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5章 王女、囚われる
2 本性
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ゼルダ王女は、長く居座るつもりらしく、客用ではなく、自分が使用するものをすべて、新しく城の中に揃えていった。
簡素だった調度品の類も、王女の好みに合わせて入れ替えられ、雰囲気までもが変わっていく。
もちろん、新しい使用人も増えた。
「どういうつもりだ」
家具を運んできた者たちが帰ると、王子が文句を言った。
「あら、ご不満かしら。でもお許しくださいませ。もうすぐ正式に婚約が整うのですもの。このくらいよろしいでしょう? それに、もう国に帰るつもりはありません。ファンさまからもお口添えしていただけません?」
ゼルダは、セドを見て、擦り寄っていく。
抱きつかんばかりに距離が近い。
「そんなにファンがいいなら、ファンと婚約すればいいだろう」
王子がそんな二人を横目に見て不機嫌につぶやき、
「まあ、つれないお言葉」
王女はぷっと頬を膨らませて拗ねた。
当然だが、王子とは、なかなか打ち解けられないでいる。
セドは、そんな二人の間に挟まって、もう何日も城から離れられない。
そのうち、王女が痺れを切らして、帰ると言い出すのではないかと気が気でなく、帰るに帰れない。
「どうすれば、私を見てくださるのでしょう、リューさまは。まだ、リアの王女にご執心なのね。心が折れそうだわ」
と、肩を落としてみせた。
「気晴らしに王太子さまに会いに行こうかしら」
「・・・」
王子が瞳を揺らした。
その動揺を、ゼルダは見逃さなかった。
「あら、妬いてくださるの?」
嬉しそうに笑うと、今度は王子の腕をとる。
まずい。
セドは内心舌打ちしたが、黙っていた。
「兄上と会ってどうするのだ」
「ただのご挨拶です。王子と共に暮らしていますとご報告に」
「それは、喪が明けてからでいいではないか」
「そうですわね。でも、どうして? すぐにでもこの城を出て行って欲しいのではなくて? 顔にそう、書いてあるわ」
「・・・」
ゼルダは、王子にもたれかかり、ねっとりと視線を絡ませる。
ゼルダさま、とセドはたまらずに声をかけた。
「王太子とは、どういうご関係で? あなたのお噂を、私どもが知らないとでも」
テオが言っていた言葉を思い出していた。
王太子を動かし、リアを滅ぼさせたのは、ゼルダ王女の差し金だと。
王女が振り返って、セドを横目に見た。
「どんな関係? それが知りたければ、今夜教えて差し上げても、よろしくてよ」
「・・・」
獲物を捉える時の獣のような瞳を、負けじと見返す。
「是非とも・・・」
王女は、王子には見せない微笑を返してきた。
「おい、ファン」
王子がさすがに不安そうだ。
王女の毒牙に、王子をかけさせるわけにはいかなかった。
濁った泥水を飲む覚悟はできている。
簡素だった調度品の類も、王女の好みに合わせて入れ替えられ、雰囲気までもが変わっていく。
もちろん、新しい使用人も増えた。
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家具を運んできた者たちが帰ると、王子が文句を言った。
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ゼルダは、セドを見て、擦り寄っていく。
抱きつかんばかりに距離が近い。
「そんなにファンがいいなら、ファンと婚約すればいいだろう」
王子がそんな二人を横目に見て不機嫌につぶやき、
「まあ、つれないお言葉」
王女はぷっと頬を膨らませて拗ねた。
当然だが、王子とは、なかなか打ち解けられないでいる。
セドは、そんな二人の間に挟まって、もう何日も城から離れられない。
そのうち、王女が痺れを切らして、帰ると言い出すのではないかと気が気でなく、帰るに帰れない。
「どうすれば、私を見てくださるのでしょう、リューさまは。まだ、リアの王女にご執心なのね。心が折れそうだわ」
と、肩を落としてみせた。
「気晴らしに王太子さまに会いに行こうかしら」
「・・・」
王子が瞳を揺らした。
その動揺を、ゼルダは見逃さなかった。
「あら、妬いてくださるの?」
嬉しそうに笑うと、今度は王子の腕をとる。
まずい。
セドは内心舌打ちしたが、黙っていた。
「兄上と会ってどうするのだ」
「ただのご挨拶です。王子と共に暮らしていますとご報告に」
「それは、喪が明けてからでいいではないか」
「そうですわね。でも、どうして? すぐにでもこの城を出て行って欲しいのではなくて? 顔にそう、書いてあるわ」
「・・・」
ゼルダは、王子にもたれかかり、ねっとりと視線を絡ませる。
ゼルダさま、とセドはたまらずに声をかけた。
「王太子とは、どういうご関係で? あなたのお噂を、私どもが知らないとでも」
テオが言っていた言葉を思い出していた。
王太子を動かし、リアを滅ぼさせたのは、ゼルダ王女の差し金だと。
王女が振り返って、セドを横目に見た。
「どんな関係? それが知りたければ、今夜教えて差し上げても、よろしくてよ」
「・・・」
獲物を捉える時の獣のような瞳を、負けじと見返す。
「是非とも・・・」
王女は、王子には見せない微笑を返してきた。
「おい、ファン」
王子がさすがに不安そうだ。
王女の毒牙に、王子をかけさせるわけにはいかなかった。
濁った泥水を飲む覚悟はできている。
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