17 / 23
「へっぽこ神様、召喚しちゃいました」
6-2
しおりを挟む
*
次の日。
私は浮き立つ気持ちで登校していた。
なぜなら昨日のおまじないのおかげで、私の恋は成就しているはずだから。
私の願いを叶えてやると神様が言っていたのだから間違いない。
彼は私に会ったら、どんな反応をするのだろう?
会ったらやっぱり声かけた方がいいよね?
おはよう? これからよろしくね?
想像するだけで頬が緩む。
「何だ、さっきからニヤニヤニヤニヤ気持ち悪い」
だけど、そんなウキウキした気持ちに泥を塗る存在が一人……。
「もう、何よ。悪かったわね、気持ち悪くて。っていうか、何であんたまでついてきてるのよ」
何だかんだで私が召喚してしまった神様は、あれから四六時中私のそばをついて回っている。
神様のことは、私以外の人には見えていないみたいだから、外でこうやって話すときは極力気をつけて話さなければならない。
下手すれば、不審者と見られてもおかしくないのだから。
「へぇ。お前の願いを叶えてやろうとしている神様にその口の聞き方?」
「……すみませんでしたー。何でもないですー」
こういう態度はちょっと癪にさわるけど、彼との恋を成就させてもらったんだから、ここは我慢我慢……。
そうしているうちに、学校の正門をくぐった私の目の前に、大好きな彼の後ろ姿が見える。
い、いた……!
ドキドキと心臓が早鐘をうつ。
期待と不安が入り交じる中、おまじないですでにこの恋は成就してるという強みもあって、彼の背中に駆け寄ると、私は思いきって言葉をかけた。
「お、おは、おはよう……!」
私の声に反応して、彼はこちらをふり返る。
ふり返る姿までもがカッコいいんだから、本当に罪だ。
ドキドキしながら彼の反応をうかがうけれど……。
「え? ああ。おはよう」
彼は私を見て、少し驚いた様子でそう返してくるだけだった。
あれ……?
そのまま私に背を向けて、彼はスタスタと歩いていってしまう。
どういうこと……?
置き去りにされた私は、相も変わらず私のそばで浮遊している神様をにらみつけると、すぐさま人目のない校舎裏へとダッシュした。
案の定、私がダッシュしようと、神様は隣を浮遊しながらついてくる。
「どういうこと!? 彼と両思いにしてくれたんじゃなかったの!?」
「はぁ? どうもこうもお前の願いを叶えてやるとは言ったけど、まだ叶えたとは一言も言ってねぇだろ?」
攻め口調でそういう私を、神様は至ってクールに一蹴する。
「何よそれ。話が違うじゃない」
「勘違いしてるお前が悪い。だいたい祈っただけで願いを叶えようだなんて、考えが甘いんだよ」
ムッキー!
確かに祈っただけで願いを叶えようとした私は甘かったと思う。
それは認めるけどさ、その結果目の前に神様が現れたんだよ?
願いを叶えてやるとまで言われたんだから、おまじないは成功して、願いが叶って私の恋が成就したんじゃないかって思うでしょ。
とりあえずさっきので、私は彼と両思いになれてるどころか、全くもって私の恋は以前と何も変わっていないことがわかったのだった。
*
「……お前さ、本当にあいつと恋愛成就させる気あるの?」
結局、おまじないをしたものの、私の恋は以前と何ら変化しなかった。
唯一変化したことといえば、私の願いひとつ全く叶えてくれない神様を召喚してしまったことで、私のまわりにずっとこのへっぽこ神様がついて回るようになったくらいだ。
「あるよ。彼に対する想いは誰にも負けないんだから」
数日後の昼休み、私の隣を浮遊するだけの神様の気だるげな声に、私は内心イラっとしながら小声でこたえる。
恋愛成就させる気があるから、おまじないをしたというのに。
そんな風に言うくらいなら、何かしてくれればいいのに、神様なんだから。
私の視線の先には、片思い中の彼の姿。
廊下で隣のクラスの男子と話す彼は、当然のことながら私の存在には気づいていない。
話が終わったのか、彼は今まで話していた隣のクラスの男子に手をふって、教室に入ってくる。
ドアから比較的近い、廊下側から三番目の一番後ろの席の私は、彼が近くを通るだけで背筋が伸びる。
「ほら、見てばっかりじゃ何も始まんねぇんだから行けよ」
だけどそのとき、ドンと押されるような感覚と同時に私の身体は、思わぬ方向に飛び出した。
「え……っ?」
気づいたときには、私は近くを通っていた彼の目の前にいて、彼の不思議そうな二つの瞳に、捉えられていた。
「……びっくりした。どうしたの?」
「え、っと。その、あの……っ」
突然のことに、何ひとつ上手い言葉が出てこない。
「な、何でもないです……っ!」
私は悲鳴のような声でそう告げると、その場を駆け出した。
そのとき、思わず彼の腕に自分の肩が当たってしまって、さらに絶望の縁に立たされる。
「ご、ごめんなさいっ」
最悪だ……!
絶対に嫌われた……っ!
