【完結】蟠龍に抱かれて眠れ〜美貌のご落胤に転生?家老に溺愛されてお家騒動に巻き込まれる〜

かじや みの

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2章 かぶき者

6 生きる覚悟

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 何かが壊れた。

 溺れるとは、こういうことを言うのだろうか。

 愛されてないと、不安と痛みに襲われて苦しくなる。

 いけないとわかっているのに、求めてしまう。

 温もりが欲しくなる。

 だめだ・・・。

 そう思うのに、体がいうことを聞かなかった。

 ここにいちゃいけない。

 頭でわかっている。

 操られる。

 久松の思う壺にはまってしまう。

 どうすればいい?

 何も思い浮かばなかった。

 ここを出ても、死が待っている。

 そう思うと、体が動かない。

 快楽で忘れようとする。

 おれ、最低だ。

 誰か助けて。

 右京・・・。




 また夜が来た。
 何日経っただろうか。

 何もしなくても、一日が終わっていく。

 柱に上体を預けてボーッとしている。

 好きに生きればよいと父は言った。

 生きるって言ったって、どうすればいいのだろう。
 いくら考えてもわからない。
 こんなことなら、何も知らない方がマシだった。

 食欲がなくなり、食べられなくなった。
 胸が苦しくて仕方がない。
 抜けない刃を差し込まれたみたいだ。

 襖が開いて、久松が入ってきた。

「覚悟は決まったか」
「なんの覚悟だよ」

 口のきき方は、久松が家老の一人だと知ってからも変わらない。
 もう、藩の一員ではないのだ。

「死ぬ覚悟だ。生きられぬのならば、殺される前に、やることがある」
「戦でもするのか」
「察しがいいな。さすがは殿のお血筋だ」
「そんなことをすれば、お家が潰れるぞ」
 お家騒動は御法度だ。
 松平姓をたまわる桑名藩といえども例外はない。
 家老がすることとは思えない。

「殿のいないこの世など、生きていたとて仕方がない」
「・・・」
 死にたいのは、久松の方なのか。
「それがしは死に遅れたのだ。殿のあとを追うこともならず、取り残された。殿の仇を討つことだけが、唯一の望みだ」

「・・・」
「何をためらう」
「嫌だ。父上は、おれを生かすために、死んだんだろ? そんなことは望んでない! おれは、生きる道を探りたい。見つけられるかどうか、わからないけど」
「甘いな。そんな道はない。そなたは、吉村の恐ろしさを知らぬのだ」
「・・・」
 そうかもしれない。
 父上に守られて、生きてきたから。

「それとも、吉村右京に助けてもらえるとでも思っているのか」
「え?・・・」
 久松の目があやしい光を帯びた。
「うわ言が漏れておったぞ。仲が良かったそうだな。だが、部屋住の身では何もできまい。・・・契ったのか」

 思わず目をそらした。
「そんなんじゃない」
「吉村は敵だ。もはや共に生きることは叶わぬ。忘れろ」
「・・・」
「一つだけ生きる道を教えてやろう。ここで小姓として生きる道だ」
「はあ?」
「一生こうして・・・」
 久松が、腕をとり、引き寄せた。
 顎をとらえて、仰向かせる。
 見下ろした目が、いつもと違った。
「楽しませてくれれば、守ってやろう。右京のことは忘れろ。忘れさせてやる」
「!」

 口づけたが、優しく蕩かすような愛撫ではない。

 犯すつもりだ。

 着物を脱がしてくる。

「やめろ!」
 抵抗を試みたが、体格の差がありすぎる。
 久松は、よく鍛えられた体を持つ、偉丈夫だ。
 力では敵わない。

「こんなのが楽しいのかよ!」
「すぐに良くなる」
「いやだ!」
 体が恐怖に震えた。
 裸にむかれていく。

 これが、小姓の扱いなのか。

 組み敷かれる。
 悲しいことに、体が昨日までの愛撫を覚えている。
 乱暴にされても、じんわりと体の芯が感じてしまう。
「やめ・・・」
 悲鳴が喘ぎに変わる。

 何人もの小姓を相手にしているからなのか、扱いがうますぎた。
「共に極楽を見ようぞ」
 久松も裸になっている。
 腰が持ち上げられて、久松の立派なものが入ってくる。

「生きたければ、狂え」


 朝まで解放されなかった。

 そして、毎晩抱かれ続けた。

 このまま死ぬのではないかと思うほど、ぐったりして、起き上がれなくなった。

 抱かれるたびに、壊れていくような気がする。

 もう何もかもどうでもよくなる。
 殺された方が楽になるかもしない。

「小姓になるくらいなら、死んだ方がマシだ」
 様子を見にくる伊織に、ポツリともらす。

「何か口に入れませぬと、本当に死んでしまいますよ」
「いいんだ。もう・・・死んでも・・・ここは地獄だった」

 伊織がふふふっと笑い声を立てた。
「若さま、これしきのことで、大袈裟な。殿は、若さまを愛しておいでです。江戸から戻ってきたばかりの頃は、もっと荒れていましたよ。それこそ、ぼろぼろになるほど・・・」
「え・・・?」

 まだ、ここは地獄ではない。
 そう言われている気がした。

「殿が愛しているのは、亡き光徳院さまだけ。他のものは、慰み者にすぎません」
 伊織が寂しげに微笑する。

「おれは、光徳院さまじゃない」
「若さまは、ご自分を離してはなりませぬ。お好きなようになさればよいのです」
「伊織・・・」
 目が覚めたように、はっとなった。
 おれは、何を甘えているんだ。
 ノロノロと起き上がった。
「腹減った・・・」

 生きなくてはならない。
 何がなんでも。

 おれは覚悟を決める。

 死ぬ覚悟ではなく、生きる覚悟だ。

 生きたければ、狂え。
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