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第4章
触れ合う心(1)
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ジュンの葬式から2週間が経とうとしていた。
桃華はあれから部屋にこもりがちで、食べ物もあまり喉を通らず、食べても吐いてしまうことも多かった。
膝を抱えてうつむいたまま桃華は悩み続ける。
ジュンのこと、ミカのこと、拓人のこと──。
それらがいつまでも桃華の頭の中を駆け巡り、桃華を苦しめた。
ジュンが死んだのは決して桃華のせいではない。
頭の中では分かっているんだけど、受け入れることができない。
また、桃華よりも余命がずっとあっただろうと思われるジュンが桃華より先に死んでしまい、桃華はまだ生きている。
ジュンが亡くなったことへのショックとともに、桃華自身の持つ病気の恐ろしさを思い知らされる。
──桃華もいつか何らかの拍子に突然命を落とすのかもしれない。
考えたくなくても考えてしまう。
拓人ともあれからずっと会っていない。
時々拓人は桃華の家に来てくれているみたいだが、会う気になれなくて母親に頼んで帰ってもらっていたのだ。
(そのうち、拓人さんも来なくなっちゃうんだろうな……)
本当は、会いたい。
会いたいよ──。
だけど……。
『あんたに拓人を幸せに出来ない。あんたは拓人を苦しめるだけの存在なのよ!?』
ミカに言われたこの言葉が、ずっと桃華の頭から離れない。
でも、その通りなのかもしれない。
だって、桃華もジュンみたいに発作を起こして突然──。
そう思うと、桃華の目から自然と涙が溢れ出た。
ジュンにあれだけ辛い思いをさせたのに、拓人までも傷つけるかもしれない。
それで桃華自身が幸せになる。
そんなのできない。
ミカの言う通り、このまま拓人から離れた方がいいのかもしれない。
やっぱり会えない。
会えないよ──。
(でも拓人さんから離れるなんて……今の私には辛すぎて生きていけないよ……)
涙は止まることを知らないかのように桃華の頬を伝い続ける。
涙って不思議。
どんなに泣いても泣いても溢れ出てくるから。
辛い。
辛いよ──。
(いずれ近い未来に死ぬ運命なら……今死んだって変わらないのかな……)
突然そんな考えが桃華の頭を過ぎる。
(私さえ居なければ拓人さんは悲しまないし、傷つかないのかな? そして、私もこんなに辛い思いしなくて済むのかな?)
桃華はふと思い立ち、1階の台所へと向かう。
母親に見つからないようにこっそり台所へと足を踏み入れるものの、そこには誰も居なかった。
(あれ……お母さん居ないのかな?)
耳を澄ませば玄関の方から母親の声が聞こえる。
(お客さん、かな……?)
桃華は果物ナイフに手を伸ばし、母親に気づかれないようにまたこっそり自分の部屋に戻った。
部屋のドアを静かに閉め、桃華は震える手でナイフの刃を自分の手首に当てる。
その時、不意にジュンの言葉が頭を過ぎった。
『桃華ちゃん、拓人さんと幸せになるんだよ。僕の分も生きて……?』
一瞬、ナイフを握る桃華の手が緩む。
しかし、胸の痛みを感じながらも、桃華は再び力を込めてナイフを握りなおした。
(ジュンくん、ごめんなさい……私には無理だよ……拓人さん……さようなら……)
桃華はあれから部屋にこもりがちで、食べ物もあまり喉を通らず、食べても吐いてしまうことも多かった。
膝を抱えてうつむいたまま桃華は悩み続ける。
ジュンのこと、ミカのこと、拓人のこと──。
それらがいつまでも桃華の頭の中を駆け巡り、桃華を苦しめた。
ジュンが死んだのは決して桃華のせいではない。
頭の中では分かっているんだけど、受け入れることができない。
また、桃華よりも余命がずっとあっただろうと思われるジュンが桃華より先に死んでしまい、桃華はまだ生きている。
ジュンが亡くなったことへのショックとともに、桃華自身の持つ病気の恐ろしさを思い知らされる。
──桃華もいつか何らかの拍子に突然命を落とすのかもしれない。
考えたくなくても考えてしまう。
拓人ともあれからずっと会っていない。
時々拓人は桃華の家に来てくれているみたいだが、会う気になれなくて母親に頼んで帰ってもらっていたのだ。
(そのうち、拓人さんも来なくなっちゃうんだろうな……)
本当は、会いたい。
会いたいよ──。
だけど……。
『あんたに拓人を幸せに出来ない。あんたは拓人を苦しめるだけの存在なのよ!?』
ミカに言われたこの言葉が、ずっと桃華の頭から離れない。
でも、その通りなのかもしれない。
だって、桃華もジュンみたいに発作を起こして突然──。
そう思うと、桃華の目から自然と涙が溢れ出た。
ジュンにあれだけ辛い思いをさせたのに、拓人までも傷つけるかもしれない。
それで桃華自身が幸せになる。
そんなのできない。
ミカの言う通り、このまま拓人から離れた方がいいのかもしれない。
やっぱり会えない。
会えないよ──。
(でも拓人さんから離れるなんて……今の私には辛すぎて生きていけないよ……)
涙は止まることを知らないかのように桃華の頬を伝い続ける。
涙って不思議。
どんなに泣いても泣いても溢れ出てくるから。
辛い。
辛いよ──。
(いずれ近い未来に死ぬ運命なら……今死んだって変わらないのかな……)
突然そんな考えが桃華の頭を過ぎる。
(私さえ居なければ拓人さんは悲しまないし、傷つかないのかな? そして、私もこんなに辛い思いしなくて済むのかな?)
桃華はふと思い立ち、1階の台所へと向かう。
母親に見つからないようにこっそり台所へと足を踏み入れるものの、そこには誰も居なかった。
(あれ……お母さん居ないのかな?)
耳を澄ませば玄関の方から母親の声が聞こえる。
(お客さん、かな……?)
桃華は果物ナイフに手を伸ばし、母親に気づかれないようにまたこっそり自分の部屋に戻った。
部屋のドアを静かに閉め、桃華は震える手でナイフの刃を自分の手首に当てる。
その時、不意にジュンの言葉が頭を過ぎった。
『桃華ちゃん、拓人さんと幸せになるんだよ。僕の分も生きて……?』
一瞬、ナイフを握る桃華の手が緩む。
しかし、胸の痛みを感じながらも、桃華は再び力を込めてナイフを握りなおした。
(ジュンくん、ごめんなさい……私には無理だよ……拓人さん……さようなら……)
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