【完結】誰に抱かれてもあなたへの愛は揺らがない

かじや みの

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月の舞

朝の光 ※

 船が動き出している。

 艪の音と、川を進む水音が聞こえる。

 気がつくと、男の肩の上で寝ていた。

 いつの間にか、折り重なるようにして眠ったらしい。

 身じろぎしようとしたが、片腕が肩を抱いていて、体を起こすことができなかった。

 いや、それでなくとも、体が重たくて動けない。

 障子越しに、朝の光が差していて、船の中も明るくなっていた。

 目を上げてみると、眠っているのか、男の無防備な寝顔が見えた。

 申し訳程度に、着物が上からかけられているが、密着した肌の温もりで、寒さを感じなくてすんでいる。

 男とこうして、朝まで寄り添って眠ったのは初めてかもしれない。

 不思議な思いにとらわれた。
 これが、幸せというものではないのかと思ったのだ。
 好きな人と、こうやって朝を迎えられたら、これ以上に幸せなことはない。

 あのとき、あのままお屋敷を出ずに、こうして和馬と朝を迎えられたら、どんなに幸せだっただろうか。

 もう二度と手に入らない幻は、時に残酷だ。

(幻と勝負しなければならないのは、私の方かもしれない・・・)


 重たいかもしれないと、肩の上から降りようとすると、左京大夫の方が動いて上下が逆さまになった。

 その拍子に、船が左右に揺れた。

「ゆき・・・」
 耳元で、囁く。
「おれの、勝ちだな」
 気だるそうに言い、笑っている。

 どうして男というものは、勝ち負けにこだわるのだろう。

「いいえ。私の勝ちでございます」
「強情な女だ。素直に認めろ。もうお前は、おれの虜だ。何度いったんだ」
「左京さまこそ、何度くださいましたか」
「覚えておらんわ」
 何度も共に登りつめて果てている。

 楽しげに笑う声を、心地よく聞いた。

「殿様あ、どちらまで行かれますか? お屋敷に直行ですか」

 船頭の声がした。
 起きた気配を察したのだろう。

 左京大夫はまた転がって、雪也を上にする。

「そうだなあ。そうしたいのはやまやまだが、屋敷はまずいだろう」
 と、返事を返した。

「お持ち帰りなさらないんで」
 船頭の声も笑いを含んでいる。

「ばか。船宿につけてくれ」
「へい。すると、もうまもなく着きやすぜ」
「なんだと? それはいかんな。もう一周しろ」
「へい。がってんで」

 二人とも、体を起こす気力もなく、左京大夫が雪也の体を両腕で抱きしめる。

「お屋敷には、奥方さまがおられるのでしょう?」

 先ほどの会話で気になって聞いてみる。

「奥か。気になるのか」
「遊びすぎて、叱られるのではと」
「心配せずとも、奥はおらん。病で死んでおる」
「申し訳ございません。聞かなくていいことを聞いてしまいました」
「よい。気にするな。もう昔のことだ。側室ならばおるぞ」
「たくさんいらっしゃるのですか?」
「んー・・・片手ほどか」
「まあ・・・そんなに」
「子もおる。男子も姫もな。役目はきちんと果たしておる」
「だからといって、遊びすぎです」
「どの口が言うのだ。そんなに言うなら、お前も加えてやろうか。屋敷なら遊びではあるまい。行き先は屋敷にするか」
「籠の鳥は嫌でございます」
 胸の肉をきゅっと摘んだ。
「こら、よせ。くすぐったい」

「船を降りたら、もう・・・」
「他人に戻るのだな。それでいいのか」

 左京大夫は、半身を起こして、雪也の目を覗き込んできた。

「もちろんです」
 目を見て答える。

 見つめ合ううちに、どちらからともなく、唇を求めた。

 もう嫌というほど抱き合ったのに、また体の奥から火を起こされたように熱くなる。

 とろとろに溶けてしまいたい。

 何もかも放り出して、快楽に浸っていたい。

 貪るように体が求めてしまう。
 これが、堕ちたということなのか。

「まだ欲しいのか。好きものめ」

 深く雪也を抱きしめて、耳元で笑った。
「離したくなくなるではないか」

 食いつくように、首筋に吸い付いた。

 手が乳房を掴み、揉みながら唇を這わせていく。

 朝の光の中で、裸身がのけぞった。

 髷はもうとっくに崩れて、解けている。

「はあ、あ・・・もう、だめ・・・」

 押し除けようとするが、力が入らない。

「だめなのか。こんなに濡れておるぞ」

「壊れてしまいます」
「欲しいのだろう?」
「今、だけ・・・水を・・・」
 口が渇いている。

 左京大夫は、水の入った水差しを取ると、自分の口に水を注いで飲んだ。
 そして、もう一度水を口に含むと、口移しに飲ませる。
 うるおいを取り戻し、冷えた口の中を、そのまま離さずに貪り尽くした。

 熱く滾りたった男根が、ゆっくりと侵入し、貫かれる。

 じわじわとさざなみのように、快感が駆け上ってくる。
 しがみついた。

「あ・・・あぁ・・・だめ・・・堕ちる」
 そう言いながら、さらなる快感を求めて、腰が勝手に動き出す。
 奥へ奥へと誘い、高みへと上っていく。

「最高の肥やしになってやる。花を咲かせて見せよ」

 船が小刻みに揺れ出した。
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