触れられたいと思うまで〜トラウマを克服したら溺愛が始まるようです〜

かじや みの

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 図書室の、大きな机が並ぶ学習スペースではなく、窓際の長机に、並んで座った。

 面と向かわなくてすんだが、目の前の窓ガラスに、姿が映っている。

 その窓に映る成宮と目が合った。

「弁解させてくれ」

 場所が場所なだけに、聞こえるか聞こえないかギリギリの声だ。

 さすがに図書室まで追いかけてくる女子はいなかった。

「ごめんなさい。悪いのは、俺の方・・・」
 れんは、成宮の視線から逃れるようにうつむいて頭を下げる。

「いや、いきなり掴んだりして、悪かったな。謝るのはこっちの方だ」

 その手を振り解こうとして、バランスを崩したのだった。

「・・・」

 謝られると思っていなかったれんは、呆然とした。

「でも・・・」

 れんは、助けてもらった成宮を突き放して、怒鳴っている。

 だが、そのことについては触れてこなかった。

「うちの部は、ああいうところだ。驚いただろ。あれで、男子部員はおそれをなして寄りつかない。寄ってくるのは、ああいうのが好きな女子だけだ」

「部長は、どうして入部したんですか」

「俺か? あらたに誘われたから」

「副部長と、付き合ってるんですか?」
「ふっ・・・」

 窓に映っている成宮が、拳を口元にあてて吹き出した。
 止まらなくなったのか、声を抑えながらお腹を抱えるようにして笑っている。

 初めて笑ったところを見た。
 笑うと、普通に高校生に見えて、少しほっとする。

「そう見えるか?」
「だって、部長目当ての女子が来るの、嫌がっていたから」
「研究を邪魔されたくないからだろ。あいつとはなんでもねえよ。ただの幼馴染だ」

 それで、納得したとは言い難い。

「部長も、その・・・研究しているのは・・・」
 おそるおそる訊いてみる。

 成宮は、またくすくすと笑い出した。

「あいつらと同じだと思うのか。まあ、同じと思われても、仕方ないけど・・・笑わせる」

 さすがに、れんもむっとしてきた。
 そんなに笑うところか?

「違うんですか」
 れんが険しい顔になったことに、窓の鏡でわかったのだろう。

「俺が研究しているのは、城だ」

 真顔になって答えた。

「親が城好きで、小さい頃からよく連れて行かれた。それがきっかけ」
「・・・」
「なんだ、その顔。まともすぎてつまらんか。外野なんて気にするな。あらたが北畠を誘ったのは、変な意味じゃないと思うが、せっかくいいもの持ってるのに、投げ出すのはもったいないだろう」
「・・・」
 そう言われるのは、古文書のことだとわかっているのに、悪い気はしなかった。

「もう、触ったりしないから」
「・・・」

 窓越しではなく、れんは、横を向いた。

 成宮の、笑っていないけど、少し寂しそうな目が、れんを受け止める。

 どうして怒らないんだろう。
 助けてもらって怒鳴ったのに。
 それに、怒られてもいい場面が、さっきもあった。

 普通の男子なら、腐女子と同じにされたら怒るはずだ。

 なのに・・・。

「いたいた」

 後ろで声がして、甘利が後ろに立った。

「一年生に、誠とれん君が、図書室に行ったらしいと聞いて、来てみたの。ここで話すのも迷惑でしょ。部室に来て。古文書はあっちにおいてあるから」
 目撃されていたらしい。

「人質ならぬ、紙質だな」

 成宮を見る甘利の視線が冷たかった。

「変なこと言ってないで、早く」

 歩き出した成宮と甘利の後ろを、仕方なくついていきながら、成宮が一緒にいてくれるならいいか、と思っている自分に戸惑った。


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