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「へっぽこ神様、召喚しちゃいました」
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バンっと学校の屋上のドアを開けて、開けた視界の先に飛び出す。
羞恥と怒りと絶望とで爆発しそうな想いを堪えながら走り続けて、私は屋上まで来ていた。
「何逃げてんだよ」
私が走っている間も、いつまでも神様の声は私の耳元で聞こえ続けていて。
今まで無視していたけれど、さすがにいら立ちを爆発させた。
「あんたのせいで、こうなったんでしょ……っ! 恋を叶えてくれるどころか、余計なことばっかりして、大恥かいて。もう、嫌われたも同然だよ……っ!」
「はぁ? 俺のせいにすんなよ、俺はお前のためを思って……」
「どこがよ、このへっぽこ疫病神!」
「誰がへっぽこだ、この甘ったれ! そんなのじゃいつまで経っても、あのカレとやらに存在すら覚えてもらえねぇぞ」
もういい、勝手にしろ。と、捨て台詞のように最後そう言うと、神様は私から離れて空高くに消えていってしまった。
何よ、そんなに怒らなくてもいいじゃない!
大体なんで神様が怒るのよ。
確かに私だって、おまじないに頼りきってたところはあるけどさ……。
フンと鼻を鳴らして、一人教室に戻る。
それ以後、さっきの今でどんな目で見られているのかと思うと怖くて、私は片思いの彼の方を見ることができなかった。
そしてその日、私のそばに神様は戻って来なかった。
*
翌日の朝。
私は一人で登校していた。
たった数日ばかり神様とやらにつきまとわれていただけなのに、自分の周りがやけに静かに感じて落ち着かない。
寂しい……なんて思ってないけど、ちょっと言い過ぎたかな、とは思ってる。
不本意とはいえ私がおまじないをしたことで、神様を召喚してしまって。
神様だって、不本意ながら私と一緒に居たんだろうし……。
でも、神様だってあんな言い方はないと思うんだよね!
「おはよう」
少なからず罪悪感に似た感情を感じながら歩いていると、不意に背後から声をかけられる。
「おは……っ」
ふり返りって声の主を視界の中に入れた瞬間、思わず固まった。
だってそこにいたのは、私の片思い中の彼だったのだから。
「正門入ったところで後ろ姿が見えたから」
えぇえ……っ!
そんな、正門入ったところで後ろ姿が見えたからって話しかけてもらえるような仲ではないのに……っ!?
驚きと緊張のあまり声が出ず口をパクパクとさせている私を見て、彼は少し困ったようにまゆを下げる。
「迷惑だったらごめんだけど、昨日もこの前話しかけてくれたときも何か言いたそうにしてたなって思って。気になって声かけてみたんだ」
う、うそっ!
変なやつだと思われて、てっきり嫌われたと思ってたのに……っ!?
「そ、そうだったんだ。ありがと……」
頭真っ白だし、いきなり何話していいかわからないけれど、これってものすごく大きなチャンスなんじゃない!?
この機会に彼と仲良くなって、ゆくゆくは……。
妄想だけは立派に掻き立てられる中、私のすぐそばから聞き覚えのある声が耳に届く。
「そうだ。本来恋というものは、お互いに歩み寄ることが大切なんだ」
「え……っ!?」
声の聞こえた方向をふり向けば、つい昨日ぶりの神様がいつのまにか私のそばに戻ってきていた。
「いきなり俺の力を使って両思いにしたところで、基礎が確立してないんだから、お互いに戸惑って上手くいかないだけだろ。一歩ずつお前の力でそいつと距離を縮めていけ」
そして、神様は両方の口の端をきゅっと引き上げると、楽しげに笑った。
「大丈夫だ。言っただろ? お前の願いを叶えに来たんだって。お前が諦めない限り、そいつとの恋が成就するという願いが叶うまで、しっかり導いてやる」
神様……。
何だかんだいって、私のことをちゃんと考えてくれてたんだ……。
「どうしたの?」
そのとき私の片思いの彼に不思議そうに見られていることに気づいて、慌てて首を左右にふる。
「う、ううん。何でもない……! これからも時々こんな風にお話してもいいですか……?」
さすがに友達になってくださいとか、ましてや付き合ってくださいだなんて言えなくて、何だか変な言い方になってしまった。
「いいよ」
まだまだこの恋が成就するまで時間はかかるだろうけれど、この一歩が踏み出せたことが、ものすごく幸せだよ。
私が召喚した神様は、イケメンだけど口が悪くて、こっちの願いなんて全然叶えてくれない。
そう思っていたけれど、それは神様なりに私のことを考えてくれた結果だったんだ。
「よし、とりあえず今日のノルマはクリアだな」
本当は、私の恋を見守って、無理なく私の願いが叶えられるように導いてくれてる、優しい神様でした。
*へっぽこ疫病神、召喚しちゃいました*
*END*
羞恥と怒りと絶望とで爆発しそうな想いを堪えながら走り続けて、私は屋上まで来ていた。
「何逃げてんだよ」
私が走っている間も、いつまでも神様の声は私の耳元で聞こえ続けていて。
今まで無視していたけれど、さすがにいら立ちを爆発させた。
「あんたのせいで、こうなったんでしょ……っ! 恋を叶えてくれるどころか、余計なことばっかりして、大恥かいて。もう、嫌われたも同然だよ……っ!」
「はぁ? 俺のせいにすんなよ、俺はお前のためを思って……」
「どこがよ、このへっぽこ疫病神!」
「誰がへっぽこだ、この甘ったれ! そんなのじゃいつまで経っても、あのカレとやらに存在すら覚えてもらえねぇぞ」
もういい、勝手にしろ。と、捨て台詞のように最後そう言うと、神様は私から離れて空高くに消えていってしまった。
何よ、そんなに怒らなくてもいいじゃない!
