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第4章
謝罪(2)
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ミカに連れて来られたのは、狭くて薄暗いスタッフルーム。
「話ってなんだよ」
ミカが扉を閉めると同時に、拓人が冷静を装った声で聞く。
ミカは少し口ごもっていたが、拓人に向かって深く頭を下げた。
「この前は、ごめんなさい……」
拓人はミカの方を見る素振りも見せずに突っ立ていた。
「本当に、ごめんなさい……」
「俺に言われても……」
拓人は困ったように返した。
「……あの男の子、大丈夫だった?」
ミカは再び遠慮がちに口を開く。
拓人は横目でミカを見て、また視線をもとの位置にもどす。
そして一つため息を漏らして口を開く。
「おまえ、何も聞いてねぇのか?」
ミカが顔を上げる。
「何も……って?」
「ジュンのことだよ」
あの時ミカがヨシヒトにボコボコにさせた、ジュンのことだよ──。
拓人は再びあの時の記憶が蘇り、ミカを睨みつけた。
ミカは相変わらず拓人が何を言ってるのか分からないような顔をするので、拓人は重たい口を開いた。
「……亡くなったよ」
ミカは息を呑んだ。
「ジュンは心臓発作を起こした後病院に運ばれて、一時的に回復した。だけど、翌朝状態が悪化して亡くなった」
「うそ……」
ミカはカタカタと肩を震わせながら、その場に力無くペタンと座り込んだ。
「本当に何も聞いてねぇんだな」
拓人は呆れたような声でミカに言う。
「あいつは……桃華と同じ心臓の病気だったんだ。カイトらには話したことあるけど、ミカにはジュンのこと話してなかったかな?」
ミカは小さく頷いて口を開く。
「でも、拓人からじゃないけど、実は……以前気になって、カイトくんからこっそり教えてもらってたの。だから、ジュンくんのことは……知ってたわ」
拓人は一瞬驚いたような表情を見せ、再び口を開く。
「そうか。じゃあもう一つ聞く。ジュンって気づいててやったのか?」
「なんとなく……でもまさかあの程度で死ぬなんて……」
拓人はミカの言葉を聞くなり冷たい口調で言い放つ。
「あの程度って何だよ……気づいていたなら尚更おまえらのやったことは殺人同然だ。警察でヨシヒトがどう捉られているかは知らないが……俺はそう感じる」
「そんな……っ」
ミカは青ざめているようだった。
「……桃華だって、ジュンのことで傷ついた上に、おまえの言葉でずっと悩んで傷ついて自殺しようとまでしてたんだ。おまえは一体、桃華たちに何がしたかったんだ? 教えてくれよ……」
「……」
何も言わないミカを睨みつけ、再び拓人は声を上げる。
「黙ってないで答えろよ! なんで桃華やジュンに……。なんでだよ……」
「拓人が悪いのよ……」
ミカが小さな声で呟くように言う。
「拓人がミカの気持ちを知りもせずに、特別な存在の女の子を作るからいけないのよ」
「は? なんだよ、それ」
ミカの目からはポロポロ涙がこぼれ落ちた。
「拓人のことが……子どもの頃からずっと好きだったのに……」
「え……っ」
拓人はミカの突然の告白に動じつつも、そんなミカに同情することすらなく冷たく言い放つ。
「俺は、今のおまえは大嫌いだ。もしおまえが男だったら殴り飛ばしていたと思う」
「拓人……ミカね、嫌だったの。あんな子に拓人をとられちゃうなんて……。あんな子に負けただなんて……。あんな子といるより、ミカといる方が絶対拓人は幸せになれるのに……」
拓人はミカの長い茶色の髪を掴み、ぐいっと引っ張ってミカの顔を拓人の方に向けさせた。
「おまえ、ほんと分かってねぇよ。例え桃華のことがどれだけ憎かったとしても、やっていいことと悪いことがある」
ミカは怯えるような瞳で拓人を見る。
「俺だってジュンが憎かったよ。おまえがそういう目で俺のことを見てたなら、桃華のことを恨む気持ちも分からなくはない。でもな、おまえはやり過ぎだ」
拓人が掴んでいたミカの髪を離すと、ミカはそのまま床に両手をついて倒れた。
「俺な、ミカのことすごく大切な友達だと思ってたよ。でも今は、そうは思えない。こんな奴をずっと信頼して幼い頃から仲良くしてきたんだって思うと恥ずかしいよ」
拓人が立ち上がると、ミカが今にも泣き出しそうな声で言う。
「なんで……なんであの子なの……?」
「人を好きになるのに理由なんてないだろ? もう二度と桃華に関わるな」
拓人はそう言い残すと部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
