【旧版】桃色恋華

美和優希

文字の大きさ
61 / 95
第5章

1枚の写真(3)

しおりを挟む
「……なんでまたここなんだよ……」

 相変わらずBARに入るのに抵抗がある拓人は、不機嫌そうにしていると


「しゃーないやろ! ここが1番安心してみんなで話せる店やんか!」

 とカイトに背中を押されてしまった。


 仕方なくBARに入り、いつもの部屋に通され、注文の品が届くとメンバー達は口を開いた。


「で? 今日はデートだったんだろ? その感じだと何か進展があったんだろ?」

 ヒロがニヤニヤしながら拓人の左手の指輪を見た。


「まぁ……それなりに」


「今日は最後問題起きちゃったけど、楽しめた?」

 隣でハルキが心配そうな表情を浮かべる。


「ああ、まぁ……」


 口々にされる質問があまりに大したことないものばかりだったので、てっきり責められるんだろうなと感じていた拓人は少し拍子抜けした。


「でさぁ! 桃華ちゃん家に上げて何してたんだよ!」

 ヒロが楽しそうに身を乗り出た。


「俺の部屋で普通に話して、ギターで弾き語りして桃華の好きな曲歌った」

 誘導尋問に答えるかのように拓人は話す。


「本当にそれだけ!? 桃華ちゃんとえっちなことしてたんじゃねぇの!?」


「俺もそこ知りたいわ! 教えてくれてもええんちゃうか!?」


 カイトもヒロに便乗した。


「……おまえらが期待してるようなことはしてねぇよ」


「マジで? 嘘は良くないで? ここだけの秘密にしといたるから言うてみぃ」

 カイトが拓人に詰め寄る。


「本当にしてないんだって。確かにそういう雰囲気になって、お互い興奮して、そのまま抱いてしまいそうになったけどさ……俺には出来なかった。っていうか出来ねぇよ……」

 拓人は切ない声を出す。


「何やそれ?」


「桃華の身体のこと考えたら出来ねぇよ……。俺が抱くことで桃華の身体の負担になるかもしれねぇし……それに万が一桃華に何かあったら、俺責任とれねぇよ……」


「拓人、おまえ……」

 カイトは拓人を覗き込み申し訳なさそうにした。


「本当に大切にしてるんだね、桃華ちゃんのこと」

 ハルキがカイトの言葉を補うように言う。


「当たり前だろ? 何かあってからじゃ遅いんだ。本当に好きなんだ……1日でも1分でも1秒でも長く桃華に傍に居て欲しいんだ……」


 NEVER専用の宴会室は切ない沈黙に包まれた。


 カイトがその沈黙を破るかのように、バチンと大きな音を立てて思いっきり拓人の背中を叩いた。


「何て顔してんねんっ!」


 拓人は驚いてカイトの顔を見る。


「そんだけ桃華ちゃんのこと大切にしとるなら、隠し撮りされるようなことすんなや!」


 拓人は返す言葉が無くうつむいた。


「……本当に、今日のことは悪かった……」


「おまえが本当に謝るべき相手は俺らちゃう! 桃華ちゃんや! NEVERにもTAKUにも度を越したファンもおる。桃華ちゃんの存在がその子らに知れた時、桃華ちゃんが何かしらの危険とかにさらされたら困るやろ? ちゃうんか?」


「……そうだな。俺がうかつだった……」

 拓人の心は悔しさでいっぱいだった。


「今回はこの程度にしといてやるが、次やったらこんなんや済まさへんで?」


 カイトは拓人に脅すように言うと、拓人の頭をポンポンと軽く叩き、立ち上がって自分の席に戻った。


「俺も……そう感じるよ。以前、有名人と付き合ってた恋人が、熱狂的なファンに嫉妬されて嫌がらせされたことがあるって聞いたことあるし」

 ハルキは心配そうな声色で話した。


「万が一何かあったらその時は守ってやれ!」

 シンジもハルキの言葉に続けた。


「ただし、仕事には穴あけへんこと!」

 少し離れたところでカイトが叫んだ。


「おぅ! 当たり前だ!」

 拓人はみんなに向かって親指を立ててみせた。



 ──それから数日後に発売だった週刊誌に例の拓人の写真は載せられた。


 雑誌の内容はこうだ。



『緊急速報! 大人気バンドNEVERのボーカルTAKUに恋人か!?』

 今月4日、大人気バンドNEVERのボーカルTAKU(21)が自宅から大切そうに女性をお姫様抱っこして出てくる姿を撮影した写真が、ネットの掲示板に投稿されていることが明らかになった。

 TAKUは現在、自宅に一人暮らしと我々記者団は聞いていることから、この女性はTAKUの恋人である可能性が強いと見ている。

 TAKUの事務所もTAKU本人もこの写真について一切応じず、真相は定かではない。



 ──事務所の圧力もあり、この写真に関して取り上げられたのはこの雑誌の他には一部のメディアのみで、特別大々的に取り上げられることはなく、拓人たちは一先ずホッとした。


 しかし、このニュースが後々大事件を起こすということを、この時は誰も予測出来なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

処理中です...