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第5章
不安(1)
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拓人の例の写真が載った週刊誌が発売されてさらに数日が経った。
拓人はまた昼から新曲の打ち合わせで部屋を使うので、掃除をしていた時のことだった。
──ピンポーン。
拓人の家のチャイムが鳴った。
(誰だよ。まだ始めるには早いぞ?)
拓人はそう思いながら時計に目をやり、インターホンのカメラに映された人物に目を見開く。
「桃華……?」
拓人は急いで玄関のドアを開け、周囲に誰も居ないことを確認して桃華を家の中に連れ込んだ。
「桃華! 今日は仕事だって言っただろ? それに、今俺の家に近づかない方がいいってこの前話したばかりじゃないか!!」
玄関に桃華を連れ込むなり、拓人は桃華に思わず声を上げる。
桃華は今にも泣きそうな声で
「ごめんなさい……」
と一言漏らした。
「でも、これ……」
桃華は手に持っていた、例の写真の載せられた週刊誌を差し出す。
「これもこの前話したじゃないか、撮られてしまったって」
拓人は少々苛立ち気味に答えた。
「違うの……違うの……」
桃華はとうとう涙を堪えられなくなり、その場に泣き崩れてしまった。
拓人は慌てて桃華を抱きしめた。
「ごめん、俺のせいでこんなことになってしまったのに……嫌な思いさせてしまったよな。ちょっと苛々してたばかりにキツく言い過ぎた」
桃華は拓人の胸の中で小さく首を横に振った。
「これ……」
桃華はもう一度、震える手で持っていた週刊誌を差し出した。
さっきは桃華の差し出すそれをまともに見なかった拓人は、今度はちゃんと桃華から受け取る。
「桃華……これどうしたんだ!?」
拓人は桃華が手渡した週刊誌を見て身震いした。
週刊誌の間には、例の写真の載せられたページの切り抜きが、大量に挟まれている。
拓人が週刊誌を開こうとしたら、それらがドサッと落ちて床に散らばった。
1枚1枚誰かの嫌がらせのように、写真の中の桃華をぐしゃぐしゃに塗り潰してあったり、切り刻まれたりしていた。
拓人は戸惑いつつも、もう一度桃華に聞いた。
「桃華……これどうしたんだ!?」
桃華は震える声で答える。
「朝の郵便とりに家のポスト覗いたら入ってた……ここに写ってたの……私だったんだよね? ……恐い……」
「そのまま家を飛び出してきたのか?」
桃華は小さく頷く。
「……こんなの持って、家入れなくて……」
「恐い思いさせてごめんな……家の人には何も言わずに出てきたのか?」
桃華は静かに頷いた。
「俺から家に電話しておくから、桃華は俺の部屋に居ろ」
桃華はゆっくり頷くと、拓人の指示に従い、拓人の部屋に上がった。
拓人が事情を事細かに桃華の母親に電話で伝えると、桃華の母親は息を呑みながら拓人の話を聞いていた。
桃華の母親にも写真の件は事前に話していた。
しかし、その写真に写っているのが桃華だっていうことは、写真を見るだけでは分からなかっただけに、今回の事件は想定外のものだった。
一体誰の仕業なのかは分からない。
ただ1つ分かるのは、犯人は桃華を知っている人物だということ。
拓人はしばらく桃華を預かることに承諾をもらい、電話を切った。
拓人はまた昼から新曲の打ち合わせで部屋を使うので、掃除をしていた時のことだった。
──ピンポーン。
拓人の家のチャイムが鳴った。
(誰だよ。まだ始めるには早いぞ?)
拓人はそう思いながら時計に目をやり、インターホンのカメラに映された人物に目を見開く。
「桃華……?」
拓人は急いで玄関のドアを開け、周囲に誰も居ないことを確認して桃華を家の中に連れ込んだ。
「桃華! 今日は仕事だって言っただろ? それに、今俺の家に近づかない方がいいってこの前話したばかりじゃないか!!」
玄関に桃華を連れ込むなり、拓人は桃華に思わず声を上げる。
桃華は今にも泣きそうな声で
「ごめんなさい……」
と一言漏らした。
「でも、これ……」
桃華は手に持っていた、例の写真の載せられた週刊誌を差し出す。
「これもこの前話したじゃないか、撮られてしまったって」
拓人は少々苛立ち気味に答えた。
「違うの……違うの……」
桃華はとうとう涙を堪えられなくなり、その場に泣き崩れてしまった。
拓人は慌てて桃華を抱きしめた。
「ごめん、俺のせいでこんなことになってしまったのに……嫌な思いさせてしまったよな。ちょっと苛々してたばかりにキツく言い過ぎた」
桃華は拓人の胸の中で小さく首を横に振った。
「これ……」
桃華はもう一度、震える手で持っていた週刊誌を差し出した。
さっきは桃華の差し出すそれをまともに見なかった拓人は、今度はちゃんと桃華から受け取る。
「桃華……これどうしたんだ!?」
拓人は桃華が手渡した週刊誌を見て身震いした。
週刊誌の間には、例の写真の載せられたページの切り抜きが、大量に挟まれている。
拓人が週刊誌を開こうとしたら、それらがドサッと落ちて床に散らばった。
1枚1枚誰かの嫌がらせのように、写真の中の桃華をぐしゃぐしゃに塗り潰してあったり、切り刻まれたりしていた。
拓人は戸惑いつつも、もう一度桃華に聞いた。
「桃華……これどうしたんだ!?」
桃華は震える声で答える。
「朝の郵便とりに家のポスト覗いたら入ってた……ここに写ってたの……私だったんだよね? ……恐い……」
「そのまま家を飛び出してきたのか?」
桃華は小さく頷く。
「……こんなの持って、家入れなくて……」
「恐い思いさせてごめんな……家の人には何も言わずに出てきたのか?」
桃華は静かに頷いた。
「俺から家に電話しておくから、桃華は俺の部屋に居ろ」
桃華はゆっくり頷くと、拓人の指示に従い、拓人の部屋に上がった。
拓人が事情を事細かに桃華の母親に電話で伝えると、桃華の母親は息を呑みながら拓人の話を聞いていた。
桃華の母親にも写真の件は事前に話していた。
しかし、その写真に写っているのが桃華だっていうことは、写真を見るだけでは分からなかっただけに、今回の事件は想定外のものだった。
一体誰の仕業なのかは分からない。
ただ1つ分かるのは、犯人は桃華を知っている人物だということ。
拓人はしばらく桃華を預かることに承諾をもらい、電話を切った。
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