いつも強気なミカは全くいつもの面影がなく、ただただ拓人が部屋を出ていくのを見ていることしか出来なかった。
「話ってなんだよ」
ミカが扉を閉めると同時に、拓人が冷静を装った声で聞く。
ミカは少し口ごもっていたが、拓人に向かって深く頭を下げた。
「この前は、ごめんなさい……」
拓人はミカの方を見る素振りも見せずに突っ立ていた。
「本当に、ごめんなさい……」
「俺に言われても……」
拓人は困ったように返した。
「……あの男の子、大丈夫だった?」
ミカは再び遠慮がちに口を開く。
拓人は横目でミカを見て、また視線をもとの位置にもどす。
そして一つため息を漏らして口を開く。
「おまえ、何も聞いてねぇのか?」
ミカが顔を上げる。
「何も……って?」
「ジュンのことだよ」
あの時ミカがヨシヒトにボコボコにさせた、ジュンのことだよ──。
拓人は再びあの時の記憶が蘇り、ミカを睨みつけた。
ミカは相変わらず拓人が何を言ってるのか分からないような顔をするので、拓人は重たい口を開いた。
「……亡くなったよ」
ミカは息を呑んだ。
「ジュンは心臓発作を起こした後病院に運ばれて、一時的に回復した。だけど、翌朝状態が悪化して亡くなった」
「うそ……」
ミカはカタカタと肩を震わせながら、その場に力無くペタンと座り込んだ。
「本当に何も聞いてねぇんだな」
拓人は呆れたような声でミカに言う。
「あいつは……桃華と同じ心臓の病気だったんだ。カイトらには話したことあるけど、ミカにはジュンのこと話してなかったかな?」
ミカは小さく頷いて口を開く。
「でも、拓人からじゃないけど、実は……以前気になって、カイトくんからこっそり教えてもらってたの。だから、ジュンくんのことは……知ってたわ」
拓人は一瞬驚いたような表情を見せ、再び口を開く。
「そうか。じゃあもう一つ聞く。ジュンって気づいててやったのか?」
「なんとなく……でもまさかあの程度で死ぬなんて……」
拓人はミカの言葉を聞くなり冷たい口調で言い放つ。
「あの程度って何だよ……気づいていたなら尚更おまえらのやったことは殺人同然だ。警察でヨシヒトがどう捉られているかは知らないが……俺はそう感じる」
「そんな……っ」
ミカは青ざめているようだった。
「……桃華だって、ジュンのことで傷ついた上に、おまえの言葉でずっと悩んで傷ついて自殺しようとまでしてたんだ。おまえは一体、桃華たちに何がしたかったんだ? 教えてくれよ……」
「……」
何も言わないミカを睨みつけ、再び拓人は声を上げる。
「黙ってないで答えろよ! なんで桃華やジュンに……。なんでだよ……」
「拓人が悪いのよ……」
ミカが小さな声で呟くように言う。
「拓人がミカの気持ちを知りもせずに、特別な存在の女の子を作るからいけないのよ」
「は? なんだよ、それ」
ミカの目からはポロポロ涙がこぼれ落ちた。
「拓人のことが……子どもの頃からずっと好きだったのに……」
「え……っ」
拓人はミカの突然の告白に動じつつも、そんなミカに同情することすらなく冷たく言い放つ。
「俺は、今のおまえは大嫌いだ。もしおまえが男だったら殴り飛ばしていたと思う」
「拓人……ミカね、嫌だったの。あんな子に拓人をとられちゃうなんて……。あんな子に負けただなんて……。あんな子といるより、ミカといる方が絶対拓人は幸せになれるのに……」
拓人はミカの長い茶色の髪を掴み、ぐいっと引っ張ってミカの顔を拓人の方に向けさせた。
「おまえ、ほんと分かってねぇよ。例え桃華のことがどれだけ憎かったとしても、やっていいことと悪いことがある」
ミカは怯えるような瞳で拓人を見る。
「俺だってジュンが憎かったよ。おまえがそういう目で俺のことを見てたなら、桃華のことを恨む気持ちも分からなくはない。でもな、おまえはやり過ぎだ」
拓人が掴んでいたミカの髪を離すと、ミカはそのまま床に両手をついて倒れた。
「俺な、ミカのことすごく大切な友達だと思ってたよ。でも今は、そうは思えない。こんな奴をずっと信頼して幼い頃から仲良くしてきたんだって思うと恥ずかしいよ」
拓人が立ち上がると、ミカが今にも泣き出しそうな声で言う。
「なんで……なんであの子なの……?」
「人を好きになるのに理由なんてないだろ? もう二度と桃華に関わるな」
拓人はそう言い残すと部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
いつも強気なミカは全くいつもの面影がなく、ただただ拓人が部屋を出ていくのを見ていることしか出来なかった。
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