「おいっ、どこ行くんだよ」
最後にそんな神様の声が聞こえたような気がするけれど、私はひたすら足を回転させて、今度こそその場から逃げ出した。
次の日。
私は浮き立つ気持ちで登校していた。
なぜなら昨日のおまじないのおかげで、私の恋は成就しているはずだから。
私の願いを叶えてやると神様が言っていたのだから間違いない。
彼は私に会ったら、どんな反応をするのだろう?
会ったらやっぱり声かけた方がいいよね?
おはよう? これからよろしくね?
想像するだけで頬が緩む。
「何だ、さっきからニヤニヤニヤニヤ気持ち悪い」
だけど、そんなウキウキした気持ちに泥を塗る存在が一人……。
「もう、何よ。悪かったわね、気持ち悪くて。っていうか、何であんたまでついてきてるのよ」
何だかんだで私が召喚してしまった神様は、あれから四六時中私のそばをついて回っている。
神様のことは、私以外の人には見えていないみたいだから、外でこうやって話すときは極力気をつけて話さなければならない。
下手すれば、不審者と見られてもおかしくないのだから。
「へぇ。お前の願いを叶えてやろうとしている神様にその口の聞き方?」
「……すみませんでしたー。何でもないですー」
こういう態度はちょっと癪にさわるけど、彼との恋を成就させてもらったんだから、ここは我慢我慢……。
そうしているうちに、学校の正門をくぐった私の目の前に、大好きな彼の後ろ姿が見える。
い、いた……!
ドキドキと心臓が早鐘をうつ。
期待と不安が入り交じる中、おまじないですでにこの恋は成就してるという強みもあって、彼の背中に駆け寄ると、私は思いきって言葉をかけた。
「お、おは、おはよう……!」
私の声に反応して、彼はこちらをふり返る。
ふり返る姿までもがカッコいいんだから、本当に罪だ。
ドキドキしながら彼の反応をうかがうけれど……。
「え? ああ。おはよう」
彼は私を見て、少し驚いた様子でそう返してくるだけだった。
あれ……?
そのまま私に背を向けて、彼はスタスタと歩いていってしまう。
どういうこと……?
置き去りにされた私は、相も変わらず私のそばで浮遊している神様をにらみつけると、すぐさま人目のない校舎裏へとダッシュした。
案の定、私がダッシュしようと、神様は隣を浮遊しながらついてくる。
「どういうこと!? 彼と両思いにしてくれたんじゃなかったの!?」
「はぁ? どうもこうもお前の願いを叶えてやるとは言ったけど、まだ叶えたとは一言も言ってねぇだろ?」
攻め口調でそういう私を、神様は至ってクールに一蹴する。
「何よそれ。話が違うじゃない」
「勘違いしてるお前が悪い。だいたい祈っただけで願いを叶えようだなんて、考えが甘いんだよ」
ムッキー!
確かに祈っただけで願いを叶えようとした私は甘かったと思う。
それは認めるけどさ、その結果目の前に神様が現れたんだよ?
願いを叶えてやるとまで言われたんだから、おまじないは成功して、願いが叶って私の恋が成就したんじゃないかって思うでしょ。
とりあえずさっきので、私は彼と両思いになれてるどころか、全くもって私の恋は以前と何も変わっていないことがわかったのだった。
*
「……お前さ、本当にあいつと恋愛成就させる気あるの?」
結局、おまじないをしたものの、私の恋は以前と何ら変化しなかった。
唯一変化したことといえば、私の願いひとつ全く叶えてくれない神様を召喚してしまったことで、私のまわりにずっとこのへっぽこ神様がついて回るようになったくらいだ。
「あるよ。彼に対する想いは誰にも負けないんだから」
数日後の昼休み、私の隣を浮遊するだけの神様の気だるげな声に、私は内心イラっとしながら小声でこたえる。
恋愛成就させる気があるから、おまじないをしたというのに。
そんな風に言うくらいなら、何かしてくれればいいのに、神様なんだから。
私の視線の先には、片思い中の彼の姿。
廊下で隣のクラスの男子と話す彼は、当然のことながら私の存在には気づいていない。
話が終わったのか、彼は今まで話していた隣のクラスの男子に手をふって、教室に入ってくる。
ドアから比較的近い、廊下側から三番目の一番後ろの席の私は、彼が近くを通るだけで背筋が伸びる。
「ほら、見てばっかりじゃ何も始まんねぇんだから行けよ」
だけどそのとき、ドンと押されるような感覚と同時に私の身体は、思わぬ方向に飛び出した。
「え……っ?」
気づいたときには、私は近くを通っていた彼の目の前にいて、彼の不思議そうな二つの瞳に、捉えられていた。
「……びっくりした。どうしたの?」
「え、っと。その、あの……っ」
突然のことに、何ひとつ上手い言葉が出てこない。
「な、何でもないです……っ!」
私は悲鳴のような声でそう告げると、その場を駆け出した。
そのとき、思わず彼の腕に自分の肩が当たってしまって、さらに絶望の縁に立たされる。
「ご、ごめんなさいっ」
最悪だ……!
絶対に嫌われた……っ!
「おいっ、どこ行くんだよ」
最後にそんな神様の声が聞こえたような気がするけれど、私はひたすら足を回転させて、今度こそその場から逃げ出した。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる