言ってるのかわかってんのか!?」
どこか焦ったように、浩平は突然叫びだす。
「あ、やっぱ恥ずかしいよね。一緒に寝るなんて、小さい頃以来だし……」
「いや、そうじゃなくて、……」
そこまで聞いて、私はやっと浩平が言ってる意味がわかった。
「ご、ごめん。ただ、浩平と一緒に居たいって思っただけで、特に、深い意味は……」
慌てて弁解したものの、なんだかこれって、浩平を拒否してるようにも取れるよね……?
混乱した頭の中、頭上から聞こえたのは浩平のプッと吹き出すような笑い声だった。
「わかってるよ、明里の言いたいことくらい。俺らは俺らのペースでいこうぜ、な?」
「う、うん」
「ま、それも、明里次第だけどなっ!」
「こ、浩平っ!」
まだまだ始まったばかりの新しい関係。
私と浩平のペースで、しっかり煮込んだカレーのように、私たちの愛もじっくり煮込んでいこうね。
*今までの関係が変わる瞬間*
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