大体なんで神様が怒るのよ。
確かに私だって、おまじないに頼りきってたところはあるけどさ……。
フンと鼻を鳴らして、一人教室に戻る。
それ以後、さっきの今でどんな目で見られているのかと思うと怖くて、私は片思いの彼の方を見ることができなかった。
そしてその日、私のそばに神様は戻って来なかった。
*
翌日の朝。
私は一人で登校していた。
たった数日ばかり神様とやらにつきまとわれていただけなのに、自分の周りがやけに静かに感じて落ち着かない。
寂しい……なんて思ってないけど、ちょっと言い過ぎたかな、とは思ってる。
不本意とはいえ私がおまじないをしたことで、神様を召喚してしまって。
神様だって、不本意ながら私と一緒に居たんだろうし……。
でも、神様だってあんな言い方はないと思うんだよね!
「おはよう」
少なからず罪悪感に似た感情を感じながら歩いていると、不意に背後から声をかけられる。
「おは……っ」
ふり返りって声の主を視界の中に入れた瞬間、思わず固まった。
だってそこにいたのは、私の片思い中の彼だったのだから。
「正門入ったところで後ろ姿が見えたから」
えぇえ……っ!
そんな、正門入ったところで後ろ姿が見えたからって話しかけてもらえるような仲ではないのに……っ!?
驚きと緊張のあまり声が出ず口をパクパクとさせている私を見て、彼は少し困ったようにまゆを下げる。
「迷惑だったらごめんだけど、昨日もこの前話しかけてくれたときも何か言いたそうにしてたなって思って。気になって声かけてみたんだ」
う、うそっ!
変なやつだと思われて、てっきり嫌われたと思ってたのに……っ!?
「そ、そうだったんだ。ありがと……」
頭真っ白だし、いきなり何話していいかわからないけれど、これってものすごく大きなチャンスなんじゃない!?
この機会に彼と仲良くなって、ゆくゆくは……。
妄想だけは立派に掻き立てられる中、私のすぐそばから聞き覚えのある声が耳に届く。
「そうだ。本来恋というものは、お互いに歩み寄ることが大切なんだ」
「え……っ!?」
声の聞こえた方向をふり向けば、つい昨日ぶりの神様がいつのまにか私のそばに戻ってきていた。
「いきなり俺の力を使って両思いにしたところで、基礎が確立してないんだから、お互いに戸惑って上手くいかないだけだろ。一歩ずつお前の力でそいつと距離を縮めていけ」
そして、神様は両方の口の端をきゅっと引き上げると、楽しげに笑った。
「大丈夫だ。言っただろ? お前の願いを叶えに来たんだって。お前が諦めない限り、そいつとの恋が成就するという願いが叶うまで、しっかり導いてやる」
神様……。
何だかんだいって、私のことをちゃんと考えてくれてたんだ……。
「どうしたの?」
そのとき私の片思いの彼に不思議そうに見られていることに気づいて、慌てて首を左右にふる。
「う、ううん。何でもない……! これからも時々こんな風にお話してもいいですか……?」
さすがに友達になってくださいとか、ましてや付き合ってくださいだなんて言えなくて、何だか変な言い方になってしまった。
「いいよ」
まだまだこの恋が成就するまで時間はかかるだろうけれど、この一歩が踏み出せたことが、ものすごく幸せだよ。
私が召喚した神様は、イケメンだけど口が悪くて、こっちの願いなんて全然叶えてくれない。
そう思っていたけれど、それは神様なりに私のことを考えてくれた結果だったんだ。
「よし、とりあえず今日のノルマはクリアだな」
本当は、私の恋を見守って、無理なく私の願いが叶えられるように導いてくれてる、優しい神様でした。
*へっぽこ疫病神、召喚しちゃいました*
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